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ヲタク四人の異世界漫遊記  作者: ニニヤマ ユポカ
第二章
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洞窟-7

 突然のメトロノーム発言に僕の思考は東京メトロだ。


「変なことを言ってしまいましたね」リアクションが無い我々の空気を感じたキヌモアさん。


「いえ、返答が極めて難しかったので声が出ませんでした」


「そうです。決して変わった発言ではないと思います」ぼっさんが付け加える。


「それなら良かったです。それよりも何故このような遊具がこのような場所にあるんですかね?」キヌモアさんは、すでに慣れた動きでバネバネを左右に動かしてみせる。


「僕らみたいに洞窟に来た人を楽しませるためでは?」


「誰がそんな善い行いを?」ぼっさんが聞いてくる。


「うーん。洞窟の所有者が?」


「つまり、この洞窟には人が居る、もしくは出入りしている人がいる、いたということですね」遊具から下りるキヌモアさん。


 おんちゃんとうにやんも飽きたのかウルフレームもどきから離れてこちらに集まってきた。


 それでは行きましょうかとキヌモアさんの掛け声により、僕たちは道を戻りもう片方の右の道へと歩んだ。


「さっきの遊具仕事場に一機欲しいですねー」先頭を歩きつつキヌモアさんが語りかけてくる。


「ん。気に入ったんですか?」


「ええ。適当に置いておくだけで、息抜きに誰かが遊んでくれると思うんですよ。私も含めて」


「そういうの良いですよね。お菓子をテーブルに置いておけば、誰かが適当に摘んで食べてくれるみたいに」ぼっさんが共感している。


「そうです。そんな感じです。私が用意したもので誰かが少しだけプラスになるのが嬉しくなっちゃいますね」


「どうぞ食べてください使ってくださいと言わずに、さりげなく置いておくのが良いですよね」


 うんうんと頷くキヌモアさん。


 そういえば、稀にではあるがテーブル上にクッキーが置いてあり食べてるけど、あれはそういうことだったのか。しかし、職場に来たら突然バネ遊具が置いてあったらみんな不審がるのではないだろうか。


「ちょっと待って」うにやんが後ろから声を掛けてくる。


 先行していた我々が振り向くと、うにやんが壁際に近づいていった。


「喫茶ナガグツ この先」独り言のうにやん。


 近寄るとうにやんの視線の先に一本足の看板が立っていた。そして、さらに奥には一メートル幅程の通路がある。


 我々はランプに照らせている顔を見合わせ、無言でじゃんけんをした。


 じゃんけんに負けたぼっさんが先頭に立ち狭き通路を進んでいく。


「みんなで来ない方が良かったかもね」二番目を歩いているうにやん。


「罠かもしれないと?」


「うん。お菓子の家のパターンかも」


「あぁ。じゃあお菓子だけ食べてさっさとトンズラしよう」


「明るくなってきた」先頭を歩いているぼっさんの言の葉。


 チョコメクジが居た場所へ向かったときみたく徐々に通路が明るくなっているのが見てとれる。


 そして、通路の先に出ると、目の前に木製のテーブルと椅子が置かれた大部屋に出た。左手には先程同様大きな空洞が存在しており、その下には水溜まりができている。すでに雨は止んだのか、水溜りには波紋が出来ていない。


「こっちにドアがあるよ」右手側にいるおんちゃん。


 その先には壁に埋め込まれるように木製のドアが設置されていた。


「ノックしちゃうよ?」ドアに拳を構えるおんちゃん。


 顎を下げる我々。


 おんちゃんがドアに裏拳を二回与えると一拍おいてから「はーい」と声がした。


 気の抜けたような声に僕らは警戒することも忘れていた。


 ドアノブが回されるとメガネを掛けた男性が顔を出し、こちらを覗いてくる。


「…………」


「お、もしかしてお客さん?」男性は油断していたように眉を上げた。


「お客というか、看板を見かけたので訪ねてみたといいますか」ぼっさんが答える。


「おぉ。看板を見てくれたのですね。あれ、最近作ったんですよ。あまりに人が来なくて」男性は嬉しそうにドアからこちら側に出てくる。


 男性は白のシャツに青色のサスペンダー、グレーのスラックス、茶色の革靴という出で立ちだ。髪は羊羹色でタレ目が特徴である。


「何か食べていきますか? 初めてのお客さんということでサービスしますよ」


「それじゃ、お言葉に甘えて」ぼっさんが僕らやキヌモアさんに顔を向ける。


「大丈夫ですよ。私もお腹が空きましたので」とキヌモアさん。


 僕らも相槌をうつ。


「それじゃ、そこに掛けてください。準備、用意しますので」と外に出ているテーブル席に促される。


 我々は椅子に腰掛け、背もたれに体を預ける。


「初めてのお客って言ってたね」うにやんがテーブルをさすりながら言う。


「うん。この洞窟に入ってくる人も少ないだろうし、ましてやあの狭い通路を見落とす可能性もあるからね」


「そこであの看板を作った訳ですね」キヌモアさんは自分の髪を撫でて整えている。


 先ほどの男性、喫茶ナガグツの店主が扉の奥から出てきた。


「できるまで、これでも食べていて下さい」と男性はテーブルに皿を置く。


「ありがとうございます」


 各々手を延ばし氷を頂いた。

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