ドラゴン-11
御者のシュウムさん含め我々はソルドさんからの差し入れ(ファレサさん作)を頂き、湖面を泳ぐ鳥たちを観ながら朝食を済ませた。
「そういえば剣だけでなく槍も持ってきたのですね」再度動き出した馬車内で僕はミラルエさんに話し掛ける。
出発前、遠目に見えていた長い棒は、近づくにつれて槍だと判別できていた。
「うん。今回の気分かな」小さく上を向きながら答えるミラルエさん。
みんなと話していた通りだった。運気を呼ぶアイテムかどうかは不明だが。
「槍も扱えるのですか?」うにやんが質問する。
「そうね。剣に比べたら苦手ですけど……」
できる人の苦手というのは案外得意そうに見えるものだ。
「剣や槍の他に斧やメイスも家にはありますよ」白い歯を見せる。
「本当に武器が好きなんですねー」僕は感心してしまう。
「君達も一本買ってみるといいよ。そうすれば自然と集まってくるから」
言ってることがフィギュア好きのヲタクとなんら変わりがない。でもそう考えるとミラルエさんに親近感が出てくる。世界は違えどヲタクは存在するものである。
「今私たち七人パーティーでRPGだと中盤から終盤の流れじゃない?」おんちゃんが僕ら三人に声を掛ける。
「その内過半数以上の俺ら四人は戦力外じゃん」ぼっさんが突っ込む。
「半分以上が戦力外って、それはもうお荷物ということでは」うにやんは自身のことをゴミクズと卑下した。
「まぁでも戦う人以外の役割も重要だから、そう悲観することはないんじゃない。ロボットアニメだってロボットを整備する人、パイロットのケアをする人がメインキャラクターの何十倍もいるでしょ。なので今の僕たちのパーティーも悪くはないと思う」僕は熱弁をしてうにやんを救済した。
「あなたたちたまに訳分からないことを言い出しますよね」ミラルエさんが発語する。
ソルドさんとメーネさんも静かに頷いている。
「この世界での私たちのアイデンティティですから!」おんちゃんが胸を張る。
そうですかと呆れた声を出しミラルエさんは瞼を閉じてしまった。
朝食後ということで再び眠りについてしまったが、目を覚ますとうにやんとおんちゃんがソルドさんに弓と矢を見せて貰っている光景が現れた。そしてその隣では絵本を読んでいるメーネさんとそれを頭上から見下ろすピィノくんの姿がある。
メーネさんは僕と目が合うと、無言で絵本を差し出してきた。
「メーネさんの本ですか?」僕は絵本を受け取る。
御者側の方に顔を向けるメーネさん。視線の先には引き戸があり、その中に入っていたみたいだ。
「もう読まれたので?」
メーネさんはコクリと頭を下げた。
それじゃあということで僕は『ロレディアとりんご』という絵本を読むことにする。ロレディアというのはこっちの世界に存在する動物でダックスフンドのような体型の鹿である。
僕が絵本を開くと両隣にいるぼっさんとミラルエさんが覗き込んできた。
りんごの きに いっぴきの ロレディアが やってきました。
ロレディアは りんごを とろうとするが せが ひくくて とれません。
きのみきに まえあしを おいて たちあがるが とれません。
つのを つかって ひっかけようとしますが とれませんでした。
そこに もういっぴき からだが ながい ロレディアが やってきました。
ながいロレディアは きのみきに まえあしを おいて たちあがるが とれません。
つのを つかって ひっかけようとしますが とれませんでした。
さらに もういっぴき からだが とてもながい ロレディアが やってきました。
とてもながいロレディアは きのみきに まえあしを おいて たちあがり つので りんごを ひっかけました。
りんごは おちてきましたが とてもながいロレディアの つのが えだに ひっかかり とれなくなってしまいました。
とてもながいロレディアは おおきく あたまを ゆらして えだから つのを はずしましたが たいせいを くずし たおれそうになりました。
あぶない!
とてもながいロレディアが めを あけると にひきの ロレディアが したじきに なっていました。
にひきの ロレディアが クッションの かわりと なり たすけてくれたのです。
さんびきの ロレディアが まわりを みわたすと りんごが いっぱい おちていました。
とてもながいロレディアが たおれた いきおいで りんごが おちてきた みたいです。
さんびきの ロレディアは なかよく りんごを たべました。
ロレディアは にがいかおを しました。
ながいロレディアは おいしいかおを しました。
とてもながいロレディアは にがいかおを しました。
おしまい
淡い色を使って温かみのある絵柄で表現された絵本ではあったが……。
「助け合いをテーマにした絵本ではありますが、最後のページは何でしょうか? みんなそれぞれ味覚が違うよってことを伝えたかったんですかね?」僕は一緒に見ていたぼっさんとミラルエさんに尋ねる。
「りんごには苦い、甘いがあるよってことでは?」ぼっさんが答える。
「普通のロレディアととても長いロレディアは倒れた時の痛みがまだ残っているとか?」ミラルエさんが視野を広げた考察をしてくる。
「うーん」と考え込む僕たち三人。
こういうのは多分答えがないのだろう。こうやって読者、子供たちに様々な角度で考えさせるのが目的に違いない。
「メーネさんはどう思いました?」
僕が質問すると二人もメーネさんに顔を向けた。
三人に注目されて一瞬たじろぐメーネさん。
「私は、とても長いロレディアの内臓配置がどうなっているのかが気になりました」




