ドラゴン-9
ドロールドラゴン討伐敢行日、午前五時五〇分。
日の出から一時間ほど経ち空の明度は高く、眠気も高い。
僕はメーネさんの家に寄ってから集合場所であるシャヌラの町の東側に到着した。
集合場所には箱型の馬車が待機しており、その周りには先に向かっていたぼっさんとうにやん、そしてソルドさんが居た。あと顎鬚を生やした男性が一人馬二匹の側に立っている。あの人が御者であろう。
御者さんとソルドさんに挨拶をしてから、体がフラフラしているメーネさんを馬車の中へと案内し、おんちゃんとミラルエさんが来るのを待つため馬車の外へ出る。
ミラルエさんは荷物が多いらしく、誰か一人運ぶのを手伝って下さいと事前に言われていたのでおんちゃんがミラルエさんの家を訪ねてから一緒にこちらへ向かってきているはずだ。
それから数分後西からミラルエさんとおんちゃんが並んで歩いてきた。ミラルエさんは左手に二メートルぐらいの長い棒を持っている。
「今日はあの長い剣持ってこなかったんだ……」うにやんが眠たそうに口述する。
「うん。あの棒が今日のラッキーアイテムみたいだね」ぼっさんは寝癖を気にしているのか、自分の頭を撫でながら答える。
「おんちゃんは大きなバッグを背負ってるね」僕も気づいたことを物申す。
「うん。何が入ってるんだろうね。だいたい想像できるけど」寝癖を諦めたぼっさん。右後頭部の髪が小さくはねている。
「おはようございます」ミラルエさんが挨拶をしてくれる。「みな揃っているみたいですね」
「はい。荷物を入れたらすぐ出発しますか?」
「そうしましょうか」と言ってミラルエさんは御者さんの元へと向かった。
ミラルエさんの服装は以前と大して変わらず紺碧色のロングTシャツに黒のレギンス、草色のショートパンツ、緑のスニーカーを履き、リュックを背負っている。
「ミラルエさんの家どうだった?」うにやんが面白そうなことをおんちゃんに質問している。
「予想通り武器がたくさんあったよ」ガシャンと音を鳴らしバッグを地面に下ろすおんちゃん。
それはキャディバッグのように長く分厚い生地で作られている。
「武器庫みたいな感じ?」僕も会話に入る。
「うーん。どちらかというと武器の見本市かな。ガラスケースに入ってたりして、綺麗に並んでた」
「あぁ。その辺はきっちりしてそう」ぼっさんの個人的見解。「ちなみにそのバッグの中身は?」
「もちろん武器」
期待を裏切らない答えだ。是非中身が見てみたい。
御者さんとの話が済んだのか、僕らの元へ来るミラルエさん。
「バッグの中が気になるのですが?」
ミラルエさんはニッと表情を緩め、ボタンにくくられている紐を解きバッグを開けてくれた。
「こんなにも使用するんですか?」中を覗くと剣の柄が四本、いや五本見える。
「全部使うかは分からないけど、念のためにね」と一本手に取り鞘を外し刀身を見せてくれる。
両刃造りの剣で刃長が六〇センチメートルほどだ。この前の長い剣と違い鋭い輝きを放っており、カボチャすらも難なく切れてしまうのではないだろうか。
「他はこれよりも短いものと長いものが一本ずつ入っています。それと……」ミラルエさんは剣を鞘に戻しバッグに入れ別の剣を取り出し鞘から抜き出す。
次に僕らの網膜に入ってきた剣は片刃で刀身の幅が広く曲線状の形をしている。先ほどの剣よりもスイカを切るのには適していると考えられる。
「これと全く同じものがもう一本あります」とバッグに戻すミラルエさん。
ここで御者さんが近づいてきて出発しましょうと声を掛けてくる。まだ聞きたいことがあったが馬車の中での会話のネタとして温めておこう。
馬を撫でているソルドさんに呼びかけ、僕たちは荷物を馬車の長椅子の下へ収納し、出発の準備を完了させた。




