ドラゴン-7
狩処ポナモザに帰還した我々は早速ドロールドラゴン討伐を十万ルンで依頼し、即ミラルエさんが受諾した。
馬車の手配など色々準備があるということで決行日は一週間後となり、僕たちはその間に自分たちで出来ることはないかと模索した。
「野営のために必要な道具や食材は調達したけど、他に何かないかね?」購入品が詰まっている袋を掲げているぼっさん。
「んー。武器を手に入れたとしても一週間だと使いこなせられないからね。まぁ買うための代金も無いのだけど」僕も荷物持ちの予備としてぼっさんと共に商店街を練り歩いている。
「こんにちわ」麗しい声が後方から聞こえてくる。
僕とぼっさんが振り向くとファレサさんとソルドさんが佇んでいた。
「お久しぶりです。うちに絵を持ってきてくれた以来ではないですか?」
「そうですね。もうそれぐらい経ちますか」ファレサさんが返答をする。「ここでの生活は慣れてきましたか?」
「はい。おかげさまで。お二人はよく一緒に買い物を?」
「えぇ。私が購入して、ソルドくんが荷物持ちです」ファレサさんの隣でソルドさんが首を小さく上下させる。「ところでやたらと量の多い買い物をしたんですね」ぼっさんが両手で抱えている袋を覗く。「まるで遠出するかのような品々……」袋から見える寝袋や干し肉を見てコメントをするファレサさん。
「僕たち来週ドラゴン見に行くんですよ」
「えっ。ドラゴンですか?」顔を上げて僕を見る。
「はい。エルミア鉱石採集依頼の道中ファレサさんが教えてくれたドラゴンを」
「8本足でヨダレが出ている……?」
「それです。そのドロールドラゴンです」
「へー。そんな呼び名があったんですねー。ソルドくん知ってました?」
先ほど同様小さく頷くソルドさん。
「あーでも見るというか、プロの人が狩るのを見学するっていう感じでしょうか」
「なるほど。迫力ありそうですね」
「もしよろしければ一緒に来ますか? 馬車の席も余裕ありますし」
「んー。私はそこまで興味は無いので……。ソルドくんはあります? 興味」ファレサさんはソルドさんに顔を向ける。
「無くはないです」ギリギリ僕たちまで聞こえる大きさで喋るソルドさん。
「行きたいと言ってます」なぜか通訳するファレサさん。
「それでは……。その前に僕たちからカラルルさんやシュモイン家の人たちに話を入れたほうがいいですか?」
「いえ。そのあたりは緩いですので、私たちに予定が出来ても優先してくれます。大丈夫です。流石に頻繁には出来ませんけどね」微笑むファレサさん。
改めてそれではっと僕は日にちと集合場所、集合時間をソルドさんに伝えた。
そして二人は商店街の中心へと歩いて行く。ソルドさんの後ろ姿はどこかご機嫌に見えた。
二人の姿が見えなくなり、少し離れたカフェテラスでワッフルセットを食していたうにやんとおんちゃんが近づいてくる。
「上手くいった?」うにやんが帽子と付けひげを外す。
「多分大丈夫」
「いや。必ず来てくれるよソルドさんは」両手が塞がっているぼっさんが真剣な顔をする。
「何か気づくことがあった?」
「うん。シキさんが最初にドラゴンという単語を出した時、眉が少し上がったから」
「そうなんだ。それなら安心だ」
「それじゃあ、後もう一人だね」うにやんが次のことを口にする。
「うん」
「…………」
「おんちゃん、もう変装外していいよ」
帽子を被りひげを付け、左手に皿、右手にフォークを持ち無言でワッフルを食べているおんちゃん。
「もしかして気に入ったの?」
おんちゃんはコクリとぬかづいた。




