ドラゴン-2
我々は少々行動が過ぎたと反省しお姉さんにも謝罪をした。幸い話を進めてくれることになる。
「戦うことができないのであればせめてドロールドラゴンのことは知っているのですか?」
「はい。八本足で素早く移動します」ぼっさんが答える。
「後ろ足で立ち上がり遠くを見据えて獲物を捉えます」続いてうにやん。
「獲物を発見したら唾を飛ばして撹乱、捕獲します」僕。
「排泄物から透明度が高い赤色の石を発見できます」最後のおんちゃん。
「「「それはチョコメクジ」」」僕とぼっさんとうにやんでおんちゃんにツッコミを入れる。
いつの間にやら周りにできていたギャラリーが含み笑いをしている。ポナモザの人たちも窓口近くまで寄り楽しそうにこちらを眺めていた。だが僕らに対面しているクマ耳が似合うであろうお姉さんの心には響かなかったようで笑みを浮かべてくれない。お姉さんを笑わせないと意味が無いのに……。
「一応知識はあるようですね」お姉さんはギャラリーに気づいているが動じず対応してくる。「それならば私から提案があります」
固唾を飲む我々。
「あなた方がドロールドラゴンの討伐依頼を出すのです」
「……それだと他の人が狩るということですよね」ぼっさんが意見する。
「ええ。でも依頼を受けてくれた人と現地へ同行し後方支援などを行えば、あなた方も《狩りをした》ということになりませんか?」
「なるほど……」ぼっさんが考え込む。
「私たちは後ろから矢を放てばいいわけだ」おんちゃんのコメント。
「いや、それは逆に迷惑でしょ。僕たちの弓の矢なんてどこに飛んでいくか分からないんだし」突っ込んでおく僕。
「ひたすらヒーラーに徹しれば良いんですね」うにやんが少し興奮している。
「……うんまぁそんなところですね」適当になるお姉さん。
「ちなみに依頼費用の相場はどれくらいですか?」
「う〜ん。ドロールドラゴンであれば最低でも百万ルンくらいでしょうか」
「百万ッ!!」と我々は仰天する。
「相手はドロールドラゴンですよ。百万でも引き受けてくれる人がいるかどうか……」意気消沈の四人を見て「ご予算はいくらほどありますか?」と尋ねてくれるお姉さん。
「十万ぐらいだよね」僕はぼっさんに聞く。
頷くぼっさん。
やり取りを見てお姉さんが口元を触りながら静かになる。
「それでは十万ルンでドロールドラゴンの討伐依頼を出しましょう」と提言してくるお姉さん。
「えっ」と驚く僕たち。
「そして私が依頼を引き受けます」
「エッ!」とさらに驚く僕たち。
「何か?」
「え、いや色々と大丈夫なのかな〜と思いまして」
相槌を打つ他三人。
「私たちポナモザの職員も依頼を受けて良いことになってますので大丈夫です。あ、それともお金のことですか? まぁ十万ルンであれば命懸けで挑むということはできないので、無理だと判断したら即撤退します。その際は悪しからず。あ、もちろん倒せなかった場合報酬も請求しませんので御安心下さい」
「…………」
「まだ他に懸念がありますか?」
「それでは失礼ながらお聞きします……」ぼっさんが声を絞り出す。「お姉さんは戦えるのですか?」
またムッとするかと思いきや、お姉さんはあらそんなことという顔をする。
「あなたたち私のことを知らないのね」急にテンプレートなセリフでマウントを取りに来るお姉さん。
なんだか突然お姉さんのことが可愛く見えてきた。まぁ今までも可愛かったんだけれども。
「それなら今までの言動も納得できるわ。そうそれなら教えてあげる。あなたたちの目と耳と鼻と口、身体中のありとあらゆる器官を使い全ての神経を研ぎ澄ませ脳みそに意識を集中させて私を覚えて下さい」
前置きが長いのもまたキュート。ポイントが高い。
「私はシャヌラ一の剣術士」足を開き両手を腰に当てるお姉さん。
決めポーズきたー。
「ミラルエ・ノクストラよ!」




