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ヲタク四人の異世界漫遊記  作者: ニニヤマ ユポカ
第一章
38/103

ドラゴン-1

「武器を手に入れたとしても肝心のドラゴンを探さないと」うにやんが武器をテーブルに置く。


「狩処ポナモザに行って聞いてみる?」ぼっさんの提案。


「それが一番早そうだね」


 僕たちは席を立つが雨が降っていることを思い出し着席し大富豪の続きを始めた。


 次の日


 雨雲はどこか遠くへ過ぎ去り、僕たちは狩処ポナモザの前へと歩いてきた。


 外見はさほど依頼処ギネガラと変わらず。ギネガラをそのまま大きくしたという感じだ。中に入るもこれまた一緒の構成だ。右手に窓口、左手に掲示板があり、待合用の椅子に観葉植物が置かれている。きっと同じ系列か何かなのだろう。


 とりあえず我々は掲示板へと足を向ける。もしかしたらドロールドラゴンのことが張り出されているかもと思ったからだ。残念ながらドラゴンの四文字すら無かった。やはりこの近辺ではお目にかかれないのだろうか。


 続いて僕たちは窓口へと移動。僕が聞いてみることに。そういえばいつも僕だけが受付している気がする。まぁいいか。


「こんにちわじゃなくて、おはようございまーす」僕はカウンター奥で机に向かっている人たちに声を掛ける。


 ギネガラは十人も満たない人たちで構成されていたが、こちらは三十人以上窓口の向こう側にいらっしゃる。ファレサさんが言ってたように、魔物、野生動物への対処、消息不明者の捜索など色々と業務が多いのだろう。


「どうしました?」


 僕が考えに耽っていると一人の女性が来てくれた。その方はショートボブで前髪が眉上で切り揃えられており黒髪だ。顔全体が丸っこいフォルムでありきっとクマ耳が似合うだろう。


「えーっとクマ耳じゃなくて、ドロールドラゴンについてお聞きしたいのですが?」


「はい」


「このあたりに生息しているのでしょうか?」


「はい。この町からひが……」言いかけたところで女性は喋るのをやめ、僕と後ろの三人を見定めるように視線を動かした。


「まさかあなたたちドロールドラゴンを狩りに行くんですか?」


「はい。そのつもりです」


「!」お姉さんは目を大きく見開いた。


「?」


「あなたたち死にますよ」


「…………」


「どうしたの?」怪訝な空気を読み取ってぼっさんが話しかけてくる。


「ドロールドラゴンを狩りに行けば僕たち殺されるって助言してくれた。ちなみに生息地は教えてくれない」


「あ、やっぱりそうなんだ」ぼっさんはどこか勘付いていたらしい。「でも私たちドロールドラゴンを狩りたいんです」ぼっさんが窓口の女性へと話しかける。


 ぼっさんの声が少し大きかったため、窓口奥にいる人たちがちらほらとこちらに顔を向ける。


「む。どうして狩りたいのですか? お金目当てなら他の魔物を狩った方が良いと思いますよ」


「お金目的ではありません……」ぼっさんが言葉に詰まる。


「それではドラゴンの部位が必要だとか? それともただ狩りを楽しみたいってことですか? ドロールドラゴンの駆除、狩猟依頼も出ていませんよ」


「…………」無言になるぼっさん。女性の圧に押されているというより何か考えている様子だ。


「お姉さんの言う通りなんで狩りたいんだろ。単純に狩りをしたいっていうなら他の魔物や獣でも良いだろうし」ぼっさんは僕に相談してくる。


「僕は狩りたいというより最初は見たいという欲求から始まったんだけど……」


「なんで見たいと思ったの?」


「んーーーードラゴンだから?」僕は首を傾げる。「ドラゴンが存在するなら見てみたいかな?」


「じゃあ狩る目的も一緒だね」とぼっさんは再び女性へと振り返り「狩る目的はドラゴンが存在するからです」と若干不明瞭な返答をするが合っていると思う。


 ぼっさんの言葉に衝撃を受けたのか、もう何を言っても駄目だこいつらと思ったのか分からないが、女性は硬直してしまう。しかし、数秒後には瞬きが再開され手足を動かし窓口横の扉からこちら側へ出てきた。


 後ろで待機していたおんちゃんとうにやんも不穏な雰囲気を察知し僕たちの方へ近づいてくる。


「それでは仮にもドロールドラゴンを狩りに行くとして、あなた方は何ができるんですか?」女性は僕たちの前に立ち言い放つ。


 今までカウンター越しで話していたので服装を意識してこなかったが、女性は若緑色のボートネックTシャツ、黒のレギンスにグレーでチェックのショートパンツを重ね、緑色のスニーカーを履いている。


 そして女性一人に対して、我々四人が整列し対面する形となっていた。


「何これ?」うにやんが僕に聞いてくる。


「まぁ面接みたいなものだから」


「料理ができます」ぼっさんが答える。「次うにやん」


「え、絵が描けます」


「何もできません」僕。


「お菓子が作れます」おんちゃんがトリ。


「おんちゃんこっちにきてからお菓子を作ってるとこ見たことないんだけど」僕が茶茶を入れる。


「でも嘘じゃないよ。ちゃんと作れるし」


 おんちゃんはずる賢く社会を生き延びていくタイプだな。多分。


 とそんなこと考えている場合ではないようだ。ショートボブのお姉さんは僕たちの回答がお気に召さなかったらしく目を大きくし胸が膨らみ肩が上がり髪の毛が逆立っている。アニメのような演出だ。これぞファンタジー。


「戦い、戦闘に関することを聞いているんです。もう一度お願いします」身体を落ち着かさせ丁寧に質問してくるお姉さん。


 狩処ポナモザ内で「何もできません」が四回連続で空を切る。


「お、揃った」ぼっさんが口ずさむ。


「四人同じってことは?」僕が反応する。


「革命だッ!!!」口揃えて叫びハイタッチをする僕たち。


 黒髪のお姉さんは開いた口が塞がらず言葉を失った……。

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