メーネ-7
結局、ぼっさんの指からは何も生まれずに終わった。
「やっぱりこの世界の人にしか魔法は使えないのかなー」ぼっさんが星型の玉ねぎをフォークで刺す。
「うーん。そうかもしれないし。キッカケみたいなものがあるかもしれないし」うにやんは焼き枝豆から大きさがゴルフボールほどの中身を取り出す。
「僕も枝豆の豆一個ちょうだい」うにやんにねだる。
「うにやんさんが言うように何かの拍子で急に魔法を使えるようになる人もいますよ」メーネさんがアスパラガスをナイフで細かくしながら教えてくれる。
「次のお肉焼いても良いかしら?」カラルルさんのお皿は空になっていた。
それから僕たちは歓談しながら次々と食材を焼き、次々と胃袋の中へと収めていった。
そしてぼっさんがデザートにと自分のショルダーバッグからバナナとチョコレートを取り出す。バナナの形に沿ってナイフで皮ごと切り込みを入れていき、その中にチョコレートを詰め込んでいく。さらにそれをグリルの網の上に置き焼いていくようだ。
「見つけた……」
ポカポカ陽気の和気あいあいとしているバーベキュー会場に、ジトジト気分な涙目うるうるのおんちゃんが姿を現した。
「…………」
各々あらぬ方向を見て何も言わない。メーネさんも察して静観している。僕も顎を触りつつ対岸で釣りをしている人に目をやる。
「とりあえず座ったら」ぼっさんがおんちゃんに声を掛ける。
素直に僕の隣へと着席するおんちゃん。そしておんちゃんの前にぼっさんから焼きチョコバナナが置かれる。バナナの皮は焦げているが、チョコが溶けバナナの中身にコーティングしており美味しそうだ。
おんちゃんがスプーンを持ち焼きチョコバナナを掬い口に運ぶ。
「どういうことなの」と隣にしか聞こえないように喋るおんちゃん。
おんちゃんが何て言ったのかぼっさんが僕に聞いてくる。
「おいしいって」僕はぼっさんに伝える。
そうかそうかと満足してグリルへ戻るぼっさん。
僕も事情を話すことにした。
「昨日こちらのメーネさんから一緒にバーベキューをしましょうという依頼を受けたの」僕はメーネさんを紹介する。
メーネさんは「初めまして」と挨拶。おんちゃんも「初めまして。こんにちわ」とメーネさんの顔を見て一瞬目を見開いたが、挨拶が終わるとすぐにまた気分を落としてしまう。
「で、依頼を受ける相談のために僕は一旦家へ帰ったんだけど、ぼっさんとうにやんは居た。だがおんちゃんは居なかった。その時おんちゃんは?」
「……散歩をしてた」おんちゃんがチョコバナナを飲み込み喋る。
ここでぼっさんがみんなの分の焼きチョコバナナをテーブルに置き着席する。
「うん。そのため丁度遊びに来ていたカラルルさんをバーベキューに誘ったの」
カラルルさんが片手を挙げる。僕は焼きチョコバナナを一口食べる。美味しい。
「それでカラルルさんが帰った後、三人で夕食を食べ、寝る前までおんちゃんが帰ってくるのを待っていたんだけど、結局おんちゃんは帰宅しなかった。その時おんちゃんは?」
「……散歩をしてた」おんちゃんがポツリと呟く。
「それにより、翌日つまり本日僕たちは集合場所に向かうため昼前に家を出ようとしおんちゃんに呼びかけたが、その時おんちゃんは?」
「…………寝てた」死んだ魚のような眼になるおんちゃん。
「であるからして、こうして僕たちは心苦しい気持ちになりながらも依頼のためここでバーベキューをしていたという訳です」
無言になるおんちゃん。
「それにしてもよく僕たちの場所が分かったね」ぼっさんが質問する。
「あ、ボクが置き手紙しておいたから『バーベキューしてきます』って」うにやんが手を挙げる。「でも場所は明記してなかったはずだけど」
「あ、それは日頃の散歩のおかげでバーベキューをする場所があることは知っていたから」と開き直ったのか分からないが眼に光を取り戻すおんちゃん。
「まだ食材は余ってますので、おんちゃんさんも焼いて食べてください」とメーネさんが声を掛ける。
「ありがとうございます」と元気良く頭を下げ、すっかり元通りになるおんちゃんなのであった。
めでたしめでたし。




