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ヲタク四人の異世界漫遊記  作者: ニニヤマ ユポカ
第一章
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魔物-2

 おんちゃんは態勢を立て直し、僕らは再び魔物図鑑を繰り進める。


「八本足のドラゴンっ!」うにやんが少し大きな声を出す。


『名前:ドロールドラゴン 八本の足を駆使し素早く移動、時には後ろ足を使い立ち上がり遠くを見据える。獲物を見つけると、唾を飛ばし相手の動きを封じたり撹乱させる』


「ファレサさんの言う通りだね。イラストもヨダレだばだばだ」


「説明を読む限り、見つかるとヤバそうな相手だね」ぼっさんが眼鏡のズレを直す。


 相槌を打つ三人。


 さらにページを進めると、あるイラストを見つけ手が止まる。


「…………」


「ステーキじゃん」ぼっさんが静寂を引き裂く。


 我々の眼下には食堂で目にしたような牛ステーキが描かれていた。


『名前:ミミクック 料理に擬態する魔物。匂いも真似することができ、誤って食べようとすると、逆に食べられてしまう』


「こわっ。匂いも真似するってどうやって見分けるんだろう」おんちゃんが頭を悩ます。


「刺して確かめるとか?」


「刺したら逆上して食べられそう」うにやんが述べる。


「忽然と不自然に料理が現れたら疑うしかないのかもねー。バニベアのときみたいに」ぼっさんの所見。


 そうだねーっと言いながらページをめくる僕。


「ステーキも良かったけど、こっちも美味しそうだよ」


『名前:チョコメクジ チョコレートが溶けたような質感を持つナメクジ。稀に排泄物の中から透明度が高い赤色の石が発見される。その石はチョコメストーンと呼ばれ、高値で取引される』


「お金を生むナメクジかぁ。繁殖させれば儲けれそうだね」おんちゃんはお金の匂いを嗅ぎつけた。


「毎日排泄物をチェックするのは大変そう」うにやんは現実を叩きつける。


「排泄物を処理してくれる生物を一緒に配置すれば良いのでは」ぼっさんのアイディアがキラキラな道を示してくれる。


「じゃあ試してみる?」


「…………」


 僕らは大いに夢を語ることができた。



 その後、我々は日々依頼処ギネガラへ通い、愚直にお金を稼ぎつつ、必要な品を揃えていく。そして、懐にも余裕を持てるようになってきたので、町長さんと町長夫人、そしてチヴェカさんを食事に誘い、今まで手助けをしてくれたことへのお礼をした。


「昨日は久しぶりに町長さんたちと会話が出来て良かったねー」棚の食器を出しながら、調理中のぼっさんに話しかける。


「うん。俺たちの依頼の話を聞きながら、町長さん少し泣いてた」


「自立したことや、成長してくれたことが嬉しいんじゃないの。町長夫人は笑っていたけど」


「それと、チヴェカさんとも長く話せたのは良かったね」


「そうだねー。前回ご馳走してくれた時は時間も限られていたから。それでもまだ話し足りないけど」


「それはまた今度っということで、出来上がり」ぼっさんが夕食完成の合図を出す。


 僕はうにやんとおんちゃんを呼びに行き、再度リビングのテーブルへととんぼ返り。皿には豚肉とキャベツのパスタが盛られており、みんなで頂きますをした。


 コンコンコン。フォークを握った瞬間、玄関のドアがノックされる。


「御免くださーい」


 この声には全員聞き覚えがあるので、みんなして玄関へ向かう。


 ドアを開けるとファレサさん……と後ろにソルドさんが立っていた。


「夜分にすみません」と謝りから入るファレサさん。


「いえいえ。どうかされました?」


「カラルルさんからのお届けものを持ってきました」


 失礼しますと二人は玄関の中へ入り、ソルドさんが抱えている大きな紙袋を床に下ろす。さらに袋から布に包まれた平たいものが取り出され、布を取り除くと、額縁に入った鈴知こもかの絵が出現した。


「あ、完成したんだ」とうにやんが呟く。どうやら事情を知っているらしい。


 うにやん曰く、エルミア鉱石収集依頼を受けている最中、カラルルさんは鈴知こもかTシャツの絵柄を模写していたらしい。一日では満足がいく絵にはならなかったが、依頼完了後もうにやんはちょくちょくカラルルさんの家へ遊びに行っており、鈴知こもかを見せていたとのこと。そして、先ほど絵が完成して、すぐに持ってきてくれたというのが事の顛末だ。


「この髪色の緑は、みなさんが採ってきて下さったエルミア鉱石を使用しています」ファレサさんが説明してくれる。


 うにやんのTシャツのイラストと比較しても、ほとんど同じように見える。キャンバスの大きさは縦一〇〇センチ、横七〇センチほどあるので、スケールが大きくなった鈴知こもかが出来たということか。


「どこに飾りましょうか?」ソルドさんは眠気眼だ。


「ここに壁フックがあるので、こちらでお願いします」うにやんは玄関正面の壁を指し示す。


 こんなところにフックがあったことすら今まで気がつかなかった。前の住人が絵を飾っていたのだろうか。


「失礼しました」と壁に絵を掛け、ファレサさん、ソルドさんは帰って行く。


 こうして、僕たちは、いついかなるときでも玄関で送り迎えをしてくれる笑顔の鈴知こもかさんとの生活が始まった。



「それにしても上手く描けてたねー」「さすが絵描き志望」と夕食の続きを再開するため各々リビングへと戻り着席をする。だが、ここで皆異変に気づいた……。


「パスタって余分に作ったの?」僕はぼっさんに聞く。


「いや、四人分しか作ってないけど……」


 僕も棚から皿を四枚出した覚えがある。五枚は出していない……。


 そう、現在テーブル中央には五つ目の豚肉とキャベツのパスタが置かれている。


「…………」


「「「「ミミクックだっ!!!」」」」

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