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ヲタク四人の異世界漫遊記  作者: ニニヤマ ユポカ
第一章
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依頼-8

「バニべア……名前からしてクマですか?」僕はファレサさんに質問する。


「そうです。ウサギ耳を模した耳を生やしているクマです」両手を頭の上に置き、手のひらを二回折り曲げウサギの表現をするファレサさん。


「なるほどー」と僕らも同じジェスチャーをする。


「バニベアは魔物の類ですか?」


「いえ。動物の類です。哺乳類です」


 あら残念。初めての魔物との遭遇かと少し期待をしてしまった。


「バニペアはウサギ耳で獲物を引き寄せて、近づいてきたところを捕食する狡猾なクマです」


 おんちゃんが雑なムーンウォークでこちらへ舞戻る。


「あの耳がバニベアなのかウサギなのか判断できますか?」ぼっさんが少し屈み、走り出せる体勢を整える。


「見た目で区別するのは難しいですが、本日はウサギを見掛けていないので、急に耳だけ現れるのは不自然だと思います」


「確かに」納得するぼっさん。


「しかし、奴さんもあの場から全然動かないですね」


「ええ。バニベアは狡猾で忍耐力のあるクマですので」


 バニベアさんに持ち味が一つ加わった。


「どちらにせよ、近づかないようにしましょう」ファレサさんはけもの道から外れ歩き出す。


 僕たちも追従、迂回し、バニベアが潜んでいるであろう草むらを回避。再びけもの道へと戻った。


 結局、あの耳がウサギだったのかバニベアだったのかが気になり、歩きながら振り返ると、草むらが揺れているのが見えた。そして茶色の巨体がのそりと姿を現す。


「ファレサさんの言う通りバニベアだったよ」ぼっさんに話しかける。


「ほんとだっ」ぼっさんも振り返り確認する。「あ、目が合った……」


 えっ。と、再びバニベアを見ると、すでにこちらに向かって走り出していた。


 白のウサギ耳をバタつかせ、腐葉土を撒き散らしながら四つの手足で茶色の体躯を運んでくる。瞳の先のターゲットはもちろん我々だ。


 僕は目を見開き、足元から頭頂部にかけて微弱の震えを感じる。


「バニベアが追ってきたよ。走って走って」バニベアとの距離は離れているので、前歩く方たちへ冷静に避難勧告を出せれた。


 ファレサさん、うにやん、おんちゃんも振り返り、だいたい同じような表情で驚き、走り出した。


 逃げ出してから分かったけど、あやつは走るのが遅いらしい。クマの走りは案外速いとは知っているが、バニベアさんは別みたいだ。だからあのうさぎ耳をおとりにして餌を確保しているのか。だが、こちらも労働の疲れとエルミア鉱石二・五キロを持参していることにより速度は互角。


「…………」


 いや、負けている。徐々にバニベアさんのご尊顔が大きくなっているのが分かる。ホッキョクグマのように可愛くはないが、日本に生息しているクマよりかは怖くない顔つきだ。しかしウサギ耳装着で、やや可愛いよりに感じる。


「…………」


 バニーガールに対して、ベアーガールというのを唐突に思いついたが、今はそんなことを考えている時ではない……。そんなことでもない重要なことだ。しかしながら「ベアーガール」とネットで検索すれば、色々と出てきそうではある。


「…………」


 これ以上の脱線思考は命に関わるので、逃げ切る方法を考えることとする。僕の所持品はショルダーバッグに入っている金属製の水筒。水が半分残っている。それとエルミア鉱石が入っている袋だ。袋を手放して逃げることに専念するべきだが、もう少し粘ろう。さらに近づかれたら袋ごと投げて、あわよくばバニベアに一矢報いたい。水筒は近接戦になったら鈍器として使えるかもしれないが、勝ち目はないだろう。


「…………」


 みんな無言で息を吐きながら雑木林を走り逃げているが、こういうときこそ「ここは俺に任せて先に行け」というセリフを使う絶好のシチュエーションではなかろうか。なぜ、誰も言わない。お互いに誰かが声をあげるのを待っているのか? 心理戦が展開されているのか? 誰も発しなければ僕が決め台詞を使ってしまうぞ…………。絶対にぜええぇったああアィぃに言わないけどね。


「もうすぐ平原に出られますよ」


 やっぱり格好良くセリフをキメるかと考え直していると、前方を走るファレサさんの声が聞こえてきた。

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