表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヲタク四人の異世界漫遊記  作者: ニニヤマ ユポカ
第一章
23/103

依頼-7

「裸でしたけど、狂ってはいなかったですよ」おんちゃんがファレサさんに弁解する。


「でもある意味狂ってはいたよねー」「毒されていた」「人の尊厳を忘れたナニかだった」各々傍聴席から言葉を投げかける。


 それからおんちゃんは裸の経緯を話し、ファレサさんを承服させた。チヴェカさんや町長夫人にも説明のために、おんちゃん裸物語を聞かせていたが、まさか服を手に入れてからも、このような珍話を語らないといけないとは、自身も思っていなかっただろう。だが、今回は自業自得だ。


 皆落ち着きを取り戻したところで、登山を再開した。


 見渡す限り木々に囲まれており、ところどころに木漏れ日が差し込まれている。何気なく地元の小さな山に登ったときのことを思い出し、今の景色と大差無いことを感じる。


 足元にも注意しながら歩いていると、木の根元に青色のキノコが生えているのを発見した。直径十五センチほどのキノコは艶があり弾力性もありそう。そう、まるでおんちゃんが食堂で食べていたズズズダケに……似ている。


「あれってズズズダケですか?」僕はキノコを指差し、ファレサさんに尋ねる。


 目を細め、ううーんっと考えるファレサさん。


「すみません。分からないです」


「そうですか……。いえ、気にしないでください。ふと思っただけです」


「ケイラさんなら分かったのに……」ファレサさんに聞こえないように耳元で囁いてくるおんちゃん。


 僕は大きく肩を振り妖怪を退けた。



 それから数分後、エルミア鉱石の採集場所へと到着した。登山途中立ち止まることもあったので、時間が掛かったが、何事も無ければ麓から二〇分弱で来れるだろう。


 目の前は崖っていうほどではないが、親戚の家の階段のように急な角度の斜面が続いている。その下には緑な石が点在していることが確認でき、これがエルミア鉱石だろう。


 僕らはファレサさんから布袋を頂き鉱石集めを始めた。ファレサさんも手伝いますと願い出たが、お茶でも飲んでてくださいと断りを入れ、現在彼女は大きな岩の上に座りお茶をすすっている。


「そういえば重さってどうやって量るの?」うにやんが鉱石を袋に入れながら聞いてくる。


「あっ」完全に失念していた。「ファレサさーん。量り持ってますかー??」座っているファレサさんに大きな声で質問するが、即ファレサさんの両手でばつ印が作られた。


「ちょっと多めに入れていけば大丈夫でしょ」おんちゃんが提案を持ちかける。


 そうしようかと言いかけたところで、ぼっさんの手が挙がった。


「それは俺に任せてくれ」メガネのブリッジを中指でクイっと上げる。


 久しぶりにその仕草を見た。


 

 エルミア鉱石を集め始めて一時間ほど経っただろうか。袋が半分以上溜まったので、ぼっさんのところへ持っていく。


 ぼっさんは無言で袋を受け取り、両手にて体の前で持ち上げた。袋を上下させ、時には目を瞑り重さを量る。


「二・二キロ」機械のように数値だけを出力するぼっさん。


 自分の袋から鉱石を取り出し、僕の袋に入れ、再度袋を両手で持ち上げる。


「これで二・五キロだ」


 本当に合っているのかと聞いたが、正しいと一点張りなので、ぼっさんを信じることにした。


 残りの三袋にも手分けして鉱石を入れ、ボッサンという名の計量器へと持っていく。アルファベットでBOSSANの方が格好よいだろうか。


 そして四袋全て集め終わり、口を紐で縛る。読書中のファレサさんに声を掛け、時刻が午後二時四十五分であると教えてもらい、三時まで休憩することにした。



「みんなして袋を担ぎ、山道を下りていると、お金持ちの家から財宝を盗み出した後みたいだね」休憩が終わり、復路を歩き始めた我らに、うにやんが小粋な例えを出してくれる。


「もしくは盗賊のアジトから、盗まれた金目の物を取り返すとかね」ぼっさんも会話に乗っかった。


「うーん。ドラゴンに守られし伝説の秘薬を手に入れたとか」僕も頑張って捻り出す。「あっ」自分で言っておいて、八本足のよだれドラゴンを想像してしまった。別に気分を害した訳では無い。ただ、思い出してしまったというだけ。


 それよりもエルミア鉱石の負担が徐々に来るのが分かる。袋を担いだ時、二・五キロなんて余裕だなっと思っていたけど、少しずつエネルギーを消費させられる。これで二時間歩くのはしんどい。小刻みに休憩が入りそうだ。


「ウサギがいるよ」前を歩いていたおんちゃんが振り向き教えてくれる。


 どれどれと僕たちも前に出ると、確かに前方左の草むらからウサギの耳が突出しているのが分かる。


「ウサギって食べられるのかな」おんちゃんが呟く。


 お金が無く近い将来の食事に不安を感じる我々にとっては、自然に出てきてしまう言葉だ。


「食べられるけど、捕まえることができたらの話でしょ」ぼっさんが袋を担ぎ直す。


 それを聞き、おんちゃんが袋を下ろし、草むらににじり寄ろうとする。ウサギの耳はヒクついている。


「待ってください」ファレサさんが制止する。


 ピタッと動きを止めるおんちゃん。


「あれはウサギではなく、バニベアかもしれません」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ