依頼-5
「魔物についてですが……」サクッサクッと草を踏みしめながら平原を進行中。
「魔物……ですか?」ファレサさんが歩きながらこちらに顔を向けてくれる。
「昨日、ソルドさんが魔物に襲われても守りますと言ってましたので、存在が気になりまして」
「???」話が見えてない様子のファレサさん。何が言いたいのか理解するために上を向いて考え始めてしまった。
「えーとですね」ぼっさんが説明してくれるようだ。
僕も考えを整理せずに見切り発車で話し始めたのが悪い。
「ファレサさんは私たちが別の世界から来たことは知ってます?」
「はい。それはカラルルさんから聞いてます」
「私たちの世界には動物や虫、魚などはいますが、魔物が存在していなくて、架空の生き物として扱われているんです」
「あ、そういうことでしたか。つまり、本当に魔物がいるのか。姿形などを知りたいのですね」理解が早いファレサさん。
「如何にもです。是非」お日様の輝きがぼっさんのメガネフレームを光らせる。
「そうですねー。私も専門家では無いので知っていることで言えば」また上を向いて思考を巡らせている。「あ、取り敢えず魔物はいます。この世界には」
魔物の存在確定。
「でも昔は居なかったみたいですよ」
「そうなんですか!?」少し意外というか、驚いた。
「はい。私も学校で習ったことなんですが、三百年ほど前に世界が黒い霧に覆われてから魔物を見かけるようになったと」
おお、ファンタジーらしい。
「どのような魔物がいるんですか? ドラゴンとか?」おんちゃんが活き活きしている。
「ドラゴン存在しますよ。八本足のトカゲのような生き物ですよね」
「んんんん????」我々の足がピタリと止まった。
「どうしました?」振り向くファレサさん。
「何が言いたいか分かるが、取り敢えず歩きながら話そう」とぼっさんが声を掛け、僕らはまた足を動かすことにした。
「八本足ってタコじゃん。蜘蛛じゃん」おんちゃんが突っ込む。
「ファレサさんはトカゲって言ったから、俺たちが想像しているドラゴンと近いものはあると思う」ぼっさんが冷静に発言する。
「他にドラゴンの特徴はありますか?」ファレサさんに質問。
「私も実際に見たことが無いので……うーん」一生懸命、知識を掘り返している。
「羽が生えているとか」うにやんが球を投げてみた。
「羽は……無いですね」当たらない。
「ツノが生えている」おんちゃんも投げる。
「ツノはあったかもしれないです」かすった。
「口から火を吹く」僕も試しに投げる。
「あっ!」ファレサさんのまぶたが大きく開いた。
僕たちも背筋を伸ばす。
「口からよだれをまき散らすというのはよく聞きます」
「…………」当たらず。
「ドラゴン以外の魔物は何かいますか? ファレサさんが覚えている中で」ぼっさんが話題を変える。
「そうですねー。名前は覚えてませんが、身体が細長くて、二本足で、その……まるでアスパラガスが歩いているような魔物がいます」人差し指を立てるファレサさん。
うーんと首をかしげる僕たち。想像はできるけど、変な魔物……だな。しかし、見たいという欲は出てくる。
「魔物のことを知りたいのでしたら、本屋や図書館に図鑑が置いてありますので、ご覧になると良いと思いますよ」
「なるほど。では依頼が片付いたら覗いてみます。ありがとうございます」御礼を伝える。「でも最後に一つだけ質問を」
「なんなりとどうぞ」
「スライムはどのような見た目をしていますか?」
「…………スライムという名前を聞いたことが無いです」
ピィーヒョロロロロォォと上空の鳥の声が鳴り渡る。




