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ヲタク四人の異世界漫遊記  作者: ニニヤマ ユポカ
第一章
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依頼-3

「前払い……。構いませんけど、何か理由が?」カラルルさんは疑っているのではなく、純粋な興味だろう。


「長時間歩くことや、山へ入ることを考慮すると、やはり靴が必要だと思いましたので、先に買っておくべきだと」ぼっさんが考えを述べる。


 ぼっさんの見解にカラルルさんと僕ら三人は肯首する。


「それでしたら、喜んで報酬の前払いさせていただきます」と手を合わせるカラルルさん。


「良いのですか? 私たち、報酬を受け取ったら、トンズラするかもしれませんよ」なぜかおんちゃんが不安を煽る。


「んー。心配はしていませんけど……そうですね。それじゃ前払いは半額の二万五千ルンにしまして、無事依頼を遂行できたら残りを渡します」笑顔で話すカラルルさん。「それと……」


「それと?」四人の声が重なる。


「鈴知こもかさんを人質にします」ビシッとうにやんのTシャツに指を差す。


「…………」


「エエエエエェェェェェーー〜〜〜ー」うにやんの絶叫ソロパート。



 僕たちは依頼を承諾し、うにやんの上半身はシャツ一枚というセクシィな格好となった。こもかTシャツはカラルルさんの隣で丁寧に畳まれている。


「今更ですが、いくつか質問良いですか?」いざ、仕事をするとなれば疑問点が見えてきてしまう。


「はい。なんでしょう」ご満悦のカラルルさん。


 うにやんは「余計なことを言うから、こもかが、こもかが……」とおんちゃんに文句を言っている。おんちゃんは笑いながら謝罪対応。


「エルミア鉱石は簡単に見つかるものなのですか?」


「ええ。麓から少し歩けば急な斜面がありまして、そのあたりにゴロゴロと転がっています。つるはしやスコップを使って探すということは無いですよ。山菜採りの気分で大丈夫です」


 山菜採りと言われて、とても気が楽になった。比喩表現って大事ね。


「次の質問ですが、危険な動物、生物に遭遇することは?」


「うーーん」少し考えるカラルルさん。「私も何回か往復していますが、危険な生き物には出会ったことないですね。帰り道雨に打たれたことはありますけど……。あ、でも虫はもちろんいますし、蛇とかもいると思いますので、そこは気をつけてください」喋り終わりお茶を一口飲むカラルルさん。「他はどうでしょう?」


 んー。もう聞くことはないだろうか。また一晩経てば出てきそうだな。


「やはり場所が不安なのですが、地図はありますか?」ぼっさんが質問する。


「町の地図はあるのですが、シルム山周辺の地図というものは無いですね。申し訳ないです」


「いえいえ。無いのなら止むを得ないですよ」ぼっさんが両手を振る。


「しかし、ご安心ください」カラルルさんの声が大きくなる。「そんなことも、こんなことも、あーんなこともあろうかと」ヌッとテーブルの下からハンドベルを取り出した。


 チロンチロンとカラルルさんがベルを鳴らすと、ドアノブが下がり先ほど退室したファレサさんが入ってきた。だが入室はファレサさんで止まらず、さらに人が続く。


 次に入ってきたのは青髪でスーツ着用の男性。ファレサさんと同じ二十代前半っぽい。その後ろには、先ほど庭で出会い、この部屋まで案内してくださったお母様。服装は変えて紺色のワンピースを着ての登場だ。


「さぁ。この三人から選んでください」いつの間にかカラルルさんは立ち上がり、三人の斜め前に立っている。


「えっと。話が見えないのですが……」


「あはは。失礼しました。地図が準備できない代わりに、この三人の誰かが道案内役を致します」


「……。提案は嬉しいのですが、本人たちの意向は良いのですか?」


「はい。問題無し無しですッ!」テンションが高いカラルルさん。前に立っている三人も頷いている。「さぁさぁ、誰にします?」


「みんなで相談します」と手を上げる。



「なんか、RPGの選択肢っぽくなってきたね」おんちゃんが興奮している。


 僕たちは部屋の角に集まっている状態だ。


「そうかもしれないけど、そんな呑気に構えて良いのかなー」


「良いんじゃない。別に悪魔への生贄を選ぶ訳でもなく、人間に化けている魔物がいるので当てなさいでもない。ましてや結婚相手の選択でもない。ただ道案内をしてもらうだけなんだから」とぼっさんが腕を組んでいる。


「でも、それぞれ付加価値があるかもしれないよ。ほら、男性を選べば鉱石運びを手伝ってくれるかもだし」うにやんが人差し指を立てて前後に振る。


 よし、それではとカラルルさんたちの前に向き直る。


「決まりましたか?」カラルルさんのボルテージは維持されている。


 ここで、雰囲気作りのため、しばしの静寂を作っておく。


「…………」


「みなさんのアピールポイントを教えてください」

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