シャヌラ-10
依頼処ギネガラを後にした我ら四人衆、住所を聞くために町長さんの家へ行くことに。途中商店街で忘れずに食材を購入し残金はほぼ半分となった。
町長さんの家へ行きノックをするが、誰も出てこなかった。夫人はまだ出かけており、町長さんはお仕事であろう。
仕方が無いので、借家へ帰宅した。帰ってきてから気づいたが、チヴェカさんに住所のことを聞けば良かったなと。もしかしたら知っていたかもしれない。
買ってきた食材はキッチン周りへ置き、下着は一枚ずつ自分たちの部屋へ持って行った。新たな自分の部屋に初めて入れるのが下着とは……。まぁ、大事なものなので。
リビングに戻り時計を見ると午後二時を過ぎたあたりだった。ちなみに時間の周期は僕たちの世界と変わらず、一日二十四時間である。
夜まで暇を持て余す形となってしまい、リビングのテーブルでお茶を飲んでいると、ぼっさんが入ってきた。
ぼっさんは自分でお茶を淹れ対面の椅子に座る。
「夕食は何を食べたい?」ぼっさんが聞いてくる。
「うーん。特に何か食べたいというものはないかな。夜ご飯作ってくれるの?」
「俺が作るのが適任かと思って」
「ありがとうございます」僕は軽く会釈をする。「今日の朝話してたお好み焼きでいいんじゃない?」
「じゃあ、お好み焼きで」ぼっさんが了承する。「風呂はどうする?」
「今日は夫人が言ってたように濡れタオルで身体を拭けばいいと思う。依頼内容を見る限り、山に入るから、その後風呂に入るのがベストでは」
ぼっさんは「うーん」と考えながら上を見上げ、またこちらを向き「それが良さそうだね」と口開いた。
その後、部屋に戻り何をすることもなく寝転がっていた。しかし、ベッドでおんちゃんとの約束を思い出し、おんちゃんに枕を渡しに行った。
しばらくして、再度リビングに戻るとキッチンではぼっさんとおんちゃんが立っていた。二人とも町長夫人から貰った? エプロンをしている。後ろから覗き込むと、おんちゃんが桃色キャベツを千切りにしており、ぼっさんが小麦粉を水で溶いていた。
よし、手伝うことは無いなと思い、ソファに座ろうとしたが、食器棚から皿を四枚出しておくことにした。
ソファでくつろいでいると、キッチンからじゅぅぅぅと音がし始め、「そろそろひっくり返す?」という声が聞こえ、さらにしばらくすると「シキさーん。うにやん呼んできてー」とぼっさんからの指令が降りた。
「了解」と返事をし、うにやんを呼びに行き、皆でテーブルに着席する。
テーブルにはお好み焼きを目指した料理が置かれ、右にナイフ、左にフォークが置かれている。
「ボク、フランス料理初めてだよ」とうにやんが冗談を飛ばす。本気では無いはず。
「どうぞ、お召し上がり下さい」とぼっさんが手のひらを皿に向ける。
いただきますをして、ナイフとフォークを持ち、皿の上を見つめる。ソースなどのトッピングは無いが、焦げ目が付いた何かが鎮座していた。切り分けて断面を見ると薄黄色の生地の中にキャベツの桃色が見える。紅生姜にも見えなくも無いがキャベツだ。
口に含んでみると、キャベツはシャキシャキだが、生地がモチモチではなくネチネチしている。しかし塩が効いており、食べれなくはない。
皆もカチカチとナイフが皿に当たる音を出しつつ、黙々と食べている。
カチョッっとぼっさんがナイフとフォークを皿に置く。まだ半分残っていますよ。
「出汁が必要だ。旨味が足りない」ぼっさんが叫ぶ、いや嘆く。
「こっちの世界でお手軽に使える出汁って売ってるのかな? 固形物の」
「見た限り売ってなかったね。なので、出汁から作っていくしかない」ぼっさんが立ち上がりこぶしを握る。
「食べないなら貰うけど」とおんちゃんがぼっさんの皿に手を伸ばす。
瞬く間におんちゃんの手を抑えるぼっさん。




