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ヲタク四人の異世界漫遊記  作者: ニニヤマ ユポカ
第二章
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魔王-12

 一通りのゾンビを撃退。残すはキベロスさんを襲っているゾンビ群のみとなる。


 キベロスさんはゾンビに対して、地団駄を踏んでおり近づくことができない。踏みつけられたゾンビたちは何事もなかったかのように起き上がり、キベロスさんを攻撃し出す始末である。ここでわかったことはゾンビ共が武器を持っていることだ。今まで倒してきた屍人は素手であったが、最後の彼奴らは剣や斧を持っている。武器を持つほど好戦的であり、だからこそ執拗にキベロスさんを永遠に襲い続けているのかもしれない。


 僕がゾンビを観察している間、前方にいるキヌモアさんとリオリネさんは何か話し合いをしている様子だった。

 キヌモアさんが右手を前方へと掲げる。手には煤けたグローブを嵌めており、そこから一点の炎を導き出す。その後、すぐにボンッと音が鳴り火の玉が前方へと飛んでいった。ファイアボールは弧を描き一体のゾンビへと命中する。


「おぉ」っと思わず声が出てしまう僕。


 みんなも同様にそれぞれの感想を漏らしていた。


 被弾したゾンビがこちらに振り向き近づいてくる。手には曲剣が。


 それに対し、リオリネさんが一歩前へと出ていく。二歩、三歩とゆっくりと。


 ゾンビがリオリネさんにターゲットを合わせて、走り込んでくる。右手の武器を振り上げながら。


 しかしながら、リオリネさんは微動だにしない。髪とロングスカートが風になびいているだけ。


 ゾンビとの距離が縮んでくると、彼女は右手を上げて終わらせた。そう、終わらせたのだ。


 瞬時に氷の槍を作り出して、相手に突き刺した。いや、勝手に刺さってきたのが正しい。


 リオリネさんがゾンビ頭部から槍をスッと抜くと同時に、キヌモアさんが火の魔法を相手方へと打ち込んでいく。花火大会のクライマックスかのようにポポポポポポポポンと連打する。


「ちょ、ちょっと待ってください」リオリネさんは慌ててキヌモアさんを止めようとする。


 しかし、明るく染まった赤橙髪の彼女は発射し続ける。


 その結果、火の玉はいくつかは外れたが、全てのゾンビへと命中した。


 ゾンビたちは振り向き、こちらへと向かってくる。三十体程はいるだろうか。


「私の仕事は終わりましたので、後はお願いします」キヌモアさんはリオリネさんに声を掛けて、こちら側へと後退する。


「あんな大勢一気には……」と言い掛けたところでリオリネさんはハッとした表情をした後、ゾンビ群へと迎え撃つ態勢に入った。


「大丈夫なんですか?」ぼっさんはキヌモアさんへ声を掛ける。


「大丈夫ですよ」ニコリとするキヌモアさん。


 仲が良いのか、良くないのか分からない二人であるが、キヌモアさんもリオリネさんのことを信頼しているのが感じ取れる。


 水色髪の彼女は前方の空を見上げて、両手をむけた。荒野の上空には見る見るうちに氷の塊が作り出されていく。


 リオリネさんは襲ってくるゾンビたちをチラチラと見ながら氷を大きくしていく。


 ゾンビ共は刃こぼれした剣や斧、鎌などの武器を持ちながら徐々に速度を早めて向かってくる。


 しかし、リオリネさんは焦る様子は無い。逆に見ている僕らは焦ってしまう。


 呻き声と大地を蹴る音が大きくなり、これ以上は奴らを近づけてはいけないと僕でも判断できる瞬間。


 リオリネさんは両手を振り下ろし、氷の巨塊を地面へと叩きつけた。


 轟音とともに砂埃が舞い散り、前方の様子が見えなくなる。だが、風のおかげで視界はすぐにクリアとなった。


 氷塊は大きく割れて、ゾンビたちはそれらの下敷きになっている。一体も逃してはいないみたいだ。


 しかしながら、ゾンビらの声は漏れており、身動きが取れないながらも、息はしている様子。いや、元々死んでいるから息はしていないか。紛らわしい。


 リオリネさんはそんなゾンビらにゆっくりと近づいていき、一体一体に槍を突きつけていった。



「これが氷処カルシュで培った氷作りの力よ」右手親指をグイッと上げて僕らに勝利宣言するリオリネさん。


 わーっと我々は拍手をして、その功績を称えた。


「それにしても、あんなにも短時間に巨大な氷を作れるもんなんですね」うにやんは感心している。


 僕も同感だ。


「実はワタクシもそれには驚いています」自分自身に対して腑に落ちない様子のリオリネさん。「いくら雑に生成したとしても、あの大きさの氷を作るのにはもっと時間が掛かりますので」


「先ほど話していた、この辺りには魔力が充満しているせいかもしれませんね」キヌモアさんが考察する。


 リオリネさんは首肯する。「後、時間が迫っていたから、急いで作らなきゃという意識もあったかもしれません」


「なんにせよ、流石です」おんちゃんは褒め言葉を送った。

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