100年たったある日
我がこの世界で目覚めて早くも100年。
我は人間になって村に紛れ込んで生活したり、暗い山の中で出会った人間の目の前でわざと人間から九尾や鬼などに変わり、腰を抜かすところを見たりして退屈を紛らわせていた。
たまに災害が起きているところで、姿を変えてその村を助けたりなど気まぐれに行動していた。
そしていつの間にか魔化や魔禍などと呼ばれるようになった。
気に入ったのでこの世界では「マカ」と名乗ることにした。
そんな感じでいつものようにぶらぶらとしていたある日の夜。
人間の女になり山を歩いていたときだ。
「…お前は食べてもいい人間か?」
凜とした声が聞こえてきた。
(ふむ。)
声のした方向を見ると金色髪でロングヘアの女の姿をした『妖怪』がいた。
「…さて?食べてもいいと言えなくもないが……。どうなのだろうな。」
「…そうか。なら、食らわせてもらう。…すまない私だって食うなんてしたくないのだ……。」
彼女はそう言うと私に『普通の人間ならば』一瞬にしか見えない速度で我に歯を突き立てようとしてきたが…、
「遅いぞ人食い妖怪。我を食いたいならもっと早くなければな。」
「え…!?」
我はその妖怪の腕をつかみ一本背負いで投げ飛ばす。
人食い妖怪は驚くものの空中で態勢を立て直し着地する。
「…馬鹿な。お前は陰陽師かなんかなのか?しかし今のを一本背負いできるのは博麗の巫女のあいつくらいしか……。」
と悩み始めたその瞬間に彼女はふらついた。
「…?其方大丈夫か?少しふらついておるぞ。」
「うぐぅ……。まずい……。り…せい……が………。」
「…なに……?」
妖怪とは高位になればなるほど理性を失うということがまずありえない。力が強いほど余裕ができるからだ。
彼女はかなり高位の妖怪だと思われる。
(そんな妖怪が理性を失いそうだと…?)
「い……や…だ………。にんげ……食べたく…な………うがぁ……うぅぅ……。」
まさか、
「おぬし人間を食っておらぬのか…?」
「うぅぅ……。」
理性を半ば失い欠けている。
(仕方ないのぅ…。)
「ほれ、我の左腕を食らうがいい。というか食え。」
そう言い、無理矢理彼女の口に手を突っ込む。
「むぐっ!?」
彼女は少し驚いたが我慢できなかったのか我が出した腕にかみついた。
「むぐ…あむ……ん………。」
そして左手首まで食べ終わった瞬間、
「っ!?」
ばっ、とすぐ後ろに下がった。
「お前…何故自分から……?死にたいのか?」
そう言って懐疑的な目を向ける。
「死ねるというなら是非死にたいものであるなぁ。まぁ我は、ちと特殊でな。普通の死に方ではすぐに蘇るのじゃよ。
それと、その様子じゃと腹は満たされたかの?」
「なっ……!?」
彼女は『食われて亡くなっているはずの』我の左手と自分のお腹を交互に見た後、苦笑を漏らした。
「…あんた何者?左手だけで私の腹を満たすなんて。しかも食ったはずなのについてるし。まさかただの人間なんて言わないだろう?」
「ふむ…。」
我は少しの間考え…、
「我は『マカ』と名乗っておこうかのう。」
どうしよう。次……。