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道すがら食堂  作者: 木下源影
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四つのプロローグ


【 プロローグ ――――― 変 】


グミン暦


10,802,168年 182日



「さあて!

 旅立つぞっ!」


「どうか、お幸せに」


炎に巻かれている三人がいる。


男と女はその炎に飛び込んだ。


残った男は下げていた頭を上げ、素早く床を抜き、


抜け道を通り裏通りに出て、後ろを振り返ることなくただひとり、


炎に照らされている道を真っ直ぐに歩いて行った。




【プロローグ 出会い】


グミン暦


10,802,579年 67日



「…きゃっ!!

 …いったぁーい…

 …お婆ちゃん、どこぉー…」


少女は気の根っこにつまづいていて転び、


座り込んだまま涙を流している。


少女はキレイなチョウを追いかけていて、祖母とはぐれてしまったのだ。


少女はついに声を上げて泣き始めてしまった。



その時、かさかさと落ち葉を踏んで誰かが歩いてくる足音が聞こえた。


少女は泣き止み、そっと高い草の影から見ると、


少女よりも小さな男の子が歩きながら笑顔で地面を見ている。


少女はひと目見てこの男の子に決めたのだ。


―― きっと日本人じゃないよね… ――


などと少女は考えていたのだが、


思い切って声を掛けることにした。


だが、この泣き顔を今はキレイにすることができないと感じた様で、


少女はあとできっと祖母に叱られるのだが、


やってはならないと言われていたことを、


今回だけと思いながらやり、少年に声をかけることにした。



少年はキャンプに来ている様で、薪を探していたようだ。


少女は少年が、


―― 外国語しか話せなかったらどうしよう… ――


などと考えながら、


祖母にもらったばかりの英語のテキストを思い浮かべた。


しかしよく考えると、テキストは持っているのだが、


まだ教わっていなかったと思い直し、


少女は日本語で、「…こんにちは…」と、自信なさげに小さな声で言った。


「やあ、こんにちは!

 どうしたの?

 泣いてたの?

 迷子になっちゃったの?」


少女は混乱した。


日本語なのだが外国語のように聞こえたのだ。


あまりにも早口で、そして厳しい方言が邪魔をした。


そして何よりも、少女の胸のときめきが、


その声をさらに聞こえ辛いものにしてしまっていた。



「…あのぉー、もう少し、ゆっくりと…」


少女は申し訳なさそうに少年に言った。


「あー、そうだったそうだった。

 街に出ると、何言ってるのかわかんないって言われたことあったから、

 ゆっくり話すことにしたんだった。

 …これくらいで、大丈夫かな?」


「…うん、ありがと。

 ちゃんと理解してくれてよかったわっ!」


少年は理解と言う言葉の意味がよくわからなかったようで、首をかしげた。


少女は13才なので、この程度の言葉の意味は知っている。


そして少女は、少年の年齢にあわせて話をすることに決めたようだ。



「ねえ、なんでもいいの。

 お話、して欲しいなっ!」


少年は頬を赤らめ、小さく頷いて満面の笑みで少女を見た。



少年は家族と一緒に、今日はこの森にキャンプに来ていると語った。


少女が思ったよりも少年は勉強ができる様で、話を続けると、


自分の同級生のような気がして嬉しくて、


ときめきと喜びが少女を包み込んだ。


少年は時折顔を赤らめながら、少女の顔を見ている。


そしてその視線がふと足元に落ちた。


「あれ?

 ひざ、怪我してるね。

 それで泣いていたんだね。

 …ちょっと待ってね…」


少年は、小さなポシェットから絆創膏を取り出した。


それは子供向けでもなんでもないどこにでもあるものだった。


少女の膝の痛みはもう癒えている。


少女は恥ずかしさと嬉しさが入り混じり、


少年に抱きつこうとしてしまった。


だが、それをすることは叶わなかった。


少女の胸は今にも張り裂けそうだったのだ。


抱き付いてしまうと本当に胸が張り裂けてしまうだろうと感じたのだ。


だが少女は、今の気持ちを言葉に込めた。


「…あなたって、私のナイト様だわっ!」


少年は少し驚いた顔を少女に見せ、笑顔で頭をかいた。



だが、その少年の眼が少女の頭の少し上を見て、


世にも恐ろしいものが現れたといった顔に変貌したのだ。




【プロローグ 破滅の始まり】



グミン暦


10,801,749年 325日



彼は大きく両手をかかげて歓喜した。


彼の偉業を知らしめるため、彼は身体を四方に向けて、


さらにチカラ強く腕を伸ばした。



ここはコロシアム。


室内の巨大な闘技場だ。


一番上の客席で今まで行なわれた戦いを見ていた者は、


蟻が戦っているのかと思ったことだろう。


収容人数は15万のこの巨大なコロシアムの中央に、


この星で一番の実力者がその両腕を自慢げに上げている。


彼は今までに誰もなしえなかった偉業を達成したのだ。


そして彼をこの場にいる全ての者が敬い、


その功績を湛えるかのように惜しみない拍手を送った。



彼の目の前には、


トガゲという爬虫類に似た人型ひとがたの生物の残骸がある。


彼は素手で、この体高3メートルを超える化け物に打ち勝ったのだ。


彼は喜びに酔いしれた。



彼は満足して退場口につま先を向けた。


彼の背中のその首には、白い芋虫のような物体が、


振り落とされないようにしっかりとしがみ付いていた。




【プロローグ 連鎖の途中】



グミン暦


10,802,534年 256日



―― ここはなんだろう? ――


この地の言葉で解説すれば、ステックはこのように思ったようだ。


ステックには辺り一面が土色に見えている。



銀色に鈍く光るそれらは散らばった。


ステックもその一団の中にいる。


この軍のこの地への来訪は二度目だ。


今回始めてこのミッションに参加したステックは、


レーダーに誘われ、妙な場所へとやってきた。


戦争をしているのかと少々身を強張こわばらせた。


そして、ある装置のスイッチを入れていないことに気付き、


すぐさま入れたのだが、轟音が鳴り響き、激しく振動して、


ステックは撃ち落されたと感じた。


ステックは身体を半分失くしながらも、安全地帯へと機体を誘導した。


… … … … …


「…なんだ、これは…」


アメリカ空軍でヘリのパイロットを生業なりわいにしている


ジャクソンは足元を眼を見開いて見ていた。



ジャクソンは駆け出しの軍人だが、身なりはそれなりに整えている。


彼の日課は、スーツを着て洒落た帽子をかぶり、


ジュラルミンケースを右手に持ちこの街の散歩をすることだ。


商売女たちが彼を見て、きっと金持ちだと思ったのか、


砂糖を見つけた蟻のごとく群がってくる。


ジャクソンはその瞬間が大好きなのだ。



どう見ても足元にあるものは壊れたおもちゃなのだが、


何かがうごめいている。


ジャクソンは少し身を屈めて観察して、すぐさま身を引いた。


そして辺りを見渡したが、ジャクソンを見ている者はいなかった。


彼は、ほとんど何も入っていないジュラルミンケースを開け、


恐る恐るそのおもちゃのような物体を拾い上げ、


ケースに仕舞い込み、空軍基地へと戻って行った。



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