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魔法使いと魔獣クロ  作者: カンヅキレンナ
第一章 想いの強さ
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3 擬態、捕食、ご用心

あれ?こんなに夜更かしするつもりなんか・・・。あれ?


(力は強い。自分の体が軽いのか、そこまでしんどくはない。けどいかんせん短いのがな)


子犬ほどになった自分の体に文句を言いながら、一本道の洞窟を遅いながらも進んでいく。


(というか、本当にどうなってるんだ?皆に看取られて死んだ所までは記憶が繋がってて違和感ないけど。次に目が覚めたら洞窟の中で、こんな体で?いや、意味分かんない。しかもあんな恐竜、俺の知る限りじゃ、生きてた時の地球にはいなかったし。)


記憶の事や、今いる洞窟であったり、今の体の作りであったり、さっき見た恐竜であったり、まるで知らない世界にいるようだった。


(・・・まず考えて思うのは、夢であること。けどこんなはっきりとしたの夢なんて見たことないし・・・次は、過去にタイムスリップ、タイムリープ?まあどっちかして、恐竜時代に来たとか。けどそれじゃ今の体の説明付かない。こんな生物いたとかも分からんし・・・んで次に、異世界に、転生)


そうすると腑に落ちてしまう。生きていた時に見た小説やアニメの中には、こういった題材の物語もあった。それに似通った事が自分にも起きていると思えば、納得できてしまった。


(・・・でもそれも、正しいのかも分かんない。もしかしたらもっと違う理由があるかもしれないし・・・とりあえず、ここから脱出出来たらにしよう。けど、本当に出れる?)


動きに慣れず小さい体。本当に出口へ向かってるのかもわからない。さらにはさっきのような恐竜、こんなの生きるなんて無理って言いたい。でも。


(・・・せっかく、今生きてるんだから、生きたい。行ける所まで、行こう)


不安もある。恐怖もある。どうして今また生きているのか。どうしてこんな体なのか、疑問もある。だけど前に進むしかない。そう思わなければ、一歩も進めないから。



 

洞窟を道なりに進み1時間ちょっと、広めの空洞にたどり着いた。辺りを見渡してみると、自分が出てきた道の他に二つ違う道が続いている穴があった。天井は真っ暗でよく分からない。


その時、ゲギャア、グギャア、といった声を聞き慌てて隅っこへと移動した。左右にある穴の内、右から何か動くものが見えた。肌は青色で、子供ぐらいの身長、手にはこん棒とか包丁みたいなものを持っている。そして顔は鬼のような形相をしている怪物が4匹。それが一塊で現れた。


(何だあれ?まるでファンタジーのゴブリンみたいな感じだな)


「ギャアァ」「ゲィゲア!」「ギャギャギャグゥア!」「ギィ」


(なんか話してんのか?全っ然分からんけど、あの怪物達の出てきた所はアウト。もう一つの方だな)


幸いにも空洞はあの恐竜が歩いて崩れたのか、身を隠せる場所はいくつもあった。そのうちの一つに身を隠し、やり過ごすことにする。さらに怪物達は自分が出てきた道へ、進もうとしているようだ。


(ようしようし。その調子、君達の冒険がうまくいくことを祈ってるからはやく行って)


ゆっくりと進む怪物達を遠目で見ながら自分自身も反対側の入り口へと向かう。どちらも入り口に近くなった時、変化が起きた。カサッと空気が少し揺れて、何かが動いた音がしたのだ。


(!うぇ、何今の!?嫌な音が聞こえた感じがしたけど!何・・・)


ばっと振り向いた時、自分とは真反対の怪物たちが入り口へ差し掛かった時である。十数の黒い何かが怪物達の上から降りてきたのである。スーッと降りてきた黒い何かは、一瞬にして怪物達を囲むと全員で噛み付いたようだ。


「ゲギャア!」「グギャッ!」「ギァ・・・」「ゲェエア!」


黒い何かは、動くたびに水と肉が混ざったぐちゃぐちゃとした音が聞こえ、暫くしてゴブリンの悲鳴も徐々になくなっていく。食っていると分かったのが、黒い何かが食べ終わりまた天井へと昇っていくのを見届けた後である。


(・・・うわぁ、うわぁ、なんかいたのかよあぶねえ怖え。お化け屋敷なんか比にならない程ぞわぞわってきた・・・何だよあの黒い・・・のは・・・)


黒い何かが戻っていった後も天井を見ていて、気づいてしまった。気づいてしまったことをよくやったと褒める心と、何で気づいたと叱咤する心が生まれた。


思えば、どうして洞窟内を明かりが一つもないのに壁や天井まではっきりと見えたのか。しかもさっきの怪物たちは、肌の色までくっきりと分かったのだ。これはすぐ想像がいった。自分自身そういう目を持ったんだろうと。そうして思ったのが、この広い空洞へ入った時、天井はなぜ真っ暗で見えなかったんだろうと。そしてあの黒い何か、よくよく思い返してみると・・・そう、まるで蜘蛛のような形をしていたような・・・。


そこまで想像した瞬間、カサッとさっき聞こえた音が自分の真上辺りで聞こえた。ビクッと体を反応させて、今想像した事は間違いないと確信する。


(この空洞の天井全部・・・さっきの黒いあれがびっしりいるからか!)


思った瞬間自分の全力でもって、入口へと走っていた。そしてドサッという音とともに、後ろに何かが降ってきた。


「キュウゥ~~~~~~~!!!!!!!!!!!」


(振り返るな!振り返る余裕なんかあるか!振り返ったら死だぞ!だから全力で走れぇ!)



入り口を通り抜けた後、後ろからガサガサと多重に聞こえる音と、ドサドサッと落ちてくる音が聞こえ、泣きたくなる想いで、全力で走った。


(嫌だ~!死にたくない~!神様仏様上様殿様助けて~!)





「キュフゥ・・・キュフゥ・・・キュフゥ・・・」


(はぁ・・・はぁ・・・疲れた・・・助かった・・・難を逃れた・・・)


先程の空洞を逃げた先、またも分かれ道が3つあったが、何も考えずまっすぐ進み上向きの坂道を全力で走った後、またも分かれ道があり、右へ進み、分かれ道を左へと進んで暫くした後、疲労で走れなくなって止まったのだ。実際はさっきの黒い何かは空洞からは出ず、小さな獣を見送っただけではあるが、そんな事は分かる余裕もなかったので知る由もなかった。


(はぁぁぁ・・・助かったのはいいけど・・・この道でいいのかな?)


かなりランダムに進んでしまいすっかり迷子になってしまった。洞窟の入り口から入ったわけではないため、元々迷子なのだが。


(先に進もう)


息を整えて、先に進もうとした時である。


「ギイイイァァァァァァァ!!!!!」


(ひぃえ!!!)


どこかで聞いたよう雄叫び、あの恐竜の叫び声が、進もうした先でこだました。さらに断続的に、振動が響きわたり、何かと争っているように感じる。


(だめだこれ、あんな化物とやりあえる化物がいる道なんて行きたくねぇ・・・)


今も揺れがこちらに伝わってきている程苛烈な戦いが起きているようだ。踵を返してきた道を戻ろうとしたとき、ドガアアアァァァンとひときわ大きな爆裂音と振動を感じ、それ以降、音が一切聞こえなくなった。


(・・・終わった?・・・やばいかも。早く逃げよう)


戦いが終わったのなら、こちらに来る可能性もある。さらにこの道には隠れられるような場所もなく、何かが来ればすぐに見つかってしまう。未だに疲労は取れていないがそんなことは言ってられず走り始めるのであった。





「ティラノスか。こんな浅層に現れるとは、いやだが、他は雑魚ばかりだったんだがな。このまま最終層まで行ってみるか」

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