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魔法使いと魔獣クロ  作者: カンヅキレンナ
第一章 想いの強さ
2/11

1 流れた先にあるモノ

ま、まだ25時だし大丈夫だ問題ない。

まるで綿雲に包まれてるようなふわふわして、それで他の何も感じない感覚に、ふと自分を再認識してみる。するといきなり川の流れのように緩やかに流されていくように感じた。


『こぉら!我儘ばっかいうな!お菓子は買わんからな!』


『買ってよー!あの練って練って練りまくって食べるやつがおいしいのにー!買って買って買ってー!』


『んな文句ばっかいうなら置いてくからな!ええなそれで!』


『いやだいやだいやだー!おいてかないでー!買ってー!』


『文句言うな!』


『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~~~~~~~~~!!!!』


『泣くなあほ!他の人に迷惑やろが!』


(この頃は、小学校上がったぐらいだったかな?お菓子欲しくて暴れてたな・・・けどほんとは、構って欲しかったってのもあるかもな。)


『お姉ちゃんできるか?』


『待って。やれるわこんなん。ほっ!っとああ!!』


『あっはははははミスってんじゃん!ひっくり返すん下手くそやな!』


『うっさいわ!ならお前やってみぃ』


『貸してみぃ・・・ほい!ほ・れ』


『こいつ弟くせに生意気やわ!その成功したんうちのやからな!』


『なんでや!お姉ちゃんはそっちの崩れたやつ食べぇや!』


(この頃はまだお姉ちゃんだったか。お好み焼き作ってて、姉貴は何でかよく失敗してたなあ)


『どうだ?お酒は』


『ビールがまっずい』


『あっははは。それは味で楽しむやつじゃないんだ。のど越しで楽しむんだよ』


『ふーん、でもこれならビールよりサワー系が好きかな・・・義兄さん。なんか楽しそうだね』


『ん?いや、こうやって家族と一緒にお酒を飲むってなかったもんだからさ。一つ、夢がかなったよ』


(義兄さん、ずっと目標にしてた。標準語だって喋れるようにしたし、ずっと兄だと思って過ごしてて。姉貴と結婚するってなった時、本当に兄になるってわかって凄く嬉しかった)


『『おぎゃぁああ!おぎゃああ!ひっひっ・・・おぎゃああああ!』』


『よく頑張った!ほんまよく頑張った!ほら!あんたの子供だよ!いやぁ~私もついにおばあちゃんや!』


『はぁ・・・はぁ、私の赤ちゃん。元気に、生まれてきて、ありがとうな。ほんま、ありがとう・・・!』


『う、生まれた?』


『み・・・みたいっすね義兄さん』


『なななんか変な、しゃしゃしゃべり方よ』


『落ち着こう義兄さん。ほら深呼吸』


『ひっひっふーひっひっふー』


『なんでや、義兄さん妊婦ちゃうやろ』


(姉貴が双子を生んで、皆凄く幸せな顔をしてたのをよく覚えてる。俺だって凄く嬉しかった。家族が増えたんだから)


流されて、流されて、思い浮かべるのは、家族の事ばかり、すごく大事な、自分の家族達・・・けど


(もう会えない。二度とは会えない。死んじゃったから。俺が、死んでしまったから・・・もう二度と・・・あえ、ない)


涙が出そうになるけど、なぜか出ない、渦巻いてる後悔も悲しみも、どこにも抜け出せない。ずっとずっと、心に渦巻いている。悲しくてどうしようもなくて、言葉をうまく作り出せないこの感情に苦しめられる。


(・・・うわ!な・・・なにが!)


いきなり、緩やかに流れていた何かが激流へと変わり押し流されていく。平衡感覚なんてものがなく、自分が今どこにいるかの基準すらなく、ただ凄い勢いで流されているということだけが分かる。


(わあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!)


押し流されて、押し流されて・・・どこに流されてるかの不安も恐怖も感じる暇もない混乱の中、いったい何時まで流されたかわからない。時間の感覚が酷く曖昧になって、数時間か数日か数ヵ月か流されていたようにも思える。


(うぐぐ・・・・・・・?流れが・・・)


突然、流れが急に止まった。自分が一体どうなったのか。目を開けてみる。


【■◆■◆■■■■■■■■■■■◆■■◆■■■■■】


(・・・なに・・・え、な・・・)


闇。最初はそう思った。次は真っ赤な血のようなモノ。そして声のような、いや船の汽笛を多重に響かせたような重低音を感じ、気づく。闇と思ったそれは、自分の何十倍もある体であり、自分の体ぐらいの大きい真っ赤な血のようなそれは、目であると。


気づいた瞬間は恐怖があったが、それはすぐ霧散してしまった。その後に感じたのは、孤独からの、寂しさ、悲しさ。この想いは、得体のしれない目の前の、およそ怪獣とか怪物と例えられそうな生物から感じられる。


【◆■■■■■◆◆■■■■■◆■■■■■■■■■■■◆◆】


同情してしまった。同じ想いを感じてしまった。この感じる声を、そう、それはまるで、泣き声だと。


(すごく寂しいんだね。君も、独りで・・・大丈夫。今は俺がいるよ。だから、悲しまないで)


後はただ感情のまま、身を寄せ、寒さからくる寂しさを無くすように。暖かく、独りじゃないと分からせてあげる為に。糸がぐちゃぐちゃに絡まって切り離せない程、強固に。


【■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■】


二つの想いが重なったまま、また流れ始める。今までのようにただ流れるだけではなく、一つの意思を持って、ある一点へと集まるように。


(寂しくないよ。大丈夫。いなくなったりしない。寂しいのは嫌だもんな。悲しいのは嫌だもんな。大丈夫。大丈夫だから・・・大丈夫)


自分に言い聞かせるように、それでいてこの大きな生物に聞かせるように伝える重なった想いは、流れの中で、どんどん溶け合っていく。


溶け合って、溶け合って、溶け合って。一つになる。そしてこの流れの終わりへと。またふわふわした感覚に包まれたまま、流されていく。








とある洞窟内で、エネルギーの集束が始まった。それは地面から壁から天井から、一つの生物を形作る。赤ちゃんの産声のように、エネルギーは凄まじい光を発しながら集まっていく。暫く経ち、光は徐々に消えていき、最後には、ある一匹の獣がそこに在った。

「・・・今のは、魔力?いや似た何か・・・何が起きた?」

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