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51 エストス対アシッドアーマー隊全部隊

 ネクロマンサー神殿前に横たわるはクラッシュタイタン四型の残骸。

 その横に負傷した四人のタフガイ達が座り込んでいた。


「おいおい、こりゃあまた酷くやられたな」


 その後ろから屈強な影が笑いかけた。


「隊長遅いっすわ。死ぬところだったわ」


 サダマ上等兵が顔を上げた。


「そうか、さっさと死んどけよ」


 グリム上等兵が笑った。


「てめえ、もっぺん言ってみやがれ」

「隊長。すいません。クラッシュタイタン四型を失いました」


 ダッグ副官が頭を下げた。


「心配すんな。予備機を持ってきたぜ」


 ガガーランド隊長が歯を見せた。


「ありがとうございます」

「だがあれは強敵なのである」


 ゲロンド伍長が立ち上がり敬礼した。


「そりゃ楽しみだ。とりあえず、てめえらよくやった」

「「「「OG」」」」

「それで敵の様子は?」

「要塞内に立てこもってます」


 ダッグ副官が顎を振った。

 そうエストスはダッグ副官達のクラッシュタイタン四型を切り刻んだ後、瓦礫の要塞に立てこもった。

 彼女たちの使命は戦うことではない。

 ドッキー艦長の命令通りにここを死守することだ。


「女々しい奴らだ」


 ガガーランド隊長がネクロマンサー神殿を睨んだ。


「ゼンガ。奴らの戦力の調査報告を」

「はっ。敵シルフアルケミーの対人兵装周囲に近接転移の兆候がありました。つまり女が繰り出した防御スクリーンや攻撃ビームはシルフアルケミーから供給されていたと想定されます」


 ゼンガ中尉が強襲揚陸艦ジャンジャーボックスから報告した。


「そりゃ強いはずだぜ。俺達が相手してたのは古代戦闘機ってことかよ」

「ちっきしょう。まんまと騙されたぜ」


 サダマ上等兵とグリム上等兵が額を叩いた。


「やはり戦闘機乗りは戦闘機乗りってことか」


 ダッグ副官が肩をすくめた。


「そう言われれば納得である」

「まあ。それが分かったのもお前らが前線で戦ってくれたおかげだ。もう一度言う。よくやった」

「「「「OG」」」」

「つーことでこっからが本番だぜ。アシッドアーマー隊全員点呼!」

「「「「うおおおおおお」」」」

「野郎共弾込めろ! 剣を抜け! 怒号を上げろ」

「「「「うおおおおおお」」」」


 ガガーランド隊長の言葉に猛者共の怒号が飛ぶ。

 驚くことなかれ、今ここに銀河最強のタフガイ達、総勢二百名からなるアシッドアーマー隊が集結していた。

 たった四人だけでもワルキュリアエッダ隊と互角以上に戦ったのだ。

 その猛者たちが二百人もいるのだ。

 想像しただけでも恐ろしい。見るだけで震える。その野太い声に体が震える。

 彼らの太い手にあるのは凶悪な小型艦の太い機銃だ。

 その大きな背には大きな武器弾薬コンテナ。

 彼らの後方にはクラッシュタイタン四型の隊列があった。

 そしてその全員がエリート魔族ですら逃げ出す程の凶悪な笑顔を浮かべていた。


「目標、敵要塞。撃て」


 ガガーランド隊長が振り向きもせずに叫んだ。

 突然、要塞内が閃光に包まれた。

 先程までのダッグ副官達の戦闘はアシッドアーマー隊本体が到着するまでの時間稼ぎでしかなかった。

 ただの斥候。

 真の戦いは今始まるのだ。


 戦いは数だ。それは格闘戦においても近接射撃戦においても同様。

 シルフアルケミーの防御スクリーンは強固だ。四人のアシッドアーマーでは撃ち破れなかった。

 だが今ここに、それが可能な圧倒的な火力があった。

 しかもアシッドアーマー隊の猛者たちが発射するのは通常兵器ではない。

 小型戦艦から引き抜いた主砲だ。機銃だ。エネルギー大砲だ。

 いくら無敵の古代戦闘機シルフアルケミーの防御スクリーンとはいえ、万能でも無敵でもないのだ。


「撃て撃て撃て撃て」

「「「オールガイ」」」


 タフガイ達の怒声が銃声とアンサンブルする。

 衝撃波と余剰プラズマが要塞内を満たす。

 目標のネクロマンサー要塞の防御スクリーンが狂ったように煮えくり返る。


「敵がエネルギー切れになるまで攻撃し続けろ」


 ガガーランド隊長は笑った。

 どれほど強固な防御スクリーンだとしてもアシッドアーマー隊全力の火力が長時間持続発射されればどうなるか?

 何度も言うがタフガイ達が放つ武器は携帯用の火器ではない。

 それが今、全力で、遠慮なく、一斉に照射され、色めきだった。

 だがしかし、神殿を覆う防御スクリーンは閃光を放つだけだ。


「こりゃあ一体どういうことだ?」

「なんでエネルギー切れにならねー」

「意味分かんねえぜ。ありえねえ」

「なーにこっちには戦艦から下ろしたエネルギーキューブの山が山ほどあるんだ」

「根比べだ。敵はいつか燃料切れになるだろう。撃ち続けろ」

「「「「OG」」」


 アシッドアーマー隊員達は知らない。

 エストス達も同様に大量のエネルギーキューブを保有していることを。

 ドッキー艦長が取り出した補給物資が大量にあることを知らない。

 ネクロマンサー神殿は敵のど真ん中に居ながら、すでに補給済みなのだ。




 ――ネクロマンサー神殿内部。


「ウナ、補給する。防御援護を」


 レガードが眉を顰めた。


「隊長、援護防御をお願いします」

「OB」


 エストスの操る黒いシルフアルケミー。零番機が防御スクリーンを補強した。


「隊長助かります」


 レガードのシルフアルケミーからトラクタービームが放たれ、ネクロマンサー神殿の中に山のようにあるエネルギーキューブを掴むと、自らの腹に収めた。

 続いて空になったウェポンラックをパージした。

 そして新たなウェポンラックを掴むと、翼の下にアタッチした。


「補給完了しました」


 ウナ機の防御スクリーンにレガードの防御スクリーンが参加し、重複させ、防御スクリーンの防御能力が復活した。


「艦長はこの為に私に零番機を託したのですね」


 エストスはブレインリンクで二機のシルフアルケミー、自らの機体とドッキー艦長から託されたシルフアルケミー零番機を操り、防御スクリーンを維持していた。

 それは並大抵のことではなかった。

 エストスはシルフアルケミーの操縦では右に出る者はいない。

 ワルキュリアエッダ隊の隊長なのだ。

 その精神も、技術も、体力も、気合も並大抵の者とは比べ物にならないほど抜きんでているのだ。

 敬愛するドッキー艦長から託された零番機や補給物資によって、その能力は担保されていた。

 驚くことにアシッドアーマー隊の全力照射にも耐えていたのだ。




 ――アシッドアーマー陣営。


「おかしいのであるな」

「あいつらも補給物資を持っているぞ」

「なーに、こっちにだって大量にあるぜ」


 タフガイの一人がエネルギーキューブを見上げた。

 そうなのだ。アシッドアーマー隊が持ち込んだ武器弾薬の備蓄は充分過ぎるほどあった。

 四機のシルフアルケミーとアシッドアーマー隊員二百名。

 シルフアルケミーの張った防御スクリーンなど数分以内に雲散するはずだった。

 だがその防御スクリーンは健在だった。


 なんと戦力は互角。

 戦力は拮抗していた。

 ワルキュリアエッダ隊は、たった四機のシルフアルケミーの重複防御スクリーンを重複させ、アシッドアーマー隊の波状攻撃を耐えていた。

 そして長期戦を選択したガガーランド隊長の目論見は外れ、ワルキュリアエッダ隊の防御スクリーンがエネルギー切れになることはなかった。

 逆にエストスの目論見は外れ、アシッドアーマー隊が弾切れになることはなかった。


 両者とも潤沢な補給物資があった。

 アシッドアーマー隊は格闘戦艦レッドベヘマスから持ち出し、ワルキュリアエッダ隊はドッキー艦長の残した補給物資があった。


「拉致が明かねえ、あれ持ってきてるか?」


 ガガーランド隊長がダッグ副官に白い歯を見せた。


「はっ。お前ら、あれを準備しろ」


 ダッグ副官が背後のアシッドアーマー隊員に顎で指示を出す。


「OG」


 アシッドアーマー隊員達が巨大なコンテナを開封した。

 その中にあったのは流線型の装置の部品だった。

 アシッドアーマー隊員が黙々と組み立てる。

 そして別のタフガイがそれらを要塞に接続した。


「要塞からのエネルギーを破城槌にバイパスしやした」

「おう。遅えぞ」

「すんません」


 そうこれはエネルギー被膜を纏った特殊破城槌だった。

 破城槌に繋がれたパイプの中を荒れ狂う純粋エネルギーが流れ込み、大蛇のように激しくのたうち回る。

 それを屈強な男達が押さえつける。

 アシッドアーマー隊は脳まで筋肉で占められて、不器用のイメージがあるが、実はそうではない。

 なぜ彼らが王国最強の格闘部隊と呼ばれるのか?

 銃や剣や拳を闇雲に振るうだけではないのだ。

 彼らはあらゆる兵器に精通し、運用し、熟練しているのだ。

 防御スクリーンを突き刺す槍は莫大なエネルギーを消費する為、携帯用ジェネレーターでは運用できない。

 どこからかエネルギーを供給する必要があった。

 ここはどこだ? そうここはビッグメンター要塞だ。

 要塞のジェネレーターを使えばいいだけだ。

 だが繋げばエネルギーが流れるような単純な機構ではない。

 エネルギーの使用オーダーは、司令系統はどうなっている?


 軍の命令を無視してここにいる彼らに、そんな許可は下りない。

 だったらどうするか? ただ奪うだけだ。

 そう、彼らは要塞からエネルギーを無断で拝借しているのだ。

 ただの不器用にはそんな芸当はできない。

 一万年にも及ぶ王国宇宙軍のありとあらゆる規格に精通していなければならない。

 アシッドアーマー隊員達は剣を振るうだけではないのだ。


「破城槌準備完了」


 工作部隊のタフガイ達が敬礼する。

 破城槌。それは半携帯型防御スクリーン中和ノーズ。

 戦艦の先端に備えられ、敵の防御スクリーンを貫く近接格闘兵器だ。

 だが中和ノーズだけでは防御スクリーンを突き破れない。

 推進力が必要だ。

 だがしかしその推進器の姿は、どこにも見当たらない。


「よし。突撃するぞ、死にたい奴から前に出ろ」

「「「OG」」」


 タフガイ達が破城槌を持ち上げた。

 そして数十人で群がり小脇に抱え込み、走り出した。

 その背のロケット推進器を咆哮させ突進した。


「押せ押せ、押せ」


 ダッグ副官が叫ぶ。


「「「セヤセヤセヤセヤ」」」


 タフガイ達が一斉に雄叫びを上げた。




 ――ネクロマンサー神殿内。


「なにこれ?」


 シルフアルケミーのコクピットから見ていたウナが首を傾げた。


「あれは生意気に中和ノーズに見えるな」


 レガードも首を傾げた。


「こんなショボいもんで私達の防御スクリーンを突き破るつもり?」

「生意気にウケるんですけど」


 ウナとレガードがバカにする。


「あれはまずい」


 だがエストスは固い表情のままだ。


「隊員、心配し過ぎ、四機のシルフアルケミーの重複防御スクリーンは小型艦の防御スクリーンに匹敵するほどですよ」


 レガードが肩をすくめた。

 だがしかし、レガードとウナはアシッドアーマー隊の底力を知らない。

 ガガーランド隊長と戦ったエストスは嫌な予感を、寒気を、その野太いタフガイ達の怒声に底知れぬ恐怖を覚えた。




 ――アシッドアーマー陣営。


「ありゃりゃ? 全然全く、ちっとも突き破れねえぞ」

「押しが弱ええんだ」

「つか、なんであんな戦闘機の防御スクリーンが貫けねえんだ」

「おら、もっと押せ」

「「OG」」


 タフガイがタフガイの背を押し、その怒濤のマンパワーが破城槌に一点集中する。

 その時、破城槌が根元から折れた。その破片がアシッドアーマー隊員を吹き飛ばした。


「あちゃー折れたね」

「次のを用意しろ」

「OG」


 吹き飛ばされた隊員が何事もなかったかのように敬礼する。

 新しい破城槌が運ばれ、再びシルフアルケミーの防御スクリーンに突きつけられた。




 ――ネクロマンサー神殿内。


「全機、ディフェンダーモードへ移行、棺とオアシスバルーンを死守する」


 突然、エストスが叫んだ。


「「えっ、OB」」


 困惑しつつも承諾するウナとレガード。

 四機のシルフアルケミーがネクロマンサー神殿の中央に棺とオアシスバルーンを囲み、流体フルイド装甲の機体が液体のように融解した。


「少し薄いかも」


 ウナが杞憂する。

 ネクロマンサー神殿は巨大だ。四機のシルフアルケミーの流体フルイド装甲では、神殿全体を覆うには量が足りない。


「だがないよりはましだ」


 エストスの眉間に皺がよる。

 四機のシルフアルケミーは完全に融合完了し、要塞を守る巨大なテントのような形状になっていた。

 その中央にあるオアシスバルーンの中にはソフィアとヘーネス、棺の中には謎の幼女が眠っていた。

 そしてその下にはドッキー艦長が開けた縦穴がある。

 なんとしても死守しなければならない。

 文字通り身を挺して。




 ――アシッドアーマー陣営。


「押せ押せ押せ押せ」

「「セヤセヤセヤセヤ」」


 アシッドアーマー隊の抱える破城槌が僅かに進んだ。

 その怒涛の進撃によりシルフアルケミーの防御スクリーンが歪んだ。


「「セヤセヤセヤセヤ」」

「おら、それでもアシッドアーマー隊か?」


 ダッグ副官が怒鳴る。


「おら、イケエ」


 それは唐突に訪れた。

 破城槌が遂にシルフアルケミーの防御スクリーンを突き破ったのだ。




 ――ネクロマンサー神殿内。


「バカな」

「生意気に」

「防御スクリーンのエリアを縮小して再展開」

「「OB」」


 驚愕に目を見開いたウナとレガードがエストスの指示に従い防御スクリーンを一時解除し、再展開する。




 ――アシッドアーマー陣営。


「突きやぶったぞおおお」

「開花シーケンス」


 破城槌の先端が四つに分離し防御スクリーンをこじ開けた。

 だが巨漢のタフガイ達が通れるようなサイズではない。


「おら。ファンからのプレゼントだぜ」


 ガガーランド隊長が笑った。

 破城槌の先端から何かが転がり出た。


「全員退避、逃げろお」


 タフガイ達が蜘蛛の子を散らすように退避していく。


「盾持ち前に」


 そして盾持ちのタフガイ達が巨大な盾を床に突き刺し簡易防御スクリーンを展開。


「盾持ちはなんとしても堪えろ」

「OG」

「死にたい奴以外は隠れろ。イケイケイケ」


 ダッグ副官の罵声を浴びながら盾持ちの背後に隠れる隊員達。




 ――ネクロマンサー神殿内。


「生意気に融合爆弾だと」


 レガードが叫んだ。


「防御スクリーンが持ちません」


 ウナが首を傾げた。


「耐えろ。構えろ。衝撃に備えろ」


 エストスが叫んだ瞬間、魔幻子崩壊による破壊エネルギーか半球状に爆発した。

 ネクロマンサー神殿が吹っ飛んだ。それを構成する無人戦闘機の残骸が消し飛んだ。

 防御スクリーンの内部で爆発したそれは一瞬だけ防御スクリーンに阻まれるが、次の瞬間、防御スクリーンを貫通。そこから崩壊し、防御スクリーン全体が弾け飛んだ。




 ――アシッドアーマー陣営。


 アシッドアーマー隊の盾持ちの簡易防御スクリーンがその爆発エネルギーを受けて激しく点滅する。


「一歩も、いや一ミリも下がるな、なんとしても耐えろ、堪えろ、貴様達の後ろには仲間達が頭を抱えて隠れているんだぞ」


 ダッグ副官が鼓舞するように叫ぶ。


「「「OG」」」

「声がちいせえええ」


 プラズマと灼熱の衝撃波が、熱風が、輻射熱がガガーランド隊長の短い髪を揺らす。

 融合爆弾という名の破壊の暴君の進軍をタフガイ達数十人の防御スクリーンが止めた。


「ボス、炎の巫女死んでねえっすよね?」

「むむ」

「瓦礫の女王死んでねえっすよね?」

「むむ」


 暫くするとビッグメンター要塞の換気装置が有害ガスを真空宇宙空間に排出した。

 そこに残ったのは溶けた瓦礫の山だけだった。

 怪しいネクロマンサー神殿はもうない。

 アシッドアーマー隊員達がニヤニヤしながら見守る中、ネクロマンサー神殿だった瓦礫の山が崩れた。

 その中から現れたのは先端を天井に向け、寄り添うように合体したシルフアルケミー。

 だがその表面は焼けただれ、かつての美しい姿はなかった。

 ほとんどの流体フルイド装甲が蒸発し、フラクタル状のフレームが剥き出しになっていた。

 融合爆圧の爆風を直に、直近で浴びたのだ。

 いくら古代戦闘機であっても無傷であるはずがない。

 魔幻子崩壊の純粋破壊エネルギーに耐えられる金属は、物質はない。

 エネルギー被膜以外では防御不可能なのだ。




 ――ネクロマンサー神殿残骸内。


「ウナ、レガード、無事か?」


 エストスがシルフアルケミーを再起動させるも各マニューバがレッドスクリーンを返した。


「はい。何とか持ちこたえましたが、装甲値ゼロ。ヘーネス達のバイタル確認、無事です」

「棺は? こっちの観測装置が溶けたようで見えない」

「あれ? 棺が開いてる」

「なんだと? 探せ、まさか爆発に巻き込まれたの?」

「いえ、その」


 ウナが首を傾げた。




 ――アシッドアーマー陣営。


「あんだあれ?」

「誰だあれ?」


 寄り添うシルフアルケミーの間から人影が現れた。


「炎の巫女?」

「いや、サイズがおかしい。あれは子供だぞ」

「なんでこんな所に子供がいるんだよ」

「お前がいるんだ。不思議ではないな」

「俺を子供だと? 俺のほうが背が高いだろうが」

「中身の話だ」


 サダマ上等兵とグリム上等兵が掴みかかった。


「撃て」

「え?」


 ガガーランド隊長が命ずるもタフガイ達は撃とうとしない。


「隊長、さすがの俺も子供は撃てないっす」

「あれは子供じゃないですぜ。魔力反応確認」


 ゼンガ中尉が後方から叫んだ。


「え?」

「そうである。あれは子供ではないのである」

「は?」

「想定内包魔力オーバーロード以上」


 ゼンガ中尉の真剣な声がこだました。


「ってことは?」

「なんだ?」


 サダマ上等兵とグリム上等兵が顔を見合わせた。


「くっくっくっ」


 ガガーランド隊長が笑った。


「よくも余の城を破壊してくれたな?」


 その子供が残骸を見上げた。


「よくも余の可愛い仲間達に手を掛けたな?」


 その子供が寄り添うシルフアルケミーを見つめた。


「誰だテメーは?」


 サダマ上等兵が睨んだ。


「余は大魔王プリラベルなり、死ぬ覚悟はできておるかや?」


 幼女が腰に手を当てて偉そうにそう言った。


「ざけんな。ガキは帰って寝ろ」


 グリム上等兵が手を払った。


「待つのである」


 ゲロンド伍長の顔色が悪い。


「隊長」


 ダッグ副官の額に汗が浮かぶ。


「お前らそいつから離れろおおおお」


 ガガーランド隊長が反物質ソードを抜刀しながら叫んだ。


「極大魔法……紅蓮還セレナーデ」


 ビッグメンター要塞内が炎に包まれた。



お読みいただきありがとうございました。

大変遅くなりました。

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