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42 対巨人用搭乗型人型決戦兵器タイタン四型

「それでもアシッドアーマー隊か!」

「「「OG」」」

「声が小さい、気合を入れろ!!」

「「「OG」」」

「全然聞こえねえぞ」


 ――巨大な瓦礫の下から野太い男達の声が聞こえる。


「てめえ、サボってんじゃねえぞ、しっかり支えろ」

「てめえこそ、こっちに傾けんな、しっかり支えろ」


 グリム上等兵とサダマ上等兵の罵り声が聞こえる。


「さすがにこれは命の危険を感じるのである」


 ゲロンド伍長の泣き言が聞こえる。


「軟弱者め、それでも天下無敵のアシッドアーマー隊か」


 ダッグ副官の大声が響く。


 アシッドアーマー隊は要塞の崩落に巻き込まれ瓦礫の下敷きとなっていた。

 ヘーネスの鑑定でアシッドアーマー隊の位置を知り、ソフィアが無人戦闘機を使ってその辺りのフロアを崩壊させたのだ。

 それは息のぴったり合った攻撃だった。

 世間一般的に考えれば、瓦礫の下敷きになって無事なはずがない。

 だがアシッドアーマー隊の男達は普通ではない――王国最強のタフガイなのだ。


「おい、誰かグラビティキャンセラーを反転させ、重力を逆に出来ないか?」

「可能かもしれませんが今は無理です。全員、手が離せません」


 そう、タフガイ達は信じられないことに落下した巨大な瓦礫をその身一つで支えていた。

 歯を食いしばり、太い足をフロアに沈ませ、太い腕で瓦礫を支えていたのだ。


「とにかく声を出せ、母船に呼びかけろ」

「「「オールガイ」」」

「声が小さい」

「「「オールガイ」」」

「もっとだ、隣のトールハンマー要塞に聞こえるぐらいの声を出せ」

「「「「オールガイ」」」

「全然足りない。女王陛下に届くぐらいの声を出せ」

「「「オーーーールガイ」」」

「でも俺ら女王陛下の敵でっせ?」

「細かいことはどっちでもいい」

「…………えっと、さっきから何してるんすか?」

「――誰だ今の声は? この生きるか死ぬかの時にふざけおって名乗り出ろ」


 ダッグ副官が怒鳴った。


「あー。ゼンガであります」

「ゼンガか? またお前か。船に戻ったらレッドベヘマス内を百周だ」

「OG」

「ん?」

「ゼンガ?」

「「「ゼンガだとおおおおお」」」


 瓦礫の下から大声が響き渡った。


「遅かったなゼンガ。ガハハハッ」


 ガガーランド隊長が笑った。


「ハハハ。すいません遅れて、イヤー大変なことになってますね。ハハハ」

「ゼンガ、てめえ、なに笑ってんだ。早く助けろこの野郎」

「くっ。重いんだ。偉そうに上から眺めてんじゃねーぞ」

「ああ、もうダメだ。支えきれねえ。背が縮む」

「てめえの背は最初から縮んでんだろうが」

「てめえ覚えておけよ」

「あ、てめえ今力抜いただろ。こっちに傾けんな」

「ゼンガ、とっととこれを除けろ」


 ガガーランド隊長が笑った。


「OG。牽引ビーム照射」


 強襲揚陸艦ジンジャーボックスからトラクタービームが放たれ、アシッドアーマー隊を押し潰そうとしていた巨大な瓦礫を掴んで、横に下ろした。


「ああ、死ぬかと思ったぜ」

「なんで生きてんるんだ?」

「あ? テメーが死んどけ」

「もっぺ瓦礫の下敷きになりてえのか?」


 サダマ上等兵とグリム上等兵が殴り合いを始めた。


「それにしてもここだけ不自然に崩壊しているのであるな」


 その横のゲロンド伍長が周囲を見渡しながらそう言った。


「まんまと誘い込まれたか」


 ガガーランド隊長が瓦礫の上に立ち不機嫌そうに呟いた。


「吾輩達が突入したと同時に母船と断絶。そして吾輩達の直上のフロアが崩壊。偶然とは考えられんのである」


 ゲロンド伍長が腕を組んでうなった。


「確かにあまりにタイミングが良すぎるな」

「そりゃこいつのせいだぞ。この貧乏神が」

「それはこっちのセリフだ。この疫病神が」


 グリム上等兵とサダマ上等兵が殴り合いを止めた。


「ボス、今から降下します」


 アシッドアーマー隊に巨大な影が落ちた。

 この四角い影は格闘戦艦レッドベヘマスの艦載機――強襲揚陸艦ジンジャーボックスの影だ。


「助かったゼンガ。それよりあれを持ってきたか?」


 ガガーランド隊長が壊れた装備を投げ捨てた。


「あれと申しますと?」


 ゼンガ中尉が狭い艦橋で首を傾げた。


「あれに決まってんだろ」

「あ、忘れました」

「取って来い」

「冗談ですよ。全員分持ってきてます。投下準備に入りますね」

「ひゃっほおおお」

「ありがてえ」

「最初からあれで来ればよかったんじゃね?」


 グリム上等兵が呟いた。


「てめえはバカか、どうやってあんなデカいのでここまで来るんだよ」


 サダマ上等兵が反論する。


「じゃあ、始めからジンジャーボックスで来ればよかったんじゃね?」


 グリム上等兵がそう言った。


「バカかてめえは、どこにそんな空間があった? それに俺達は選抜突撃班だぞ。身一つで突撃するのが俺らの役目だ。後方支援に回りたいなら俺が推薦するぞ」

「いえ、グリム上等兵は後方支援に向いてませんのでお断りします」


 ゼンガ中尉が手を横に振った。


「てめえ、あんだと?」


 グリム上等兵がジンジャーボックスを睨む。


「ボス。投下準備完了」

「下ろせ」

「OG」


 強襲揚陸艦から巨大なコンテナが投下された。

 コンテナは着地の瞬間に推進器を咆哮させ、床を焦がし、一瞬だけ滞空し、轟音を立てて着地した。


「わ、あっぶね。ゼンガてめえ今俺の上に落としただろ。殺す気か」


 グリム上等兵が推進器を吹かして飛び退いた。


「はて? なんのことやら?」

「てめえ、覚えてろよ」

「コンテナ展開します」


 ゼンガ中尉がグリム上等兵の言葉を無視した。

 コンテナが四方に展開し、その中から巨人が現れた。

 その巨人は巨大な反物質ソードと巨大な防御スクリーン内蔵盾を持っていた。

 それは対巨人用搭乗型人型決戦兵器――クラッシュタイタン四型。

 ゼブラと鮮血の赤でカラーリングされたアシッドアーマー隊専用の巨人。

 複合金属の鎧を纏った巨人が腹部を開いた。


「全員搭乗」


 ダッグ副官が叫んだ。


「「「「OG」」」」


 タフガイ達が巨人に向けて飛び上がった。

 巨人がタフガイ達を掴んで自らの腹部の中に無造作に放り込んだ。


「エンゲージ。パイロットリンク確立。オールマニューバチェックスタート」

「ボス、無人戦闘機多数接近」

「こっちはまだ起動中だ。ゼンガ塵一つ残さず破壊しろ」

「OG」


 強襲揚陸艦ジンジャーボックスから巨大な浮遊砲台が飛び出し、迫り来る無人戦闘機に向かって無秩序に無造作に攻撃ビームを一斉掃射した。

 純粋攻撃エネルギーが要塞内を迸り、その光の奔流に飲み込まれた無人戦闘機が影も残さず消滅した。


「殲滅完了、続いて拠点ベースの構築を開始します。瓦礫がいい感じなんで、廃墟を背景にした酒場でも用意しましょうか」


 ゼンガ中尉の陽気な声がした。


「ああ、帰りに一杯やれるようにな。ゼンガ、ここの指揮は任せた。俺達は先に行く。野郎共、瓦礫の女王を踏み潰しに行くぞ」

「「「「OG」」」」


 金属のタフガイが要塞内部を進み始めた。巨大な足で要塞を凹ませながら、巨大な推進器を咆哮させ、要塞内を焦がしながら焼きながら飛ぶ。

 対巨人用搭乗型人型決戦兵器クラッシュタイタン四型。

 これこそがアシッドアーマー隊の真骨頂。

 最強のタフガイ達が最強の兵器に乗り込んだらどうなるか?

 言わずもがな、ただただ、最強となるだけだ。

 巨人達が要塞内へと無敵の行軍を開始した。




 ――――ビッグメンター陥没区間下層。ネクロマンサー神殿。


「タイタン三型? いえ、これは四型、対巨人用搭乗型人型決戦兵器?」


 床に手を突いたヘーネスが美しい眉をしかめた。


「クラッシュタイタン四型アシッドアーマー隊仕様を確認。間もなくここに来ます」


 ヘーネスが立ち上がった。


「大魔王様は隠れてて、年増の魅力見せてやんよ、何がクラッシュタイタン四型よ。そんな機械に頼るなんて卑怯よ。正々堂々と勝負しなさいよ。男のくせに卑怯よ。何が俺達王国最強のタフガイだぜえ……よ。タフガイだったらパンツ一枚で挑んできなさいよ。いやそれはセクハラ的な意味じゃないのよ。筋肉が拝みたいからって訳じゃいのよ。例えよ例え。しかもそんなガチムチの筋肉バカの身体なんて見たくないんだからね」

「物に頼っているのはお主のほうじゃろ」


 ソフィアの息継ぎなしのセリフに大魔王プリラベルが眉を顰めた。


「え? なに言っちゃんってんの? そんなの当り前じゃないの、私は、か弱い乙女なのよ。乙女を守る騎士様が必要なのよ。私を守ってくれるイケメンどこ? そんなのどこにも居なかった。ということで、自分で用意しますか。来たれ我がガーディアン」


 ソフィアが優雅に手を伸ばす。

 破損し、半壊したゾンビのような人型無人戦闘機クラッシュタイタン三型が現れた。

 無人戦闘機が集結して破損個所を埋める。

 さらに巨大な剣となり、巨大な盾となる。

 無人小型戦艦の主砲がその肩に乗り、誘導ミサイルポッドが開いているスペースに無理矢理合体する。

 接合ジョイントもアタッチメントも要さない。ただ、無造作に合体する。

 ジェネレーターが唸りを上げ、巨大な刀身の反物質が対消滅反応を開始した。

 巨大な盾の防御スクリーンが煌めき、漂う塵が瞬時に燃え上がった。

 グラビティキャンセラーがその自重を相殺する。

 この機体に名を付けるとすれば、クラッシュタイタン三型ネクロマンサー仕様。

 瓦礫の女王ソフィアにしか出来ない非現実な異様な兵器。

 重量も、バランスも、ジェネレーター容量も無視した非現実な存在。

 設計思想を無視した強固なクラッシュタイタン三型のゾンビ機。

 しかも恐ろしいことにそれは一機だけではない。

 五十体ものクラッシュタイタン三型ネクロマンサー仕様がそこに降臨した。

 これらは全てドッキー艦長が置いて行った瓦礫の山から構築されたものだ。


「とにかく大魔王ちゃんは奥の神殿で隠れてて、あそこは安全だから、何があっても出てきたらダメだからね。お昼寝してて、私達人気デュオがやっつけるからね」


 ソフィアが指をさした先には無人戦闘機が癒着化し固まったネクロマンサー神殿奥の院があった。


「アイアンゴーレムかえ? 魔物のタイタンに似ておる。人の作りしタイタンかえ?」


 大魔王プリラベルが目を輝かせた。


「ええ、巨大な魔物タイタンに対抗するために生み出された決戦兵器です。大魔王様は隠れていてください」


 ヘーネスが堅賢者の杖を構える。

 真っ赤な炎が舞い上がり火の粉のような魔幻子が大魔王プリラベルの前髪を揺らす。


「レジェンダリー級武装? 魔法の杖? こりゃ余の出番はなさそうじゃな、大人しく、昼寝でもしてくるかの」


 大魔王プリラベルが欠伸をしながら奥のネクロマンサー神殿に入っていった。




 ――――ネクロマンサー神殿正面。


「ボス、反物質反応です、その数五十、反応規模からクラッシュタイタン級と想定」


 ゼンガ中尉の声がアシッドアーマー隊のタフガイ達の表情を緩めた。


「こっちの倍を用意するったぁ気が利いているねえ」

「生意気に反物質剣なんて装備してさ」

「ボッコボコにやっつけてやんよ」

「おかしいのである。このビッグメンター要塞にクラッシュタイタン三型は配備されていないのである」


 ゲロンド伍長が疑問を口にした。


「そんなんどっかに隠してたんだろ?」

「どこにであるか? ここは演算器しかない演算要塞であるぞ?」

「難しいことはどうでもいい、とにかく全部ぶっ壊せばいいんだろ?」

「その通りだ。全機突撃」

「「「OG」」」


 アシッドアーマー隊のクラッシュタイタンが縦一列になって突き進む。

 当然の如く、先頭を突き進むのはガガーランドの操る深紅のゼブラ機だ。

 アシッドアーマー隊は王立宇宙軍の大半を占める軟弱な貴族達とはまるで違う。

 隊長自らが突き進む。

 部下の見本、お手本? 士気を高める?

 ――どれも違う。

 こんなにおもしろいことを見逃すわけがねえ。

 その言葉が全てだった。

 隊長自らが突き進むのがアシッドアーマー隊であった。


 ガガーランド機が反物質ソードを振り回し、瓦礫を対消滅で切り裂く、攻撃ビームで粉砕する。

 これこそがタフガイ達の行軍。

 鋼鉄の弾丸。鋼鉄の奔流。

 圧倒的な戦力で突き進むその姿は悪鬼。

 本物のタイタンすら霞むだろうその強く美しく派手な戦闘演武。

 彼らの歩みを止めることなど不可能なのだ。


「あれは何だ?」

「気味悪いのであるな」


 ガガーランド隊長のコクピットモニタに異様な建造物が映し出された。

 機体の簡易AIがデータベース該当なし、王国標準無人戦闘機の部品と酷似と報告する。

 それは無人戦闘機が集まって出来た異物――ネクロマンサー神殿だった。


「魔王の城か」

「いつの間に?」

「どうやって要塞内にこんなものを?」

「ええい、野郎共。突撃」

「「「OG」」」

「ボス、反物質反応多数」

「出迎えか? 遅ーぞ」


 反物質ソードを構えたゾンビ機がわらわらと現れた。


「なんだよあれ? クラッシュタイタンにしては重そうだぞ?」

「ゾンビ機であるか?」

「なんだろうと関係ねえ」

「ひるむな。速度を落とすな」

「「「OG」」」


 アシッドアーマー隊のクラッシュタイタン四型とゾンビ化したクラッシュタイタン三型が激突した。

 互いの反物質ソードが激突し、周囲の空気を対消滅させ、嵐を呼んだ。

 上昇気流と下降気流が竜巻を呼ぶ。

 イオン化した空気がプラズマ化し、激しい稲妻をばら撒いた。


 グリム機が巨大な反物質ソードでゾンビ機を薙ぎ払う。

 愚鈍そうなゾンビ機が、慣性を無視したように素早くかわす。


「おりょりょ? こいつ無人戦闘機のくせに動きがいいぞ」

「てめえが遅せーだけだろ、助けてやんよ」


 サダマ機がグリム機を救援するように横からゾンビ機を斬りつける。

 だがゾンビ機が巨大な盾を構えサダマ機の攻撃を防いだ。

 グリム機がその直後、ゾンビ機に斬りかかる。

 だがそこにゾンビ機の姿はない。

 高速で回避し、一回転しながらえ反物質ソードを振るった。

 グリム機とサダマ機が飛び退いた。


「やるじゃねえか、そこのゾンビ機、こいつと交代してくれ」

「あんだと?」

「何を遊んであるか」


 ゲロンド機が高速で斬りかかる。

 ゾンビが不自然な体制で避け、バランスを崩し、転倒した。

 フロアを転がりながら破片をばら撒いた。


「脆いのである」

「邪魔するな。あれは俺の獲物だ」


 グリム機の巨大な砲身が咆哮し、ゾンビ機に無数の穴が穿った。


「やったか?」


 だがゾンビ機が何事も無いように立ち上がった。


「忘れてたぜ、こいつらゾンビだってこと」

「忘れてんのはてめえだけだ」

「あんだと?」


 サダマ機が生き返ったゾンビ機の右腕を切り落とした。

 グリム機が一閃。

 ゾンビ機の首が飛んだ。

 よろよろとふらつくゾンビ機の首なし胴体。


「今だ。集中砲火。もたもたしてると復活すっぞ」


 ゲロンド機も攻撃ビームを放った。

 その半秒後、木っ端みじんに吹っ飛ぶゾンビ機。


「一機倒すのに三人がかりかよ」


 その向こうから別のゾンビ機が主砲を発射した。


「わ、馬鹿」

「てめえ邪魔だ」


 グリム機とサダム機が二手に分かれて回避する。

 その中央を攻撃ビームの光のシリンダーが迸る。


「おっと、要塞内で物騒なもん振り回してんじゃねえ」


 グリム機がゾンビ機を袈裟斬りで肩から股まで分断する。

 だがゾンビ機は倒れない。

 左右に分断されたゾンビ機の機体が融合し、再びグリム機に襲い掛かる。


「おっと、忘れ物しちゃった」


 グリム上等兵がそう笑ったその瞬間、ゾンビ機がはじけ飛んだ。

 グリム上等兵は分断した隙にゾンビ機の身体の間にディザスターマインを置き投げていたのだ。

 四方八方に飛び散るゾンビ機の破片。

 だが吹き飛んだはずの破片が再結合しようと動き出す。

 サダマ機とゲロンド機が同時に攻撃ビームを放ち、破片を焼き尽くした。

 彼らはチームなのだ。王国最強の格闘部隊なのだ。

 それは人型兵器に乗ったとしても変わることはない。


 ゾンビ機達がアシッドアーマー隊を警戒したのか、後退し防御陣形を形成した。

 防御スクリーンの盾をフロアに突き刺し、防御スクリーンを重複させて待ち伏せする。


「あれを突破するのは時間がかかりそうであるな」

「ここは俺に任せて先に行ってくだせえ」


 グリム機が反物質ソードを構え突っ込んだ。


「テメーなんかに任せられっかよ」


 サダマ機がその後を追う。


「邪魔だ。退けっ、ここは俺がなんとかする」

「テメーこそ退きやがれ、ここは俺がなんとかする」


 隠れていたゾンビ機が二機の左右から奇襲攻撃をかける。

 だがグリム機とサダマ機が同時に右と左に反物質ソードを振るう。

 両断され崩れ落ちるゾンビ機。

 お互いが反対側のゾンビ機に攻撃ビームをクロスして放ち、消滅するゾンビ機。


「てめえ邪魔すんじゃねえ」

「俺の獲物だぞ」


 いがみ合っている二人だが自分の側の敵よりも仲間側のゾンビ機を撃ったのだ。


「何勝手に俺の獲物狙ってんだよ」

「てめえこそ、俺を助けたつもりか?」


 息の合ったコンビ、グリム機とサダム機が背を合わせ、迫り来るゾンビ機に攻撃を開始した。


「ダッグ、ここは任せた」

「OG。野郎共、ボスを先に行かせるために派手に暴れろ」

「「「OG」」」


 アシッドアーマー隊のクラッシュタイタン四型が突撃を開始した。




 ――ビッグメンター要塞。陥没区画下層。ネクロマンサー要塞内部。


「来る」

「ああ」


 ヘーネスとソフィアが頷き合った。

 その瞬間、無人戦闘機で構築されて強固な神殿の外壁が吹き飛んだ。

 そこから現れたのはクラッシュタイタン四型。

 その頭には巨大な二本の角があった。

 隊長専用機――レッドタイタン。

 それは地獄から現れたかのような赤いゼブラ模様を纏った巨人。


「ソフィア、ガガーランド隊長機です」


 ヘーネスが鑑定結果をソフィアに伝える。

 ガガーランド機は平伏しもせず、畏怖堂々と我が物顔で神殿内に侵入した。


「降伏しろ」


 ガガーランド機が反物質ソードを前に突き出した。


「それはこっちの台詞なんですけど? あんたこの状況分かってる? 周りの武器が見えないの? 罠に嵌まったのはあんたよ」


 その瞬間、無人戦闘機の一群がガガーランド機を強襲する。

 ガガーランド機は面倒くさそうに反物質ソードを一閃。

 音速に乗った反物質の対消滅波が無人戦闘機を消し飛ばした。


「一撃?」


 二人の前の防御スクリーンを通り越した衝撃波がソフィアの髪を揺らす。


「じゃあこれはどう?」


 その言葉と共に床から無人戦闘機のアームが無数に出現し、ガガーランド機を拘束した。

 同時に壁から天井から数百器の攻撃ビームの砲塔が出現した。

 回避不能の直撃予測ラインがガガーランド隊長の兜を赤く染める。


「くっ」


 いくら無敵のタイタンといっても数百の攻撃ビームの直撃を食らっては無事では済まない。


「ふふっ。さあそこから降りなさい」

「ちっ。分かった、分かった」


 クラッシュタイタン四型の胸のコクピットハッチが開き、ハードアーマーに身を包んだガガーランド隊長が現れた。

 武骨なハードアーマーが顔まで覆いその表情はうかがえない。


「お前が瓦礫の女王か」


 重甲冑が舌打ちした。


「何そのダサい二つ名」


 無人戦闘機の瓦礫をドレスのように纏ったソフィアが眉を顰めた。


「てめえにぴったりじゃねえか」


 ガガーランド隊長が神殿内を見渡した。


「直ちにここから退却しなさい」

「裏切者が偉そうに言うじゃねーか?」

「裏切者は貴方達ではなくて?」

「ちげーねえ。だが残念なことに俺は隊長で艦長でな、軍規に従うのが軍人だ」

「そう? 女王陛下に牙を向いたこと、地獄で後悔しなさい」


 ソフィアが優雅に手を挙げた。

 無人戦闘機の攻撃ビームの砲塔がガガーランド隊長に照準を合わせた。


「おっと、慌てるな。これを見ろ」


 ガガーランド隊長が何かを取り出した。

 それは四角い何かの装置だ。


「あれはEMP?」


 ヘーネスが鑑定で一瞬のうちに掌握する。


「へ? ゾンビ機の壊れている電子機器にEMPなんてまるで意味がないのよね」


 ソフィアが侮蔑の視線を送る。


「よく見ろ」

「ソフィア、あれはゾンビ用特殊EMPよ」


 ヘーネスが鑑定結果を告げる。


「はあああああ! ゾンビ用特殊EMPですって? 祝福されたナノ無人戦闘機の自己犠牲で、ネクロマンサーのゾンビ命令を肩代わりする王立戦略研究所で開発中の試作品が何故ここに?」


 ソフィアが説明長のセリフでたじろいだ。


「……やけに詳しいけどソフィア――あれ知っているの?」


 ヘーネスが秘匿回線でソフィアに問いかける。


「……ええまあ。だって作ったの私」

「はあ? バカですか。なんで自分の特技を相殺するようなもん作るのよ」

「え? だって研究担当者がイケメンだったからつい」

「ついじゃないわよ。製作者ならあれの弱点ぐらい知ってるでしょ?」

「残念ながら弱点はないのよねえ」

「……とにかく得意のお喋りで、時間を稼いで、エストス隊長達が来るまで」

「分かった、やってみるね、キャハ」


 ソフィアがガガーランド隊長に向き直る。


「あんたそれでも男? 卑怯者。デカい乗り物に乗りたがる男は小心者って決まってんのよ。私調べだけど。だからそんなんに乗ってないないで、正々堂々と生身で勝負しなさいよ。それでも王国最強なの? はっ? 聞いて呆れるわ、か弱い乙女にそんな巨人で無理矢理襲うなんて犯罪ギリギリというか犯罪よ、私のグラマラスボディを見るだけで犯罪よ。セクハラよ。触らない痴漢だわ」


 ソフィアが外部スピーカーでガガーランドを挑発する。


「卑怯も立派な作戦のうちだが?」


 ガガーランドが肩をすくめた。


「そう、いいこと聞いた」


 突然、壁が、天井が高速で突き出し、ガガーランド機を押し潰した。


「卑怯ってこういうことかしら?」


 両手を広げ、壁を、崩落する天井を巨大な頭で必死に支えるガガーランド機。


「くっ卑怯な」

「卑怯も作戦のうちなんでしょ?」


 三機のゾンビ機が反物質ソードを構え、ガガーランド機に突進する。


「……交渉決裂かな? 俺はこう見えても平和主義者だったんだが?」


 ガガーランド隊長がゾンビ用特殊EMPを投げ、クラッシュタイタン四型に乗り込んだ。

 ゾンビ用特殊EMPから聖なる光が迸り、自爆したえナノ無人機の自己犠牲によりゾンビ化していた壁が、天井が、床が、無人戦闘機が肩代わりされ、落下し、ただの瓦礫に戻った。

 ガガーランド機へ反物質ソードを突き刺そうとしていたゾンビ機も崩れ落ちた。


「一足遅かったな、さっさと降伏し……なに?」


 ガガーランド機にゾンビ機の反物質ソードが突き刺さった。


「ぐはっ。な、なぜだ? 浄化したはずだ。なぜ? 動ける?」


 そのゾンビ機は損傷が少ない。

 それどころか、どこも破損してない。


「まさか? こいつはゾンビ機じゃない……のか?」


 ガガーランド隊長の苦しそうな声が響いた。


「ご名答。これは無傷のクラッシュタイタン三型。つまり最初からゾンビ化していない。ゾンビ用特殊EMPは効かないのよね」


 ソフィアが腕を組んで勝ち誇った。

 このクラッシュタイタン三型は、無人戦闘機の破片を身に纏いゾンビ機に偽装していたのだ。


「くそがあああぁ。卑怯だぞおおお」


 その剣はガガーランド機のコクピットを貫通していた。


「卑怯? そう? 王国最強の格闘部隊の隊長も大したことなかったわね。オーホホホ」

「……そうかい?」


 高笑いするソフィアの背後から野太い男の声がした。


「え?」


 ソフィアの細い胴体から鮮血に濡れた剣先が突き出していた。

 その剣先からは真っ赤な血がしたたり落ちる。


「なっ、グフッ」


 苦悶の表情で吐血するソフィア。


 突如現れたガガーランド隊長がソフィアの背後から剣を突き刺したのだった。


「ソフィアーーーーー」

お読みいただきありがとうございました。

誤字脱字修正いたしました。

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