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21 対大型魔族用人型無人兵器クラッシュタイタン三型

 大型魔族用人型無人兵器クラッシュタイタン三型。

 それは大型魔族に対抗する為に製造された人類側の大型人型兵器。

 武骨な鎧騎士、ハードモーターナイト。

 複合金属装甲に、戦艦の装甲を利用した巨大シールド。

 全ての間接が密閉シーリングされ、あらゆる部位に砲身が埋め込まれ、背には巨大な推進器を背負っているまさに巨人の中の巨人。

 兵器が人型をしていることを笑う者がいる。

 だがこの時代、兵器は人型である必要があった。

 巨大な魔族タイタンの存在だ。

 タイタンと戦う為にはそれを殴りつける腕がいる。

 それを蹴り上げる足がいる。

 そしてそれに頭突きを喰らわせる頭がいるのだ。

 敵が人型である以上、格闘戦は避けられない。

 非人型の戦闘機タイプで充分だという者もいる。

 だがよく考えればそれでは敗北するのだ。

 タイタンの巨大な腕で掴まれたらどうするのか?

 タイタンの巨大な足で踏まれたらどうするのか?

 そう。それを引き剥がす為には、こちらにも腕がいるのだ。

 対魔族近接格闘兵器。

 それがこの対大型魔族用人型無人兵器クラッシュタイタン三型である。

 そして反重力があるこの時代に翼は必要ない。

 さらに関節の制御にモーターや人工筋肉やコンポジット板バネは必要ない。

 反重力で飛び、反重力で操作すればいいだけだ。

 四肢の先端や関節に有線で繋がれた反重力デバイスがインバースキネマティクスで可動する。

 それは間接構造を持った人型である魔族よりも強力なパワーを発揮する。

 関節の強度に、重さに左右されないのだ。

 しかもその装甲表面に埋め込まれたアンチマジックキャンセラーを搭載し、魔法攻撃を拡散する。

 以上のことから、この対大型魔族用人型無人兵器クラッシュタイタン三型は魔族の天敵といえる。

 だが今回は相手が悪かった。


「クラッシュタイタン三型か……いいねえ。あれ欲しかったんだ」


 ドッキー艦長がボトムオーガの顎に手をやった。


「欲しい? あれは安いおもちゃじゃないんですのよ艦長」


 サララが眉をしかめた。

 巨大なクラッシュタイタン三型がその巨大な両手を広げボトムオーガを拘束しようと迫る。

 だがしかしボトムオーガはクラッシュタイタン三型の腹部アーマーを蹴り上げた。

 運動エネルギーの格差を、質量差を無視して吹っ飛ぶクラッシュタイタン三型。

 小さなボトムオーガのどこにそんなパワーがあるというのだろうか?

 吹き飛んだクラッシュタイタン三型は自らの反重力で停止し、怒り狂ったようにボトムオーガに右手を突き出し、砲身を向けた。

 巨大な砲身から放たれたのはエネルギー質量弾。

 質量のある弾丸をエネルギー皮膜で覆い高速で発射する強力な機銃。


「王立工房ダッカン製のエネルギー機銃大砲。あれは小型艦の防御スクリーンを貫通する威力を有しているのですのよ」


 サララが得意げに解説する。

 だがしかし小型艦の防御スクリーンを貫通するほどの攻撃はドッキー艦長扮するボトムオーガの前で停止した。

 ドッキー艦長の防御スクリーンをこんな豆鉄砲で破ることなど不可能。

 クラッシュタイタン三型はそれに動じず背中の巨大な剣を抜刀した。

 その瞬間、白い蒸気のような煙が舞い上がった。


「王立工房ダッカン製の反物質バスターソード。仮想存在の反物質を演算でコーティングした刃に触れたら対消滅に巻き込まれてしまいますのよ」


 サララの声が緊張に包まれた。

 反物質は周囲の塵と対消滅し、光子をまき散らす。それが白い蒸気に見えるのだ。


「こっちにもあるさ」


 そう言いながらボトムオーガはどこからともなく、一振りの剣を取り出した。


「反物質ソード……ダゴンイーター改改」


 ボトムオーガは白く霞んだ剣を構え牙を出して笑った。


「ダゴンイーター改改ですって? そんなものまでアイテムボックスに収納されているのですのよ? 一体艦長のアイテムボックスの中身はどうなっているのですよ? 反物質の剣ですよの?」


 サララが驚愕する。


「それだけは言えない」

「……艦長。遊んでいる場合ではありませんよ。そんな小物相手に何してるんですか?」


 リーマイ副官の呆れた、少しだけ怒気をはらんだ声がボトムオーガの周囲に響いた。


「はいはい……残念。収納」


 ドッキー艦長は収納した。

 自身の反物質ソード。ダゴンイーター改改と敵諸共。

 巨大な人型汎用兵器クラッシュタイタン三型はその圧倒的な戦力を見せつけることなくドッキー艦長のアイテムボックスに収納された。

 自慢の反物質ソードを振るうことなく、あっさりと収納された。

 その圧倒的な戦力を誰にも見せつけることなくこの世から消えた。


「あのー艦長? 最初から無人戦闘機を収納すればよかったのですのよ?」

「いや、それはほらロマンっていうか? 礼儀というか?」

「ロマンとかくだらないこと言ってないで、さっさと行く。遊んでいる暇はありませんよ」


 リーマイ副官は怒っていた。

 このくだらない反乱軍の仕掛けた戦いに心の底から怒りを感じていた。

 沢山の友人たちが反乱軍により命を失っていた。

 そして反乱軍にはまだ大勢の仲間がいるのだ。

 彼女のその内心は複雑だった。

 かつての同級生が敵となっているのだ。

 ふざけている場合ではないのだ。


「え? 分かったよ。もう全部収納」


 突如。ボトムオーガの周辺の無人戦闘機群が消失した。

 破壊されたのでも逃げたのではワームホールに突入した訳でもなく忽然と姿を消したのだ。

 ドッキー艦長のアイテムボックスに収納されたのだ。

 ドッキー艦長のアイテムボックスには魂を持つものは収納できない。

 だが人が乗っていない無人戦闘機ならばどうだ?

 魂のない無人戦闘機ならば、ドッキー艦長のアイテムボックスに収納可能であった。

 ボトムオーガは襲い来る無人攻撃機達を次々とアイテムボックスに収納した。

 銀色が煌めく人工物に覆われていた周囲が漆黒に戻った。

 辺りが静寂に包まれた。

 音もない宇宙で静寂という表現はおかしいのだが、それはまさしく静寂だった。

 しかも異常な静寂だった。

 その異様な雰囲気に飲まれたのか感知したのか反乱軍の砲撃も停止した。

 数万にも及ぶ無人戦闘機が消えたのだ。

 反乱軍は今ここで何が起きたのか全く理解できなかっただろう。

 後方にいる無人戦闘機群のAI達も状況が把握できていないだろう。

 忽然と、数千の数万の、無人戦闘機が消えたのだ。


 トールハンマー要塞から出撃した無人戦闘機達がドッキー艦長扮するボトムオーガへ迫る。

 だが消失した。

 忽然と数万の無人戦闘機が消えた。

 その次も、そのさらに次も数万の無人戦闘機が消失した。


「あちゃーですのよ。相性が最悪ですのよ。それにしても艦長のアイテムボックスは底なしですのかよ」


 サララの感嘆と呆れ声がドッキー艦長の耳元で響いた。


「それだけは言えない」


 そうドッキー艦長のアイテムボックスの容量の底は無限のごとく全く見えない。

 今、数十万の無人戦闘機を収納したのだ。

 戦艦や、要塞級の主砲を収納できるほどだ。

 その容量はまさしく底なしだろう。

 だがドッキー艦長は頑なにアイテムボックスの情報を秘匿する。

 これだけ無茶苦茶なことをしておきながら、アイテムボックスのことを聞かれると頑なに口を閉ざすのだ。

 一体誰が、数十万の無人戦闘機が、たった一人のアイテムボックスに収納されるなどと理解できよう。

 アイテムボックスの存在自体が秘匿されているこの時代、まさに奇跡。異常事態だった。

 だがトールハンマー要塞から飛び立った無人戦闘機の数は数百万だ。

 ドッキー艦長がアイテムボックスに収納したのは、これでもまだほんのごく一部に過ぎない。

 いくら底が見えない無限容量のドッキー艦長のアイテムボックスにも限界というものはある。

 ボトムオーガは無人戦闘機の収納を止めた。


「きりがない。自分がして欲しくないことは他人にしないことだよ。まだ少し残ってたかな」


 そんな説教じみたことを言いながらボトムオーガが攻撃ビームを放った。

 いや、先程取り込んだトールハンマーの主砲の攻撃ビームを取り出しただけだ。

 取り出した向きは逆だ。

 その光の円柱に入った無人戦闘機は無残にも消滅した。

 無人戦闘機の脆弱な防御スクリーンではトールハンマーの攻撃ビームには耐えられない。

 数十万の無人戦闘機が一瞬のうちに消失した。

 アイテムボックス収容され忽然と消えたよりもその原因は理解できる。

 主砲によって蒸発したのだ。

 だがこの主砲はどこから放たれたのだろうか?

 その射線を辿ってもボトムオーガに辿り着くだけだ。

 無人戦闘機達は何が起こっているのか理解する前に消滅した。

 死の射線から必死に回避しようとする無人戦闘機群。

 だが優しいドッキー艦長はそれを許さない。

 ボトムオーガが右手を薙ぎ払った。

 死の射線が横一閃。トールハンマー要塞の攻撃ビームが扇状に宙を分断した。

 数万の無人戦闘機が、攻撃ビームに触れて蒸発、破壊、消滅した。

 そしてボトムオーガの右手が縦一閃すると、数十万の無人戦闘機群が一瞬で消滅した。

 ボトムオーガが踊ると同時に死の閃光が死の射線も踊る。

 数百万の無人戦闘機群が一瞬で消滅した。

 だがその背後にいた人が乗っている反乱軍の戦艦は奇跡的にその直撃を免れた。

 いやそれもそのはずドッキー艦長は反乱軍の戦艦に当たらないように放ったのだ。

 ドッキー艦長はリーマイ副官との約束を破らない。

 後が怖いからだ。いや、兵の命を大事にしているからだ。

 それに自分の労働時間を気にしているからだ。

 その理由が不順であれ、どうであれ、反乱軍側の死者は幸いにもゼロだった。

 ドッキー艦長の視界にはサララの演算した未来予測軌道が表示されていた。

 事前にサララが誰も死なない未来を予測したのだ。

 リーマイ副官の宙域鑑定、サララの未来予測演算、ドッキー艦長のアイテムボックスの前には反乱軍も成す術がない。


「目標消滅。無人戦闘機……想定撃破」


 サララの報告だけが宙域に漂った。


「お疲れ様でした艦長。死者なし。大変よくできました。念のため宙域鑑定……待ってください。消失していない戦闘機もいます」

「つまり僕のアイテムボックスに収用されなかったということは……」

「魂があるのですのよ」


 サララが光点を睨んだ。


「あれには人が乗っていますね。宙域鑑定」


 リーマイ副官の声に呼応するかのように十二の光点が煌めいた。

 そしてリーマイ副官が鑑定したデータがドッキー艦長の視界に映し出された。


「あれは王国最強戦闘機部隊……ワルキュリアエッダ隊」


 リーマイ副官が報告する。

 ワルキュリアエッダ隊――王立宇宙軍の中から選抜されたエリート部隊。

 そのパイロットは機体との相性から全て女性に限定される。

 まさに戦闘乙女――ワルキュリアの名にふさわしい。


「おお、あの噂の誇り高い戦闘乙女部隊」

「彼女達が狩る戦闘機は古代のオーバーテクノロジーの塊……発掘戦闘機シルフアルケミー」

「現存する発掘戦闘機シルフアルケミーは三十四機。その全てがワルキュリアエッダ隊に与えられている。まさに生きるレジェンド、攻撃美術的工芸品ですのよ」

「強力な古代工房製の双発の巨大推進器は宇宙空間であろうと、大気圏内であろうと水の中だろうとお構いなしですのよ」

「その装甲は流体フルイド装甲……メンテ要らずの最強硬度と粘度を誇る変幻自在な装甲」

「しかもそのウェポンラックの攻撃力は小型巡洋艦クラス。融合弾頭を装備する攻撃特化機体も存在するというまさに戦闘機の女王達ですのよ」


 サララが興奮するのも無理はない。

 ワルキュリアエッダ隊は銀河中で最も有名な部隊なのだ。

 作られたビジョンは数万を超える。

 その人気の秘密は彼女達の強さにあった。

 そしてその美しさにあった。

 機械であるはずの発掘戦闘機シルフアルケミーは主人を選ぶとされる。

 AIも搭載されていない古代戦闘機が乗り手を選ぶのだ。

 シルフアルケミーが選ぶパイロットは遺伝子操作なしの生粋の美女だけだ。


「ワルキュリアエッダ隊、十二機編隊が攻撃陣形で光速接近中ですのよ。間もなくエンゲージですのよ、傷一つ付けることを禁止するのですのよ」

「ええ? どうやって戦うんだよ。向こうは殺す気で来るぞ」

「そんなの勇者パワーでなんとかするのですのよ」

「なんだよそのパワーって、簡単に言うなよ」

「攻撃射線演算感知。敵にロックオンされました」

「艦長。避けて」


 リーマイ副官が叫んだ。


「いや、艦長が避ける必要なんてないのですのよ」


 サララが冷静な声でそう言った。


「まあ、艦長ですしね」


 リーマイ副官も頷いた。


「それにしてもシルフアルケミーなんて感激ですのよ」

「古代王朝の遺産は最強ですのよ」

「発掘戦闘機……その呼称だけで鳥肌もんですのよ」

「傷つけたら需要文化財保護違反ですのよ」


 サララの空間体の腕が鱗のように逆立った。


「これは困った。人が乗っていると迂闊に攻撃できないじゃないか」


 ドッキー艦長扮するボトムオーガが頭を抱えた。


 伝説のエリート部隊ワルキュリアエッダ隊とボトムオーガの戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。


お読みいただきありがとうございました。

大まかなストーリーに変更ありません。

長いので分割しました。

誤字脱字、読みやすいように修正しました。


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