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17 参上。超弩級戦艦

「下級副砲ベーゼス全弾命中。目標行動不能」

「火器支援制御システム……マーズフォボス目標撃破」

「損害予測合致……想定部分撃破」

「未来予測誤差修正。下級副砲ベーゼス次弾発射用意」

「防御統括システム……アルテミスハード防御スクリーン付与」

「ラストディフェンダー艦隊の防御スクリーンに遠隔展開」

「航法支援システム……ディープポセイダル同期開始」

「敵艦隊……反乱軍回頭開始。陣形再構築中」

「アンビエントジャミング強化」

「カッティング航法微弱前進。戦艦アウラミーラと位置入れ替え完了」

「我が艦の後方に戦艦アウラミーラ移動。防御スクリーン重複供給完了」

「リーマイ副官は宙域再鑑定をお願いするのですよ」


 超弩級戦艦サンダーゲートのAIサララの複数の声が艦橋に響いた。


「オンビット。ブレインリンク……宙域鑑定」


 超弩級戦艦サンダーゲートの空間投射器の空間波が広大な宙域をゼロ秒で踏破した。

 そしてリーマイ副官はその全てを鑑定した。


「次元ステルスで潜伏状態の反乱軍の艦影を多数確認。サララ、下級副砲ベーゼス充填」

「潜伏座標確認。未来座標予測演算完了。発射よし」

「撃て」

「発射しました」


 超弩級戦艦サンダーゲートの周囲に展開された浮遊砲台――下級副砲ベーゼスにサンダーゲートの膨大なジェネレーターから近接転移された究極エネルギーが迸る。

 究極のエネルギーが螺旋状に圧縮、集約され、そのポテンシャル密度を上げ、その砲身内で超加速する。

 そして数マイクロ秒後、満を持して砲口から放たれたのは破壊の意思を露わにした凶悪な光の直進。

 それが同時に三十二本。

 リーマイ副官の宙域鑑定にアクティブリンクに未来予測、サララの演算によって補正された光の軍が迸った。

 通常の戦艦では一度きりしか撃てないといわれる下級副砲ベーゼスが、一度に三十二基同時に発射された。

 船に搭載出来るエネルギーキューブの搭載容量には限界がある。

 これは誰がどう見ても後先考えぬ、愚行であった。

 この攻撃は非常識極まりない、燃費を度外視した本来ならば絶対に避けるべき危険な行為だった。

 通常の艦艇ならばあり得ない攻撃だった。

 だがしかし、超弩級戦艦サンダーゲートではそんな常識は通用しない。

 下級副砲ベーゼスは同時に三十二基が照射可能だった。

 これは王立宇宙戦艦三十二艦分の攻撃に匹敵する。


 何もない宇宙空間が爆ぜた。

 その一方的な攻撃で次元ステルス状態が解除される。

 次元ステルス状態で見えないはずの反乱軍の戦艦の防御スクリーンが一瞬だけ抵抗した。

 だがベーゼスの破壊の意思はそれを無視して、戦艦内部のジェネレーターを直撃した。

 通常ならば次元ステルス状態の艦艇を発見することは不可能だ。

 通常ならば内部のジェネレーターに命中させるなんて不可能だった。

 元は同じ軍だ。どこにジェネレーターが存在するかは把握している。

 それにリーマイ副官の鑑定は見逃さない。

 サララの未来予測演算がそれを外さない。

 超弩級戦艦サンダーゲートの強力な攻撃兵器がそれを確実に遂行する。


「全弾命中」

「敵艦。想定行動不能」

「よし。次弾撃て」

「未来予測演算完了済み。発射」


 超弩級戦艦サンダーゲートの周囲から新たな破壊光が三十二本同時に放たれた。

 この異例な三十二本の攻撃が一度では終わらない。

 なんと連射が可能なのだ。

 超弩級戦艦サンダーゲートは単独でありながら艦隊クラスの攻撃力を有していた。

 こんな戦艦が量産されれば、魔王軍との戦闘は一気に収束するだろう。

 だが残念なことにサンダーゲートは一艦しかこの世に存在しない。

 一艦だけが強大な戦力を有しても、広大な戦場ではあまり戦況に影響はない。

 戦いは数だ。

 周囲の反乱軍の戦艦は数万を超えていた。

 周囲の光は全て敵艦の推進器から漏れ出る光。

 そして点滅は主砲の悪しき照準光の瞬き。

 そして船体を守る防御スクリーンの発光。

 反乱軍の戦艦の防御スクリーンが瓦解する際のチェレンコフ光。


「全弾命中……想定部分撃破」

「戦況マップ更新。未来予測書き換え」

「反乱軍攻撃陣形」

「敵艦の主砲の照準を確認。複数同時の攻撃が来ます」


 サララは目を閉じ、ゆっくりと開いた。


「撃てるなら撃ってみるがいい。この超弩級戦艦サンダーゲートの防御スクリーンは貴様らの愚鈍で脆弱な攻撃ではびくともしないぞ」


 サララが古めかしい演技で右手を前に突き出し横に振った。


「何それ? サララちゃん」


 リーマイ副官が美しい眉をしかめた。


「我が船体に傷一つとして付けることさえ敵わぬ……さあ。その脆弱な攻撃を見せてみるがいい……えっ? 最近ですね。私の個性設定に悩んでまして、いろいろなアイデンディを試しているのですのよ」

「うん? そう?」


 メイムが大きなパンのような食べ物を頬張りながら小さな顔を不思議そうに傾けた。


「それ。それなのですよ。その『うん、そう』だけで会話を成立させるメイムちゃんの個性に私のアイデンティティは崩壊すれすれなんですのよ」

「うん。そう?」

「もうそれ崩壊してないかしら?」

「このサンダーゲートのアイドル的な存在が脅かされて、冷や汗を大量に垂れ流しているのですよ」

「このままでは私はAIメンタルクリニックに強制入院になるのですよ。先代のように意思分解されてしまうのですよ」

「この私が珍しく悩んでいるのですよ」


 サララが手をバタバタさせてその場で飛び跳ねた。

 別のサララが地団駄を踏み、小さな足が艦橋の床に当たりパタパタと音を立てた。

 宙に浮いたサララが不貞腐れた。

 複数のサララが悶えた。

 AIであるサララは単体ではない。群衆であり単一存在であった。


「うん? そう?」


 メイムはそんなサララ達を一瞥してパンを囓るのを再開した。


「むむ。なんて便利な決め台詞なんですか? リーマイ副官は『宙域鑑定』ってのがあるし」

「いや決め台詞じゃないけど」


 リーマイ副官が手を振った。


「艦長は『それだけは言えない』ってムカつく決め台詞があるのに、私は何もないですよ」

「確かにあれムカつくわね。あの自慢げな顔」

「そうです。あのしたり顔。これは由々しき事態ですよ。AIだというのにボキャブラリーとか、パーソナルリアリティが凡庸で、まるで目立ってないのですよ。他のAIに負けてしまいますのよ」

「いや、もう充分個性的だけどね。立派なユニークネーム持ちの古代エレメンタルAIなんだから気にしないでよサララ」


 リーマイ副官がサララを慰める。


「これは絶対数ヶ月間も艦長のアイテムボックス内に閉じ込められていたせいですのよ」

「うん? そう?」

「そう?」


 リーマイ副官とメイムは目を合わせて首を傾げた。

 その時、サララの怒りを代弁するかのように、複数の浮遊モニター群が真赤に唸り。怒涛の警告を発した。


「そういえば、敵が攻撃体制だったのですよ」

「たるんでるわね」

「うん。そう」


 そこには反乱軍の戦艦からの数万本の予測射線がサンダーゲートに接続されていた。

 この射線は全て攻撃を意味していた。

 つまり数万本のエネルギー攻撃が間もなくサンダーゲートに飛来するということだ。

 これは死刑宣告に等しい。

 たった一艦の防御スクリーンが数万の攻撃ビームを防げるはずがないのだ。

 通常の防御スクリーンでも三艦同時に攻撃を受けただけでも瓦解するだろう。

 それが数万だ。

 遂に反乱軍が攻撃に転じたのだ。


「ふん。だがそんな通常なありきたりの攻撃なんてまるで効かないのですのよ」

「メイムちゃん。準備はいいかしら?」

「うん。がんばる」


 メイムのセリフが微妙に変化した。

 それはメイムの本気を表していた

 数万の反乱軍の戦艦から、数万のエネルギービームが全方位からサンダーゲートに降り注いだ。

 何もないはずの真空宇宙空間が破壊の純粋エネルギービームが宙域を真っ白に埋め尽くした。

 暗黒の空間を白く染め上げた。

 周囲に漂っていたラストディフェンダー艦隊の残骸が一瞬で消滅した。

 自然界ではあり得ない程の高密度、高純度の純粋破壊エネルギーがアインシュタインスルーによって距離と時間を上書きし一瞬で邁進する。

 その広大な宇宙空間をゼロ秒で踏破した。

 超弩級戦艦サンダーゲートが光の奔流に包まれた。

 その強固な一瞬だけ防御スクリーンが淡い光を発した。

 ただ、それだけだった。

 宇宙は静寂に戻る。

 反乱軍艦隊から放たれた数万のアクティブリンク射撃が一瞬で消えた。

 超弩級戦艦サンダーゲートの防御スクリーンを加熱させることもなく、消滅した。


「敵エネルギービーム消失。物理的に痕跡なし」

「よくやったわ。メイムちゃん。もう艦長いらずね」

「うん?」


 そう。反乱軍の放った数万ものエネルギービームはメイムの収納魔法に収納されたのだ。

 これはドッキー艦長との厳しい特訓によって培われた技だ。

 ドッキー艦長の敵の攻撃エネルギーを収納するという高難度スキルだ。

 それをいとも簡単に披露したメイムは文字通り、ドッキー艦長の弟子だった。


「もうメイムちゃんが艦長でよいのですのよ」

「さてさて、サララ。そろそろ反撃開始ですのよ」

「分かってるのですのよ」

「メイムちゃん準備はいいかしら」


 リーマイ副官がメイムにほほ笑んだ。


「うん……そう?」


 メイムが不思議そうな顔をした。


「今、取り込んだエネルギービームを敵に向かって取り出すのですよ」

「うん」


 メイムが頷いた。


 超弩級戦艦サンダーゲートから数千本のエネルギービームが四方八方に、全方位に放たれた。

 それは先程の逆だった。

 反乱軍の放ったエネルギービームと同じ角度で発射された。

 アイシュタインスルーによって光速を越えた、元反乱軍の攻撃ビームが宇宙空間を逆走する。

 艦隊は高速で航行している。

 中には光速を超えている艦もあった。

 従ってこの攻撃が反乱軍の戦艦に命中するはずがない。

 だがそれでいい。

 命中する必要はない。

 反乱軍は疑心暗鬼に陥った。

 この攻撃はどこから?

 この大艦隊にしか出来ない攻撃はどこから放たれたのか?

 それだけで反乱軍は大混乱に陥った。

 アイテムボックスや収納魔法の存在など昔話のビジョンの主人公達のものでしかないのだ。

 現実に存在するなんて誰も信じていない。

 従って今のメイムが取り出した攻撃ビームの発射元を巡って大混乱に陥った。

 反乱軍の戦略AIは思考を停止し、オペレーター達は神に祈った。

 敵の陣形が崩れた。


「宙域鑑定。敵座標更新」

「未来予測演算開始」

「火器支援制御システム……マーズフォボスターゲット」

「敵影ロック」

「エンジンだけを狙ってね。あれは敵だけど同じ王国民よ」

「分かっているのですのよ」

「私の演算力とこのサンダーゲートの演算能力があれば」

「敵の動きを封じることだって可能なのですよ」


 リーマイ副官の警告に複数のサララが答えた。


 下級副砲ベーゼスが連射した。

 数万の艦隊に向けて無差別のように見えるが的確に敵艦のジェネレーターを撃ち抜いた。

 戦況マップの反乱軍の艦艇に行動不能アイコンが増殖していく。

 下級副砲ベーゼスは連射出来るようには作られていない。

 ベーゼスの砲身が焼き切れた。

 エネルギーバッファが消滅した。


「メイムちゃん。下級副砲ベーゼスを入れ替えて」

「うん」


 だが超弩級艦サンダーゲートの周囲に新たな下級副砲ベーゼスが出現した。

 メイムがアイテム収納から取り出したのだ。

 下級副砲ベーゼスは小さくない。

 それが何基も同時に出現した。

 砲身が崩壊した下級副砲ベーゼスが破棄され、新たな下級副砲ベーゼスがアクティブリンクされる。

 そして他のベーゼスが奏でる死の演奏に参加する。

 なんとリーマイ副官達は贅沢にも下級副砲ベーゼスを使い捨てているのだ。

 今、超弩級艦サンダーゲートは一艦で反乱軍の大艦隊と戦っているのだ。

 出し惜しみはしない。

 それがこの超弩級艦サンダーゲートの方針だった。

 あるものは全て使用して敵を撃破する。


「敵反乱軍多数行動不能」

「陣形崩壊」

「敵艦の攻撃予測済み。退避行動」


 超弩級艦サンダーゲートがカッティング航法によってジグザグにランダムに飛行する。

 敵の攻撃ビームがその痕跡に飛来する。

 だがそこには超弩級艦サンダーゲートはいない。

 あるのは防御スクリーンに衝突した光の粒だけだ。

 超弩級艦サンダーゲートがフェアリーダストを撒き散らし踊った。

 まるで小型艦のように華麗に舞うサンダーゲート。


「エネルギーキューブ在庫減少」

「メイムちゃん。エネルギーキューブの補給よろしくですのよ」

「うん」


 複数のサララに見送られメイムが艦橋を飛び出した。

 そして巨大な縦穴を垂直に落下した。

 艦内を高速で飛行し、メイムは自分の仕事部屋に一瞬で到着した。


「とりあえず百個ぐらいでいいかな」

「うん」


 ここは超弩級戦艦サンダーゲートの中央にある巨大なターミナル空間。

 ドッキー艦長の仕事場だったが今はメイムの仕事場だ。

 メイムは巨大な空間にエネルギーキューブの山を取り出した。


「ありがとう。受け取りましたですのよ」


 エネルギーキューブが重力子のレールに乗ってジェネレーターに飲み込まれていく。


「艦長もう用なしね」

「メイムちゃんがいれば、ドッキー艦長なんてもうこの船にいらないのですのよ」


 メイムは魔族の、魔王バッハベルトの娘だ。

 この特殊能力を持つメイムこそがドッキー艦長が夢にまで見た人材だった。

 これまではアイテム収納が出来るのはドッキー艦長しかいなかったのだ。

 収納魔法を持つメイムがサンダーゲートに搭乗したことにより、ドッキー艦長の激務が劇的に改善された。


「メイムちゃん。その他の必要物資を表示するね」

「うん……そう……?」


 浮遊モニターに浮かんだ目録を見てメイムが唸った。

 王国の文字は読める。

 ただ、名前と物資が一致しないのだ。

 暫く宙を見上げて考えていたメイムが大量のコンテナを取り出した。


「え? 待つのですよ」

「それはいらないのですよ。ワープリングはもう必要ないのですよ」


 メイムが今度は別の巨大なコンテナを取り出した。


「必要なのだけ持っていくから、残ったものはまた収納しておくのですよ」

「うんそう」


 ドッキー艦長のアイテムボックスは容量限界が見えない底なしだった。

 だがこのメイムの収納魔法もそれと遜色がないように底なしに見えた。

 これが普通なのだろうか?

 魔王の娘だからこその収納力なのか?

 アイテム収納スキルを持つのはドッキー艦長とメイムしかいないので判断のしようがない。

 敵の数万のエネルギービームを収納するとかもう、エントロピーや質量保存を無視していた。物理法則を無視していた。

 この魔王の娘はドッキー艦長に匹敵する能力を有していた。


「いやー。メイムちゃんの収納魔法って凄くない? どれだけ入ってるのですのよ?」

「艦長はアイテムボックスから一つ取り出すのに愚痴と文句が三つ出てきてたからね」

「うん? そう?」


 リーマイ副官とサララは艦橋で顔を見合わせ笑った。


「あらら。反乱軍撤退していくのですよ」

「行動不能の味方の艦を置いてくとは誇りある王立宇宙軍も地に落ちたか……」

「どうするのですよ?」

「同じ王国民、放っておけないでしょう。助けます。オアシスユニット散布」


 リーマイ副官が溜息をついた。


「船体慣性ベクトル調整」

「両艦の相対速度調整。サンダーゲートの防御スクリーン部分開放」

「オアシスユニット射出用リード重力線投射」

「オアシスユニット散布ですのよ」


 サララの声と同時にサンダーゲートから無数のコンテナが射出された。

 そしてそのコンテナがさらに分離する。

 小型の球体であるオアシスユニットが展開されバルーン状に膨れあがった。

 オアシスユニット、それは空気と水、食料、再生キットを内包した緊急避難用スペースだ。

 人類は船外活動に向いていない。

 宇宙空間では空気と水が必要なのだ。

 オアシスユニット自動的に人間を捜し出し、オアシス内に収容する。

 そして負傷していれば直ちに肉体の再生を行う。

 この時代の医療は、肉片一つ、髪の毛一本からでも肉体の再生が可能だ。

 だが魂の再生は不可能だ。

 肉体だけが再生しても魂が固着しなければ、それはもう本人ではない。別人なのだ。

 魂が離散する前に、帰還するための肉体を素早く用意する必要があったのだ。

 オアシスバルーンは人命救助の要なのだ。

 そして魂が無事に固着し、再生が完了すれば、重複した肉体は溶かされ、再利用される。

 戦場にはオアシスユニットのバルーンで溢れていた。


 オアシスユニットが生命活動を、有機物を、遺伝情報を探知し、敵味方関わらず、負傷者を収容していく。

 そして王立宇宙軍の兵員リストと照合し、再生を開始する。

 残念ながら生き返らない者もいる。

 残念なことにこれは戦争なのだ。


 メイムはその戦場を無言で見つめていた。

 魔族の――魔王バッハベルトの娘は人類同士の戦いを見て何を思うのであろうか?


「ラストディフェンダー艦隊から通信」

「音声のみで受信して、味方とはいえ、艦橋を見せる訳にはいきません」


 リーマイ副官が艦橋を見渡した。


「はい。音声のみですのよ」

「こちら戦艦アウラミーラ艦長。ザック・クレシダであります。貴艦の救援に心から感謝する。我が艦は損傷により間もなく航行不能。できれば乗組員の救援をお願いしたい」

「こちらサンダーゲート。リーマイ副官。オンビット。全員を我が艦に収容します」

「全員? は? 我が艦の乗組員は二百四十六名ですが?」

「はい。問題ありません。この船はまだ余裕があります」

「重ねて感謝する。それより女王陛下が……すまない。我々は何の役にも立たなかった。反乱軍に……」

「いえ、貴艦の活躍は見事でした。我が艦でゆっくり休んでください」

「その艦長はどちらに? サンダーゲートの艦長に直接感謝の意を伝えたいのだが……」

「残念ながらその要望には応えられません」

「忙しいのは理解している。そこをなんとかお願いしたいのだが」

「……艦長は不在です。この艦には居りません」

「何? 船を残してどこに? まさか反乱軍に……」


 救助用ゴンドラが負傷者を収容していく姿を眺めながらリーマイ副官が肩をすくめた。


「ええ、このサンダーゲートの艦長であるドッキー艦長は今、単独作戦行動中です」

「はい? 単独? それは艦長の仕事ではないのでは?」


 戦艦アウラミーラのザック艦長の小さな疑問には誰も答えなかった。




 ――反乱軍支配宙域。


 反乱軍の艦隊の合間を縫って高速航行する物体があった。

 その大きさは小型船にしては小さすぎた。

 ミサイルのような質量弾にしても小さすぎた。

 光速で飛行する物体はなんと人の姿をしていた。


「救助は間に合ったようだね。急がないと」


 そうドッキー艦長であった。


お読みいただきありがとうございました。

大まかなストーリーに変更ありません。

誤字脱字、読みやすいように修正しました。


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