クレタ島の牡牛
クレタ島についたヘラクレスは、クレタ島の主、ミノス王にあった。
ミノス王もゼウスと人間のハーフで、ヘラクレスとは異母兄弟ということになる。
ミノス王:「おお!よくきたなヘラクレス!」
ヘラクレス:「ミケナイ王の試練の一つで、牡牛を捕まえにきました」
ミノス王:「聞いておる、聞いておる、あの牡牛は暴れん坊でな、元々は大人しくて立派な牡牛じゃったが、急に暴れるようになってな、困っておったところじゃ」
なんでも噂では、王位争いの時、自分の権威を見せるためポセイドンから、この見事な牡牛を借りたが、返すのが惜しくなって、別な牡牛を返したそうだ。
それに怒ったポセイドンが、牡牛を暴れさせ、さらに妃に呪いを掛け、妃は牡牛を恋するようになる。
それで生まれたのが、ミノタウロスという訳だ。
そして成長したミノタウロスは狂暴になり、地下迷宮に閉じ込められた。
そのミノタウロスの食料として、9年に一度、男7人、女7人が地下迷宮に送り込まれる。
少々ポセイドンもやり過ぎな気がするが、ミノス王もミノス王だな。
ヘラクレス:「それで牡牛は今どこにいるんです?」
ミノス王:「ああ、暴れて色々壊すのでな、地下迷宮に閉じ込めたんじゃ」
ヘラクレス:「なんだって!」
ミノス王:「安心しろ、お前を1人で地下迷宮へ行かせるわけないだろ、もうじき仲間がやってくる」
ほどなくして、男7人、女7人の集団がやってきた。
ヘラクレス:「こ、これって生け贄にする人たちじゃ・・・。」ヘラクレスは呟いた。
ミノス王の前に並ばされた、男7人と女7人、そしてヘラクレス
ミノス王:「これから君たちは、うちの息子ミノタウロスの世話をしてもらう、9年後、代わりの者たちが来るので、それまで頑張ってくれ」
ヘラクレス:「ちょっと待ってくれ、おれは牡牛を捕まえに来ただけだ」
ミノス王:「もちろんヘラクレスは別じゃ、安心せい」
ほっと胸を撫で下ろすヘラクレスの前に、一人の男が前に出てくる。男7人の内の1人だ。
男:「おれはテセウス!ポセイドンの息子だ!」
お!なんか威勢のいいのが出てきたぞ。ヘラクレスは心の中で思った。
テセウス:「ミノス王、この馬鹿げた生け贄は今回で最後にしてもらう」
ミノス王:「言っている意味がわからん、お前たちはミノタウロスの世話係だ、生け贄ではない!」
確かに、建前上、世話係になっていたが、実際には生け贄だということは誰もが知っている周知の事実だった。
ミノス王:「それに、お前はポセイドンの息子というが、ワシは大神ゼウスの子だぞ!、これを見よ!」
そういうと、ミノス王はゼウスの力を借りて、目の前に雷を落として見せた。
まばゆい光と、ドーン!という心臓を震わす音がして、大理石の床が砕けた。
確かにゼウスの子だ。
ミノス王:「お前がポセイドンの息子と言うのなら、これを取ってこい!」
ミノス王は指にはめていた金の指輪を窓から海に投げ捨てた。
ニヤリと笑うミノス王を横目に、テセウスは崖から海に飛び込んだ。
そして、瞬く間に金の指輪を取ってきて見せたのだ。
ミノス王は不機嫌になり「明日、こやつらを地下迷宮にいれろ、武器など持たせるなよ」そういって部屋を出ていった。
このやり取りを部屋の隅で見ていたミノス王の娘アリアドネは、父をやり込めたテセウスに興味がわいた。
翌朝、武器など持っていないか調べられた男7人と女7人、それにヘラクレスは地下迷宮の入口で待たされた。
兵士たちが地下迷宮の門を開けるため、外に出ていくと、一人の女性が入ってきた。
ミノス王の娘アリアドネだ。
アリアドネはテセウスを見つけると声を掛けた。
アリアドネ:「わたしあなたのファンなんです。」
そういって、毛糸の玉と短剣をテセウスに手渡した。
テセウスも満更ではない感じで「ありがとう」と言っていた。
そして、アリアドネが部屋から出ていくと、地下迷宮の入口が開いた。
ヘラクレス:「テセウスさん、その毛糸の玉の使い方は分かっているのか?」
テセウスは、肩をすくめ、手のひらを天井に向け、首をかしげた。
ヘラクレスは、テセウスから玉を取り上げ、糸の先を地下迷宮の入口にくくりつけた。
ヘラクレス:「これで、この糸をたどれば地下迷宮から出られるというわけだ」
皆、顔を見合わせ笑みをうかべる。
テセウス:「あんたヘラクレスだろ、噂はきいてる、一緒にミノタウロスを倒してくれないか?」
ヘラクレス:「それは構わないが、俺は、そいつの父親の牡牛を探さなければならん」
結局、糸も一本しかないので、一緒にミノタウロスと牡牛を探すことになった。
最初に見つかったのは牡牛の方だった。
みんなで牡牛を追いたて、ヘラクレスの方に誘導した。
あとはヘラクレスが、強引に牡牛を倒して縛り上げた。
ヘラクレスは一旦、入口に戻り、牡牛を入口に縛り付ける。
その間に、テセウスたちはミノタウロスを見つけ格闘していた。
女たちは草で紐を作り、男たちはその紐を使って、ミノタウロスを拘束しようとするが、なかなかうまくいかない。
テセウスは短剣をもって切り込むが、逆にミノタウロスに殴られ吹き飛ばされた。
ようやくヘラクレスが帰ってきた時は、テセウスがミノタウロスに殺されかけていた。
あわててミノタウロスに飛びかかるヘラクレス。
ヘラクレス:「大丈夫か!」
テセウスに声をかけたヘラクレスだったが、ヘラクレスもまたミノタウロスの怪力に吹き飛ばさせた。
ヘラクレス:「いててて、俺も結構、怪物になったと思ってたんだがな・・・」
ヘラクレスが立ち上がろうとすると、ミノタウロスが突進してきた。
ヘラクレスはミノタウロスの角をもって、突進を食い止めるが、ミノタウロスに両脇を捕まれ持ち上げられる、ミノタウロスの握力はすごく、その握力でヘラクレスのあばら骨がきしむ音がする。
ヘラクレス:「ぐごっ!、こ、こいつはすごいなぁ・・・」あまりの痛みにヘラクレスの意識はもうろうとしてくる。
ヘラクレスの苦戦を見たテセウスが、後ろからミノタウロスに短剣を突き刺す。
ミノタウロスの力が緩み、うっすらと意識を取り戻すヘラクレス。
テセウス:「ぐご!」
見るとミノタウロスの背中に短剣が突き刺さり、またテセウスは壁に殴り飛ばされていた。
ヘラクレス:「そういえば、俺もゼウスの子だったな・・・」
ヘラクレスは片手を振り上げると人差し指をたてた「ゼウス!俺にも力を貸してくれよ!」そう言って、人差し指をミノタウロスの背中に刺さった短剣に降り下ろした。
ヘラクレス:「雷よ!落ちろ!」
まばゆい光と、ドーン!と心臓を揺さぶる音がして、ミノタウロスに刺さった短剣に雷が落ちた。
ミノタウロスは黒こげになった。
ヘラクレス:「なかなか、はじめてにしては、良くできたじゃないか・・・」
そう言ってヘラクレスは意識を失った。
ヘラクレスはテセウスたちに担がれ、地下迷宮を出た。
帰りはテセウスの船に乗せてもらい牡牛を運んだ。
テセウス:「ヘラクレス!ありがとう!」
ヘラクレス:「礼をいうのは、こっちのほうだ!」
テセウス:「またどこかで!」
ヘラクレス:「そうだな、またどこかで!」
そういって、ヘラクレスとテセウスは別れた。
ヘラクレス:「こっちの世界もいいもんだな・・・」
ミケナイ王に、牡牛を見せた後、牡牛は野に放たれた。
そして、またヘラクレスのもとに兵士がやって来て、次の試練を伝える。
兵士:「次は、トラキア王の飼っている人喰い馬の退治だそうです」
ヘラクレス:「おいおい、王さまの飼っている馬を退治してもいいのか?」