エーリス王の家畜小屋
ヘラクレス:「まぁ、そんな簡単な任務ではなかったか・・・」
ヘラクレスは、エーリスに向かっていた。
なんでもエーリス王は3000頭の牛を飼っていて、その牛小屋は30年清掃されていないという。
そこの清掃が今回の任務だったのだ。
エーリスに到着したヘラクレスは早速、小屋に案内される。
小屋は100棟あり、1棟に30頭の牛が飼われていた。
一応、飼っているということで、管理はされているのだろう。
時間になると、牛が牧場に出ていき食事と運動をしている。
排泄物も一応、側溝から流れるようにしてあった。
本当に、排泄物まみれだと牛も病気になって多くが死んでいただろう。
ただ、掃除をしていないのも確からしい。
少々臭うが、筋トレと考えれば、それほど辛くもない。
早速、大型のスコップを持ってきて、清掃に取りかかった。
まぁ、2、3週間もあれば片付くだろう。
牛が牧場に放されている間に、1棟、2棟と掃除を済ませるヘラクレス。
1日に10棟のノルマを作り、10日ですべての清掃を終わらせた。
そして、エーリス王に報告する。
ヘラクレス:「すべての牛舎の清掃が終わりました」
エーリス王:「よしよし、それでは見せてもらおう」
エーリス王と一緒に牛舎へ向かうヘラクレス。
そして、牛舎を見たエーリス王が大声をあげる。
エーリス王:「まだ、掃除が終わっていないではないか!」
ヘラクレス:「そんな馬鹿な!」
見ると確かに、また牛糞が牛舎に落ちている。
そうなのだ、1日目に終わらせた牛舎も10日目になると、また汚れてしまうのだ。
エーリス王:「もう一度やり直せ!」
ヘラクレス:「こりゃ無茶だ」
エーリス王:「だが、お前の試練はこの掃除を終わらせることなのだろう」
そういうと、エーリス王はニヤリと笑った。
ヘラクレスは思った。
なるほど、こいつはミケナイ王とグルだな。
ヘラクレス:「わかりました、確かに私に落ち度がありました。もう一度やらせてください」
そういうと、ヘラクレスはスコップを取り清掃をはじめた。
エーリス王は満足げに戻っていった。
エーリス王:「これで、牛舎の清掃は永遠にヘラクレスがやってくれるのか助かるなぁ」
エーリス王は笑いをこらえきれず、グププププと声を漏らした。
こいつは困ったぞ、ここの清掃を1日で終わらせることが出来ないと、俺は一生ここで掃除をするはめになる。
いや一生ではない、俺、不死になったから永遠に掃除することになるんだ・・・。
「川の水を使いなさい、川の流れでこの汚れを洗い流すのです」どこからかまた声が聞こえた。
ヘラクレス:「あんたはいったい誰なんだ!」
返事はなかった。
神託の神である巨人アポロンではないようだし、いったい誰なんだ?
まあ、俺を助けてくれているようだから、指示に従っておくか。
ヘラクレスは、掃除はせずにアルペイオス川とペネイオス川の流れを変えてダムを作り、牛舎に水が流れ込むようにした。
そして、またエーリス王の前にやって来る。
ヘラクレス:「もうすぐ掃除が終わるので見に来てください」
エーリス王:「余は忙しいのだ、あとにしてくれ」
ヘラクレス:「あとになると、また牛が糞をしてしまいます。どうかお願いします」
エーリス王:「終わるわけないだろう」
ヘラクレス:「いえ、本当に終わります」
エーリス王:「では、終わらなければ、ミケナイ王と同じように私の為にも10の試練をやってくれるか?」
ヘラクレス:「・・・・」
こいつら・・・ヘラクレスは心の中で呟いた。
ヘラクレス:「わかりました、では私が1日で清掃を終わらせたら、ここの牛の10分の1を下さい」
エーリス王:「・・・いいだろう。終わればな」
こうして、エーリス王とヘラクレスは牛舎へ向かった。
牛舎には、まだ牛糞がごろごろ転がっていた。
エーリス王:「ほら見ろ!まだ終わっておらぬではないか!」
ヘラクレス:「いいえ、いますぐに終わらせます、見ててくださいよ」
そういうと、ヘラクレスは用意していたダムの堰を切った。
勢いよく、川の水が牛舎に流れ込み、いくつかの牛舎を巻き込みながら、牛糞と牛舎が流されていった。
あまりの出来事に、エーリス王は口をパクパクさせながら、気を失っていた。
ミケナイに戻ったヘラクレスは、意気揚々と清掃の結果を報告した。
ところが、ミケナイ王から怒鳴り付けられる。
ミケナイ王:「お前は試練でありながら、エーリス王に報酬を要求したそうではないか、この試練は無効だ!」
城を出たヘラクレスは呟いた。
ヘラクレス:「まぁ、牛糞と一緒に牛舎も流しちまったし仕方ないか」
しばらくして、兵士がやってくる。
兵士:「次の試練はスティムパロス湖畔に棲む怪鳥の退治だそうです」
ヘラクレス:「お!俺らしい試練じゃないか」