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エリュマントスの猪

ヘラクレスが、エリュマントス山に行く途中、一人のケンタウロスに出会う。


挿絵(By みてみん)


ヘラクレス:「ケンタウロスとは珍しいな」

ケンタウロス:「そうでもないぞ、この森には沢山のケンタウロスが住んでいる」

ヘラクレス:「俺に武術を教えてくれたのはケイロンというケンタウロスの賢者でな、とても賢い人だった」

ケンタウロス:「あなたはケイロン殿の弟子か!」

ヘラクレス:「そういうことになるな、俺の名はヘラクレス」

ケンタウロス:「私はポロス」

ヘラクレス:「ケンタウロスは粗暴な連中が多いと聞くが、あんたやケイロンは少しちがうな」

ポロス:「私やケイロン殿は、他のケンタウロスと血筋がちがうからな」


ポロスの話によると、ケイロンはゼウスの父クロノスと精霊の間に生まれた子で、ポロスはシレノスという半人半馬の種族と精霊の間に生まれた子だという。

シレノスも半人半馬の種族だが、ケンタウロスの違いは、シノレスは2本足、ケンタウルスは4本足といった違いだ。ちなみにポロスは4本足だ。

ケイロンもポロスも精霊ニンフの血が入っていることになる。

他のケンタウロスは、イクシオンという人間とゼウスがつくった雲ネペレとの間に生まれた一族らしい。

挿絵(By みてみん)


ヘラクレス:「雲って、あの空に浮かんでいる雲のことか?」

ポロス:「そうだ、その雲で作った女とイクシオンという男の間に生まれた一族だ」

ヘレクレス:「神様のすることは、わけが分からないことが多いな」


ヘラクレスとポロスの会話は弾み、ヘラクレスはポロスの洞窟の家で一泊することになった。

おしゃべりのしすぎで喉が乾いたヘラクレスは、なにか飲み物がないか訪ねたが、お酒しかなかった。


そのお酒は、ケンタウロス一族共有の酒だったが、あまりにもヘラクレスが辛そうだったので、

ポロスは一杯だけ、ヘラクレスに分け与えた。


ヘラクレス:「ありがたい、これで生き返った」

お酒で喉を潤したヘラクレスは、またポロスと話はじめたが、開けたお酒の匂いを嗅ぎ付けて、

ケンタウロスたちが集まってきた。


ケンタウロスA:「これは俺たちの酒じゃないか、なぜ人間が飲んでいる」

ケンタウロスB:「ポロスどういうことなんだ」

ポロス:「すまん、客人の喉が乾いておってな、それで飲ませたんだ」

ケンタウロスA:「俺たちの許しもなくか?」

ポロス:「それはすまなかった、だがケンタウロス共有の酒だ、ということは私の分も含まれているはずだ」

ケンタウロスB:「人間に与えるなど聞いていない」

ケンタウロスC:「そうだ、そうだ」

ケンタウロスA:「俺たちの酒を返せ!」

ポロス:「それは無茶だ、もう飲んでしまった」

ケンタウロスC:「殴って吐き出させろ!」


この異様な雰囲気に、ヘラクレスは棍棒に手を伸ばした。


ケンタウロスB:「こいつ棍棒で俺たちを殴ろうとしているぞ!」

ポロス:「おいおい、まってくれ!」

ヘラクレス:「すまないポロス、こいつは無理そうだ」


ヘラクレスは飛び出して、ケンタウロスを2、3人殴り飛ばした。

ケンタウロスたちも、一斉にヘラクレスに襲いかかるが、ヘラクレスの怪力に投げ飛ばされる。

ケンタウロスはまずい相手に喧嘩を売ったと思い、ポロスの洞窟から逃げ出した。

頭に血が上っているヘラクレスもケンタウロスたちを追って飛び出す。


ヘラクレスが洞窟の外に出ると、何人かのケンタウロスは、石をもってヘラクレスに投げつけた。

ヘラクレスも対抗して、弓矢を取りだしケンタウロスを射はじめる。


このヘラクレスの矢には、ヒュドラの毒が塗ってあり、少しでもケンタウロスに当たると、

ケンタウロスが次々と倒れていく。

ケンタウロスたちは逃げ出し、ヘラクレスがあとを追う。


ポロス:「なんだ、あの矢は、屈強なケンタウロスが簡単に倒されるなんて・・・」

興味をもったポロスはヘラクレスの矢を集め調べはじめた。


ヘラクレス:「何処へいきやがった」

ヘラクレスがいくら神の子でも、ケンタウロスの足には追い付けない。


「キャァァー!やめて!」甲高い、女性の悲鳴が聞こえた。


ヘラクレスが声の方に駆けつけると、4、5人のケンタウロスたちが馬車を襲っていた。

道には傭兵らしき男が2人倒れ、残った女性が抵抗している。


女性:「あなたたち、こんなことしてタダで済むと思ってるの!」

ケンタウロスB:「タダなわけないだろ、お前の身に付けている宝石を売って、お酒に変えるんだ」

ケンタウロスC:「俺たちの酒を人間に飲まれちまったからな」


ヘラクレスは、矢を放ち、1人のケンタウロスが倒れる。

残りのケンタウロスが一斉に矢の放たれた方向を向く。

ケンタウロスB:「あのやろうだ」

ケンタウロスたちは、ヘラクレスの姿をみると、散り散りに逃げ出した。


ヘラクレス:「あんた、大丈夫か!」

女性に声をかけると、女性はヘラクレスのことを知っていた。

女性:「ヘラクレス!」

女性に抱きつかれ戸惑うヘラクレス。

女性:「私、私よ!ミケナイ王の妹アルキュオネよ」

そういえば、小さい頃の面影が残っている。

ヘラクレス:「大きくなられて見違えました」


ヘラクレスは、これまでのいきさつをアルキュオネに話した。

アルキュオネは、護衛の兵士が2人も殺されたとあって、ケンタウロス一族に怒り心頭、ヘラクレスにケンタウロス討伐の命令を出した。


ケンタウロスの一族は、ヘラクレスのあまりの強さに、ケンタウロスの賢者ケイロンのもとに助けを求めた。ケイロンはヘラクレスの師匠でもあった。


ケンタウロスA:「ケイロン!ケイロン!」

ケイロン:「なにごとだ」

ケンタウロスA :「かくまってくれ」


ケンタウロスAがケイロンに状況を説明していると、突然、大雨が振りだしてきた。

ケンタウロス一族の母である雲のネペレが、ケンタウロスたちを逃がす為、大雨を降らせたのだ。


大雨で視界が悪くなっても、ヘラクレスはケンタウロスを見つけ出しては倒していく。

降りしきる雨の中、2つのケンタウロスの影を見つけたヘラクレスは、そっと近づき矢を放とうとする。


ケイロン:「まってくれ!ヘラクレス」

聞き覚えのある声に手がとまるヘラクレス。


ヘラクレス:「師匠!」

ケイロン:「もう、このくらいにしてはくれぬか」

ヘラクレス:「しかしミケナイ王の妹アルキュオネ様の命令です」

ケイロン:「それはわかるが、ケンタウロス一族を皆殺しされてはワシも悲しい」

躊躇するヘラクレスの前で、ケイロンに隠れほくそ笑むケンタウロスA。


その姿に怒りが混み上がったヘラクレスは「師匠、すみません」と言うとケンタウロスAに向かって矢を放った。


しかし、ケイロンは身を呈して、ケンタウロスAをかばい矢を受ける。

動揺したヘラクレスは、すぐさま師匠のもとにかけつける。矢傷を受け苦しむケイロン。

ケンタウロスAは、まずいと思い逃げ出した。


ケイロン:「ぐごごごぉぉ・・・こ、これは・・・く、くるしい」

ヘラクレス:「お、俺はどうすれば・・・」

ケイロン:「ふ、普通の・・・矢では・・・ないな」

ヘラクレス:「ヒュドラの毒がぬってあります」

ケイロン:「な、なる・・ほど・・・わしは・・・不死でな・・・死なん・・のじゃ」


ケイロンは自分が不死であること、普通の矢であると油断したことを話した。


ケイロン:「わ、わしは・・・ずいぶん・・・長く・・・生きたし、・・・この痛みが・・・永遠に続くのも・・・いやじゃ・・・お前に、・・・不死を譲ろう」

そう言うと、小さな針のような光がケイロンの心臓からヘラクレスの心臓へ入っていった。

しばらく、苦しんだ後、ケイロンは息を引き取った。


師匠を失ったヘラクレスは、ケンタウロスを追うのをやめた。


ポロスの洞窟へ戻ると、ポロスが倒れていた。

ヘラクレスの矢を調べようとして、あやまって毒が体に入ってしまったらしい。


ヘラクレス:「なんてことだ、優秀なケンタウロスを同時に2人も失ってしまうなんて・・・。」

ヘラクレスは、ポロスと師匠のケイロンを埋葬して墓を作った。


後に、ポロスはケンタウロス座として、ケイロンは射手座として、天にあげられた。


そして、ヘラクレスは本来の目的であった。エリュマントスの猪狩りへ向かった。


この世界では、たまに田畑を荒らす大猪が現れる。

このエリュマントスの猪も、その1匹だ。

なんでも狩りの女神アルテミスが、人間の行いを正すために送り込むのだとか。

ヘラクレス:「やっかいな女神様だ」

そして、あの双子の弟、巨人アポロンを思い出す。

ヘラクレス:「きっと女神アルテミスってのも大きな女なんだろうなぁ」


エリュマントスには雪がつもり、ここで猪が出るのを待たなければならなかった。

ヘラクレス:「ネメアの獅子の皮を剥いで毛皮にしておくんだった」


突然、猪が現れ、ヘラクレスに突進してくる、油断していたヘラクレスは、

吹き飛ばされそうになるが、猪の耳と牙をつかんでひねり倒した。

ヘラクレス:「いててて」

見ると、ヘラクレスの腹にイノシシの牙が突き刺さっていた。

きっと、ケイロンから不死を譲り受けてなければ、致命傷になっていただろう。

ヘラクレスは、そのまま猪を縛り上げ、ミケナイに帰っていく。


猪を担ぎながら、ヘラクレスは考えた。

神の子として生まれ、強靭な肉体と疲れにくい体、そして不死を手にいれた。

この世界でもボディービルのトレーニングを続けていけば、あの恐怖を感じた

アポロンとも渡り合える日がくるのではないか・・・。

しばらく、無双の自分を想像するヘラクレスだったが、

ヘラクレス:「そうか、不死といえども苦痛は感じるんだったな」


王の広間でミケナイ王に猪を見せるが、ミケナイ王の前には、猪が暴れるのを警戒して、盾をもった兵士たちが2重に並んでいた。

王としては、賢明な対策だったが、町では臆病者の王さまと噂されていた。


ミケナイ王から、猪狩りの報酬と、妹アルキュオネを助けたお礼をもらい。

次の試練を待った。


兵士がやって来た。

兵士:「次の試練は、家畜小屋の清掃だそうだ」

ヘラクレス:「えっ、そ、そんなのでいいのか?」


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