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ケリュネイアの鹿

ミケナイ王:「ネメアの獅子についで、レルネのヒュドラまで倒したか・・」


このままヘラクレスが10の試練を乗り越えたらどうなるのだろう・・・。

私に仕えて、どうする?私の寝首をかくのか?

それとも、ヘラクレスが従者になって私の評判が上がるのか?

否、今度は周りから、王位を譲れと圧力が掛かってくるかもしれない。


ヘラクレスには悪いが、早めに脱落してもらわないと・・・。

しかし、どうやって?


獅子やヒュドラ以上の魔物がいるだろうか・・・。


ミケナイ王は、しばらく考えて、ぼんやりと部屋を見ている。

部屋には絵画や彫刻、剥製があった。

壁にかかった鹿の剥製に目を止めたミケナイ王は思い付く。


そうだ、女神アルテミスが、欲しがっているケリュネイアの鹿を捕まえさせよう。

狩りの女神アルテミスでも捕らえることの出来なかった鹿だ。

いくらヘラクレスが弓術の心得があっても捕まえることはまず不可能。


仮に捕まえたとしても、元々アルテミスの獲物、ヘラクレスが横取りしたとあっては、

アルテミスが黙ってはいまい。


挿絵(By みてみん)


ヘラクレス:「なるほど、ケリュネイアの鹿は、黄金の角と青銅の蹄をもつ恐ろしく足の早い鹿なのか」

ヘラクレスは、鹿が住む岩場で待ち伏せをしていた。

切り立った岩山を何匹もの鹿が跳び跳ねている。


そのなかで、一際大きく、黄金の角をもった鹿が現れる。


挿絵(By みてみん)


ヘラクレス:「これは、一目瞭然だな」

ヘラクレスはそっと鹿の方へ近づき、弓をつがえて鹿に放った。


通常の鹿なら、間違えなく仕留めていた矢だったが、黄金の鹿は軽々と矢を避け岩場を駆けあがっていった。


ヘラクレス:「これは、どうしたものか・・・。」

とりあえず、鹿のあとを追いかけるヘラクレス。


鹿を追いかけながら、岩山を走るヘラクレスは、転生前のボディービルダー時代を思い出す。


この岩山、減量するために行った120キロ走行を思い出すな。

あの時は、ボディービル大会の後、すぐにアジア大会のオファーがあって、

世界戦の切符ほしさに、大会に出ることを決めたんだったな。


大会後の疲れきった体を、再度、大会に向けて体を鍛えなければならず、

大会前日、ちょっと体に栄養をいれようと肉を食べたら止まらなくなって、

気がついたら、体重13キロオーバー(笑)。


この体重を落とすため、電車やバスを乗り継いで山の中へ、そこから歩いて家まで帰ったな。


家につくまで、20時間、走ったり歩いたりした足は血だらけで、最悪だったけど、

その痛みのおかげで眠気がとれ、体重も落とすことができた。


そしてアジア大会優勝。


神の子として生まれた体は、回復も早く、疲れもそれほど感じない。

あの時に比べれば、鹿との追いかけっこなど、さほど苦でもないな。


そうは言っても、矢よりも素早く走る鹿を捕まえられる気配はまったくなく、

ヘラクレスは、何ヵ月も鹿の後を追うことになった。


「だいぶ苦戦しているようだな」

丘の上から、どこかで聞いた声がした。


ヘラクレスが丘を見上げると、ネメアの獅子がヘラクレスと黄金の鹿の追いかけっこを楽しそうに眺めていた。


ヘラクレス:「なんだ、手伝ってくれるのか?」

獅子:「手伝って欲しいのか?」

ヘラクレス:「そうだな、手伝ってくれ」

獅子:「やけに素直だな、俺が手伝うふりをして、お前を襲うとも限らんぞ」

ヘラクレス:「急いでるんだ、早くしろ!」


獅子はやれやれといった表情で、ヘラクレスを背中に乗せた。

獅子:「お前を乗せても、まだお前より足は速かろう」

獅子は自分の足の速さを自慢した。


ヘラクレス:「お前がいてくれて助かったよ。」


獅子は少し嬉しそうだったが、悪い癖で、また憎まれ口を叩いた。

獅子:「お前ともあろうものが、他者の手を借りて恥ずかしくはないのか?

俺だったら、誰の手も借りず一人で仕留めて見せるがな」


ヘラクレス:「一人で出来ることなどたかが知れている。で、どうやってあの鹿を仕留める」


獅子はヘラクレスの言葉を噛み締めたのか、鹿を仕留める方法を考えたのか、少し間をおいて言った。


獅子:「しっかり矢を放つ準備をしていろよ、俺が隙をつくってやる」

そう言うと、獅子は鹿の近くまで駆けあがり、大きく息を吸った。


ウゴォォォー!!

ものすごく大きな獅子の咆哮が岩山に響き渡る。


黄金の鹿もビックリして立ちすくんでしまった。

そこにヘラクレスの矢が鹿の足に命中。


うまく走ることの出来なくなった黄金の鹿はヘラクレスに捕らえられた。


ヘラクレス:「見事だな」

獅子:「確かに、見事な鹿だ、アルテミスが欲しがるのもわかる」

ヘラクレス:「ちがうよ、お前の狩りの腕前さ」


ヘラクレスと獅子が歩いていると、向かいから男がやって来た。

やけにデカイ男だ、いや巨人と言っていい。


6メートルはあるかと思う男は、ヘラクレスの担いでいる鹿を見て言った。

「それはケリュネイアの鹿ではないか!」


ヘラクレス:「いかにもそうだが、なにかようか?」


まずい状況をさっしてネメアの獅子は言った。

獅子:「ヘラクレス、悪いが俺は急用を思い出した、達者でな・・・」

そう言うと、獅子は姿をくらませた。


ヘラクレス:「あのやろう・・・」


巨人:「その鹿は私の双子の姉アルテミスが狙っていた獲物だ」

ヘラクレス:「で、あんたはいったい誰なんだ!」

巨人:「わたしはアポロンだ、神託の神でもある」


ヘラクレスは思った。

神託の神だって、確か10の試練の声を聞いたのもアポロン神殿の前だったな。


ヘラクレス:「じゃあ、あんたが俺に10の勤めを果たせと言った神か?」

アポロン:「ちがう、それより鹿をどうするつもりだ、まさか殺してはいまいな」


ヘラクレス:「ああ、死んではいない、10の勤めの1つで、これをミケナイ王に持っていくところだ」

アポロン:「その後はどうするのだ?」


ヘラクレス:「あんたの姉さん、女神アルテミスが欲しいのなら、くれてやろう」

アポロン:「それはありがたい、ではミケナイ王への提示が終わったら頂こう」

アポロンは、この知らせをアルテミスに伝えるため立ち去った。


ヘラクレス:「あれが本物の神か、巨人じゃないか」

ヘラクレスの額からは緊張のためか脂汗が出ていた。


ミケナイについたヘラクレスは、ミケナイ王の広間にやって来る。

ミケナイ王:「今回はずいぶんと時間がかかったな、もう忘れているのかと思ったぞ」

ヘラクレス:「素早い鹿で捕まえるのに時間がかかりました。これが黄金の角を持つ、ケリュネイアの鹿です」

ヘラクレスが、檻の幕を取ると、黄金の角に青銅の蹄をもつ大鹿が姿をみせる。

ミケナイ王:「これは見事!」


あまりの見事さにミケナイ王は鹿が欲しくなった。

ミケナイ王:「では、その鹿を引き渡してくれ」

ヘラクレス:「残念ですが、この鹿は女神アルテミスに渡すことになっております」

ミケナイ王:「ヘラクレスよ、お前は余に仕えるんだったよな」

ヘラクレス:「はい、その通りです」


ミケナイ王がヘラクレスに無理強いをしていると、広間に神の声が広まった。

「ミケナイ王よ、その鹿は私がヘラクレスと約束をしたものだ下がれ」

ミケナイ王は、青くなってヘラクレスと鹿を追い出した。


ヘラクレスが、外に出ると、鹿に光がさし、天へ召し上げられていく。

ヘラクレス:「なんか神様に横取りされた気分だな」


しばらくして、兵士がやってくる。

ヘラクレス:「次の試練は決まったのか?」

兵士:「エリュマントスに住む猪を生け捕れとのご命令です」


ヘラクレス:「次は猪か・・・。」


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