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オムパレの奴隷

リューディアの女王オムパレに買われたヘラクレスの奴隷生活が始まった。

奴隷達は一つの部屋を数人で共有し、肉体労働は朝から晩まで続いた。


挿絵(By みてみん)


こうした環境は、ヘラクレスにとってありがたかった。

奴隷同士の争いは絶えず起こり、仕事も忙しかったので、自分の事で悩む時間が無かったのだ。


それに肉体労働は、ヘラクレスにとって楽な仕事だった。

奴隷同士の争いも、体格のいいヘラクレスを相手に文句をいうヤツはいなかった。


ヘラクレスは喧嘩の仲裁をしているうちに、次第に奴隷達のリーダーになっていった。


ある時、ケルコプスというゴブリンの集団がリューディアの統治下にある村を襲った。

ヘラクレス達、奴隷もその討伐に駆り出された。

挿絵(By みてみん)


ヘラクレスにとってゴブリンは容易な相手だった。

片っ端から、ゴブリンをなぎ払い、最後に指揮をしていたゴブリンチャンピオンが出てきた。


ヘラクレス:「お前がケルコプスか」

ケルコプス:「なかなかやるじゃないか・・・」強がってみせたケルコプスだったが、声が震えていた


ヘラクレスがケルコプスを軽く殴ってやると、ケルコプスは遠くへ吹き飛ばされた。

ゴブリンチャンピオンなど、ヘラクレスの相手ではなかった。


奴隷A:「親分すげー!」

奴隷B:「ほれちゃう!」オカマの奴隷Bが叫んだ。


ヘラクレス:「久々に人を殴ると気持ちがいいな!」その言葉に奴隷達はさらに熱狂した。


奴隷C:「かっこいい!」

奴隷D:「俺たちのボス!」奴隷Dはヘラクレスを指差し兵士達にアピールした。


この騒ぎで、リューディアの兵士達のあいだでもヘラクレスの事が噂になった。


リューディア兵A:「奴隷のなかに化け物見たいに強いヤツがいるって話きいたか?」

リューディア兵B:「なんでも、ゴブリンチャンピオンを一発で倒したらしい。」

リューディア兵C:「おいおい、そりゃ話を作りすぎだろ。」


たまたま、その話を聞いた女王オムパレが問いただした。

オムパレ:「その話は本当か?」

リューディア兵A:「確認したわけではありません。あくまで噂です」

オムパレ:「その奴隷をつれてこい」


ヘラクレスは女王オムパレの前に連れ出された。

オムパレ:「お前、名をなんという?」

ヘラクレス:「ヘラクレスだ」

オムパレ:「あのヘラクレスなのか?」

ヘレクレス:「どのヘラクレスだ?」

オムパレ:「なかなか口の聞き方を知らない奴隷とみえる、昔はさぞ立派だったのだろう」


ヘラクレスは、何故だかわからないが昔の記憶を少しずつ失っていた。


オムパレは、ヘラクレスの周りを回りながら、舐め回すようにヘラクレスを観察した。

ヘラクレスの鍛え上げられた肉体に感心したオムパレは切り出した。

オムパレ:「お前が、どのヘラクレスでも構わない、やってもらいたいことがある」


オムパレの話によると、町はずれにブドウ畑があり、そのブドウ畑の近くを通った旅行者が次々に行方不明になっているというのだ。


ヘラクレス:「なぜ俺なんだ」

オムパレ:「以前、兵士を送ったのだが、そこのブドウ園の主人にいいようにやられてな、どういうわけか記憶もなくしていた」

ヘラクレス:「それで俺なのか?」

オムパレ:「すでに、どのヘラクレスかわからないお前なら、適任だろ」


ヘラクレスがブドウ畑にやってくると、主人がブドウ畑から顔をのぞかせた。

ヘラクレス:「でかいな、というか人間じゃないだろ」

このブドウ畑の主はシュレウスという人間ということになっていたが、どうみてもオーガだった。


シュレウス:「こいつは、またよく働きそうなやつが来たな」

ヘラクレスは「何を言っているんだ?」と思った。


ヘラクレス:「ちょっとあんたに聞きたいことがあるんだ」

シュレウス:「ちょっと待ってくれ、今、手が放せない。家で待っててくれ」

そういうとシュレウスは、畑の奥を指差した。


確かに小屋のような家があった。

ヘラクレスが家にたどり着くと、一人の女の子が現れる。

オーガの女の子オグレスだ。


オグレス:「私の名前はクセノドケ、シュレウスの娘よ」

ヘラクレス:「俺はヘラクレスだ」

クセノドケ:「あら、英雄のヘラクレスと同じ名前ね」

そういって、クセノドケはヘラクレスを椅子に座らせブドウ酒をついだ。


クセノドケ:「パパが来るまで少し待っててね」そういって、クセノドケは出ていった。


ヘラクレス:「ブドウ酒か・・・なんかあやしいな・・・」

ヘラクレスは部屋の中を見渡した。


バタン!と突然ドアが開きシュレウスが入ってきた。


シュレウス:「いやぁ、すまない、すまない、待たせたな」


シュレウスはヘラクレスが座っているテーブルの前に腰掛け、ヘラクレスに出されたブドウ酒をゴクゴクと飲み干した。

シュレウス:「いやぁー、仕事後のこの一杯がいいんだ」

呆然とその姿をみているヘラクレスに、シュレウスが言った。


シュレウス:「それで、用件はなんだ」

ヘラクレス:「最近、このブドウ畑の近くで人が行方不明になっているときいてね」

シュレウス:「なんだ、俺が喰ったとでもいうのか?」

ヘラクレスは、本当にこいつが喰っていてもおかしくないと思った。


ヘラクレス:「いや、そうじゃないんだ、何か知ってることがないかと思ってね」


シュレウスはヘラクレスに酒が無いことに気がついて叫んだ。

シュレウス:「おーい!客人にブドウ酒を持ってきてくれ!」

シュレウスはクセノドケにブドウ酒を持ってこさせた。


クセノドケ:「あら、パパまたお客さんのブドウ酒を飲んじゃったの?」

ヘラクレスには、この二人が悪い人には見えなかった。


ヘラクレスは、出されたブドウ酒を飲んでみた。

シュレウス:「どうだ、旨いだろう。この畑で取れた特性のブドウ酒なんだ」


ヘラクレス:「確かに、こいつは旨いな」

ヘラクレスは、一気にブドウ酒を飲み干した。


シュレウス:「そうだろう、そうだろう。もっと持ってきてくれ!」

クセノドケはブドウ酒を持ってきてヘラクレスのコップに注いだ。


シュレウス:「ところで、お前さんの仕事はなんなんだ?」

ヘラクレス:「俺の仕事は・・・俺の・・・仕事?」

ヘラクレスは、何しにここへ来たのか思い出せなかった。


シュレウス:「お前さんは、ここに働きに来たんだったろ」

ヘラクレス:「・・・あ、・・ああ、・・・そ、そうだった・・???」


ここの特性ブドウ酒には、忘却と支配の効果があった。


翌朝、ヘラクレスはブドウ畑の仕事をしていた。

クセノドケ:「今度の人は、ずいぶん持ちそうねパパ」

シュレウス:「そうだな、普通のやつは皆すぐにダメになって畑の肥料にしかならんからな」

畑には多くの人骨が埋まっていた。


ヘラクレスは訳もわからず、何日もブドウ畑で働かされたが、

ヘラクレスが力任せにブドウの世話するものだから、畑はめちゃくちゃになっていった。


シュレウス:「こいつは使い物にならんな・・・」

シュレウスは、ヘラクレスを解放し追い払うことにした。


ヘラクレスは、畑の真ん中で意識を取り戻した。

ヘラクレス:「・・・・」


シュレウス:「どうしたんだあんた、畑の真ん中で居眠りなんかして、風邪をひくぞ」

シュレウスはもうろうとしているヘラクレスに手を貸してやった。


ヘラクレスはフラフラ起き上がった。

シュレウス:「あんた、大丈夫か?」


ヘラクレスは、これが夢なのか現実なのか区別がつかなかった。

ただ、土の中に、人骨が見えた。


ヘラクレスはギョッとし、シュレウスの顔をみた。

そして、心配そうにヘラクレスの顔をのぞき込んでいるシュレウスの顔を思いっきり殴った。


シュレウスがどのくらい飛んだかはわからない。


ヘラクレスはブドウ畑のブドウをすべて根っこから引っこ抜いた。

めくれ上がった土からは、多くの遺体が見つかった。

そこには、本物のシュレウスとクセノドケと思われる遺体もあった。


ヘラクレスは、小屋とブドウの木に火を放った。


出発して何日過ぎたのだろう、ヘラクレスはブドウ畑の仕事を終え、オムパレのもとに帰ってきた。

オムパレは無事にブドウ畑から帰ってきたヘラクレスを見て、英雄ヘラクレスである事を確信した。

オムパレ:「やはり、お前はあのヘラクレスだったな」


ヘラクレスは、自分が英雄ヘラクレスである記憶を失っていた。


オムパレは、ひどくヘラクレスの事を気に入り、ヘラクレスと結婚した。

オムパレとヘラクレスの間には3人の子供ができた。


しかし、結婚してもヘラクレスが奴隷であることには変わりがなく。

女王オムパレは、ヘラクレスに自分の服を着せたり、自分がヘラクレスの真似をして楽しんだ。


そうして、3年が過ぎた。


オムパレ:「ヘラクレス!今日もお前は私のふりをするのだ」

ヘラクレス:「もう終わりだ、俺は行かねばならない」


ヘラクレスは、自分が誰だったかを思い出した。アポロンに言われた3年の期日が過ぎたのだ。

そしてミケナイに帰った。


横暴だったリューディアの女王オムパレはヘラクレスを失い、オイオイ泣いたという。


ミケナイでは、ヘラクレスに最後の試練が準備されていた。

ミケナイ王:「久しぶりだな」

ヘラクレス:「ずいぶんと時間が経ってしまいましたが戻って参りました」

ミケナイ王:「私の方こそ、お前を待たせていたからな、だがこれで最後だ」


ミケナイ王は最後の試練を言い渡した。

ミケナイ王:「地獄の番犬ケルベロスをつれてきて欲しい」

ヘラクレス:「承知しました」


ヘラクレスは、最後の試練が地獄の番犬とは、俺に相応しいかもしれないと思った。


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