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ヘスペリデスの黄金の林檎

ヘスペリデスの黄金の林檎というのは、ヘスペリデスの園にあるという黄金の林檎だったが、

そもそも、そのヘスペリデスの場所がわからなかった。

そんな時、エジプト王ブシリスが黄金の林檎を持っているという噂を耳にする。


ヘラクレスは、とりあえずエジプトに向かったが、簡単に黄金の林檎が手には入るとも思えなかった。

それに、その黄金の林檎が本当に、ヘスペリデスの黄金の林檎なのかもわからなかった。


船でエジプトに到着したヘラクレスは、エジプト王に会うため、港からエジプトに入ろうとすると、

警備のエジプト兵に捕らえられた。


挿絵(By みてみん)


ヘラクレス:「俺が何かしたってのか?」

エジプト兵:「悪く思わないでくれ、今エジプトでは異邦人は全て捕らえる事になっているんだ」

ヘラクレス:「なぜだ?」


兵士達の話によると、エジプトでは長い間、作物が実らなかった。そこで予言者から神託を賜ったのだ。

予言者の神託によると、異邦人をゼウスに生け贄として捧げると作物が実ると告げられたらしい。

ヘラクレス:「ゼウスが生け贄を喜ぶとは思えんがな」

エジプト兵:「そうなんだ、そこで生け贄の代わりに、黄金の林檎が捧げられることになった」


この黄金の林檎は、大地ガイヤがゼウスとヘラの婚礼に贈ったものだが、ゼウスが他の女性に林檎をあげてしまうので、ヘラがヘスペリデスの園に隠してしまった。


エジプト王ブシリスはポセイドンの子供で、海神ネレウスに命じて、ヘスペリデスの黄金の林檎をとってこさせた。


ヘラクレス:「では、もう俺を捕らえる必要はないだろう」

エジプト兵:「それが、ヘラに見つかってしまい、もう生け贄を捧げるしかなくなったんだ」

ヘラクレス:「言っておくが、俺はゼウスの子、ヘラクレスだぞ」

エジプト兵:「え!」

ヘラクレス:「自分の子が、生け贄にされて、ゼウスが喜ぶとは思えんがな」


ヘラクレスは解放され、エジプト王ブシリスの前に招かれた。


エジプト王:「ヘラクレス殿、すまなかったな」

ヘラクレス:「作物の件はききました。ですが生け贄で解決できるとは思えません」

エジプト王:「では、どうすれば・・・」

神妙な顔で考え混んでいたエジプト王だったが、ヘラクレスの顔をみて思い付いた。


エジプト王:「確か、ヘラクレス殿の武術の師匠は、ケンタウロスの賢者ケイロンであったな。彼から知恵を借りることはできないか?」

ヘラクレス:「残念ですが、師のケイロンは亡くなりました」

エジプト王:「なんと!」


エジプト兵:「王様、人間に火を与えた、プロメテウスなら何か知っているかも知れません」

エジプト王:「そうじゃな、プロメテウスなら解決できるかもしれん。だが何処におるのじゃ?」

エジプト兵:「カウカーソス山にいるはずです」

ヘラクレス:「まってくれ作物の件もわかるが、俺が欲しいのは黄金の林檎だ」

エジプト王:「わかった、プロメテウスをつれてきたら、海神ネレウスにヘスペリデスまでの道案内をさせよう」


挿絵(By みてみん)


こうして、ヘラクレスはカウカーソス山に向かうことになった。

プロメテウスは、人間に火を与えた罰としてカウカーソス山に磔になっているらしい。

火は人間に文明をもたらしたが、同時に戦争なども始まった。


ゼウスは戦争を恐れ、人間に火を与えることを禁じていた。

しかし、寒さに凍える人間をみかねてプロメテウスが火をあたえたのだ。


プロメテウスは、毎日内蔵を鷲についばまれている。だが不死であるため夜のうちに内蔵は再生し、

翌朝には、また鷲に内蔵をついばまれるという、永遠の苦痛を味わっていた。


プロメテウスを見つけたヘラクレスは、プロメテウスの内蔵をついばんでいる鷲を矢で射落とした。

プロメテウス:「やっときたか」

プロメテウスはヘラクレスが来ることを知っているようだった。

ヘラクレス:「俺が来ることを知っていたのか?」

プロメテウス:「私には未来を見る力があってな、長い間、お前が来るのを待っておった。」

ヘラクレス:「では、俺が来た理由もわかるな」

プロメテウス:「もちろんだ、行こう」


ヘラクレスとプロメテウスはエジプトに戻った。

エジプトへの帰り道、プロメテウスから色々な話をきいた。


ウラノスがクロノスに、クロノスがゼウスに、王位を奪われたように、

ゼウスとメティスとの間に子供が生まれると、その子供に王位を奪われるとゼウスに忠告した話。


それを知ったゼウスは、メティスが妊娠したことを知ると、恐れからメティスを飲み込んでしまった話。

メティスを飲み込んだ後、ゼウスは頭が割れるような頭痛がして、本当に頭が割れ、そこから甲冑をきた女神アテナが誕生した話。


ゼウスの頭から生まれたアテナは知恵の神であると同時に戦いの神として英雄に力を貸している話。


ヘラクレス:「じゃあ、俺が聞いている、あの声の主は」

プロメテウス:「そういうことだ」


エジプトについたプロメテウスは、作物の対策に尽力した。

ヘラクレスは、海神ネレウスに道案内をしてもらい、ヘスペリデスの園に向かう。


プロメテウス:「ヘスペリデスは私の兄アトラスの娘達のことだ。一度、兄アトラスにも会ってくれ」


プロメテウスの兄アトラスは、ヘスペリデスの園の近くで天を担いでいるらしい。

なんでも、ティタノマキアの時に大暴れして、さんざんゼウスを苦しめた罰らしい。

アトラスもプロメテウスもティターン族なのだ。


ヘラクレスは海神ネレウスにつれられて、西の果てに向かった。そこにヘスペリデスの園がある。


挿絵(By みてみん)


海神ネウレスは、海流の神オケアノスの娘と結婚していて、ネレウス自身も原始の神々である大地ガイアと海ポントスの子で、どちらかというとティターン族に近い存在だった。


ネレウス:「ヘスペリデスに行ったところで、どうにもならんぞ」

ヘラクレス:「なぜだ?」

ネレウス:「ヘラが百目の竜ラドンを使って見張っているからな」

ヘラクレス:「でも、あなたは黄金の林檎を取ってこられたのだろう」

ネレウス:「ああ、ヘスペリデスの3人娘にエジプトの事情を話して、持ってきてもらったんだ。だが、それが見つかり、ヘラが百目の竜を送ったというわけさ」


百目の竜は、絶えず、どこかの目が開いていて、黄金の林檎を見張っているのだそうだ。


ヘラクレス:「そのヘスペリデスの3人娘は、アトラスの娘って話だよな」

ネレウス:「そうだったな」

ヘラクレス:「先にアトラスに会ってみるか」


ヘスペリデスの園の近くで、アトラスは天を担いでいた。

実際に担いでいるのは、天空を表した大きな模型のようなものだったが、これが実際の天とリンクしているらしい。

ヘラクレス:「これを落としたらどうなるんだ?」

アトラス:「さあな、全員死ぬんじゃないのか?」

ヘラクレス:「それは責任重大だな」

アトラス:「で、何しにきた?」

ヘラクレス:「俺がその天をしばらく担ぐから、あんたには娘さんの所に行って黄金の林檎を取ってきてもらいたい」

アトラス:「お前に担げるのか?」

ヘラクレス:「なんとかなるだろ」


アトラスはゆっくりとヘラクレスに天を渡した。


挿絵(By みてみん)


アトラス:「できそうか?」

ヘラクレス:「ああ、なんとかなぁ」

ヘラクレスの思った以上に天は重たかった。


アトラス:「やはり、お前じゃ無理なんじゃないのか?」

ヘラクレス:「だ、大丈夫だ、だが、本当に天ってのは重いんだな」

ヘラクレスの額からはダラダラと汗が出てきた。


ヘラクレス:「よし、なんとか持てそうだ、早く黄金の林檎を!」

アトラス:「わかった、早めに戻る、お前じゃ長く持てそうにないからな」

ヘラクレス:「クソッ!」


力には自信があったヘラクレスだったが、アトラスの荷の重さを味わい自分の未熟さを知った。


アトラスは久しぶりに自分の娘達と逢い、抱き合った。

そして、黄金の林檎の話をした。

アトラス:「それで黄金の林檎が必要なんだ」

長女:「父さんの話は、わかったわ、でも百目の竜ラドンが見張っているのよ」

次女:「あのラドンをなんとかしないと」

三女:「父さんの力で何とかならないの?」

アトラス:「あの百目の竜を倒すのは俺の役目じゃないな。他に適任者がいる」


ヘスペリデスとアトラスは作戦をたてた。


長女が林檎に手をかけると、ラドンがそれに反応して長女の方を向いた。

まずは、林檎をとって地面に落としてみた。ラドンは動かなかった。

次に、林檎を蹴って、次女に渡した。ラドンは次女の方へ向かっていった。

次女は、三女へ林檎を蹴った。ラドンは三女へ向かっていった。

三女は蹴って、アトラスに渡した。ラドンはアトラスを追いかけた。


アトラスは林檎をもって、ヘラクレスのもとへ走った。


ヘラクレス:「お!や、やっと帰ってきたか」

アトラス:「早く代われ!」

ヘラクレス:「そいつはありがたいな、だが久しぶりに荷がとれたんだ本当はゆっくりしたいんじゃないのか?」

アトラス:「いいから、早くしろ!」

ヘラクレス:「あんたが、そんなに仕事熱心だとは思わなかったよ」

アトラス:「俺もだ」

そう言って、アトラスは黄金の林檎をヘラクレスに渡し、天を担いだ。


ヘラクレス:「娘さんに逢いたくなったら、俺がまたしばらく天を担いでやるよ。」

アトラス:「ありがとよ。お前も急いだ方がいい。百目の竜ラドンが追ってくるぞ。」

ヘラクレス:「なんだって!それで急いでたのか!」


アトラスは笑ってヘラクレスを見送った。

ヘラクレスは、もうダッシュで船へ向かった。


ヘラクレス:「アトラスか・・・、またスゴいのに会っちまったな」


ヘラクレスの船が見えてきた時、ヘラクレスは百目の竜ラドンに追い付かれてしまった。

ヘラクレスは、竜の攻撃を避けながらこん棒で竜の目を潰していくが、すぐさま再生して切りがない。


戦いの最中、一匹の蜂がヘラクレスの目の前を飛んだ。

いや、よく見ると、蜂が数匹飛んでいるではないか。


ヘラクレス:「あれは!」

ヘラクレスは、木の上に蜂の巣があることを発見する。


ヘラクレスは竜の攻撃を避けながら、蜂の巣を叩き落とし、蜂の巣を竜の口のなかに放り込んだ。


蜂が竜の口の中で暴れまわっているのか、胃の中で暴れているのかわからないが、

竜をヘラクレスを追うのを止め、地面の上でもがき苦しんでいた。


この百目の竜ラドンは、黄金の林檎を守った功績として、天に上げられ、りゅう座となった。


ミケナイに帰ってきたヘラクレスは、ミケナイ王に黄金の林檎を渡した。


ミケナイ王:「これが黄金の林檎か、すごい品物だな」

ミケナイ王は、黄金の林檎を一通り眺め終えると、ヘラクレスに返した。


ヘラクレス:「いらないのですか?」

ミケナイ王:「その林檎は女神ヘラの持ち物だと聞く、神の持ち物を取るわけにはいかない」


ヘラクレスは内心「じゃあ取りに行かせるなよ」と思ったが、持ってくるのが俺の仕事と言い聞かせた。

そして、もし百目の竜ラドンが生きていて、ミケナイまで追ってきたら楽しかっただろうに、と考えた。


ヘラクレス:「それで、最後の試練は?」

ミケナイ王:「その事だが、まだ考えついていなくてな、しばらく自由に暮らしておればよい」

ヘラクレス:「わかりました」


ヘラクレスが、返された黄金の林檎をどうしよかと迷いながら、片手でお手玉のように放り投げていると声が聞こえた。

「その林檎は私からヘラ様に返しておくわ」ヘラクレスの手の上から、林檎が消えていった。


ヘラクレス:「あんた女神アテナなんだろう」

返事はなかった。


ヘラクレス:「神に問うてはいけないだったか?神を試してはいけないだったか?忘れたが聖書に書いてあった気がするな。いやそもそも、この時代は聖書ができる、何千年も何万年も前の世界だったな」


確か、プロメテウスは3万年磔にされていたと言ってたし・・・。


ヘラクレス:「でも、これだけは言っておかないとな・・・」


ヘラクレスは、大きく息を吸って叫んだ。

ヘラクレス:「女神アテナ!いつも俺を助けてくれてありがとう!」

突然、大声で叫んだヘラクレスに、ミケナイの人々は、頭のおかしい人を見るような顔をしていた。



何日か経った頃、ヒュラスがヘラクレスを訪ねてきた。


ヒュラス:「王子イアソンが金羊毛皮を取りに行くアルゴ号の船員を集めてるんだって」

ヘラクレス:「金羊毛皮ってのはなんだ?」

ヒュラス:「黄金の羊の毛皮のことですよ。いろんな英雄が集まって来るみたい」

ヘラクレス:「面白そうじゃないか、次の試練も決まってないし行ってみるか」


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