アマゾンの女王の腰帯
アマゾンの女王の腰帯を欲しがっていたのは、ミケナイ王の娘アドメーテだった。
その腰帯は、もともと軍神アレスの物だったが、はじめてアマゾネス達を統一した現女王ヒッポリュテに贈られた物だ。
噂によれば、ヒッポリュテは軍神アレスの娘でもあるらしい。
ヘラクレス:「息子の次は、娘か・・・。」
そして、アマゾネス達をまとめ上げた最初の女王となると簡単にはいかなそうだ。
ヘラクレスは、仲間を集めることにした。
まずは、クレタ島で一緒に戦ったポセイドンの息子テセウス。
テセウス:「こんなに早く、また一緒に冒険が出来るとは思っていなかったよ。」
ヘラクレス:「俺もだ。仲間が必要と思ったときに、一番にあんたが頭に浮かんだよ。来てくれてありがとう。」
ヘラクレスは手を差し出し、テセウスと握手した。
そして、荒くれ者のテラモンと、その弟のペレウス。
テラモン:「ヘラクレスさん、俺はあんたの噂を聞いて一度会ってみたいと思ってたんだ。こっちは弟のペレウス」
ペレウス:「はじめまして、一緒に旅ができて光栄です。」
ヘラクレス:「こちらこそ、来てくれてありがとう。俺はあんたらの事をよく知らない、少し教えてくれないか?」
二人は顔を見合わせ、言いにくそうに切り出した。
テラモン:「俺たちは、もともと王族だったんだが、殺人の罪で国を追われてな・・・」
ペレウス:「あれは、事故だったんです。」
話によると、二人は誤って異母兄弟を殺してしまったらしい。
ヘラクレス:「殺人?この世界ではよくあることさ。」
実際にそうだった、この世界では、策略にはまり殺したり、殺されたり。
今の俺も、ミケナイ王に無理難題を押し付けられ、あわよくば死んでくれと思われている。
まぁ、今では、これはこれで楽しいと思ってはいるがな。
ちなみに、このテラモンとペレウスは、父方がゼウス、母方がポセイドンの血を引くそうだ。
最後は、ネメアの獅子だった。
ネメアの獅子:「あの後、巨人に喰われたかと思っていたが、元気そうで良かった。ガハハハハ!」
ヘラクレス:「お前は、相変わらずだな。」
ネメアの獅子が来るんだったら、あのキマイラも逃がさずに飼っておけば良かったとヘラクレスは思った。
ヘラクレスたちは船で黒海へ向かった。
アマゾネスの支配している黒海近くの港にたどり着くとアマゾネス達が岸で待ち構えていた。
ヘラクレス:「早速、お出でなすったか」
アマゾネス達は、ヘラクレスたちに気がついているにも関わらず、弓を構える様子はなかった。
テラモン:「俺たちに気がついていないのでは?」
ヘラクレス:「こいつが乗ってたら気がつくだろう」
ヘラクレスは親指をたて、後ろにいるネメアの獅子を指した。
ペレウスは苦笑し、ネメアの獅子は、何の話をしているのか気がついていなかった。
テセウス:「すこし様子が変ですね、私が見てきましょう」そういってテセウスは海に飛び込んだ。
しばらく、船で待っているとテセウスが水面から顔を出し手を振った。どうも大丈夫らしい。
ヘラクレスたちは上陸し、アマゾネス達のいる中を案内される。
臨時に立てられたテントの中には、アマゾンの女王がいた。
女王:「私はヒッポリュテ、アマゾンの女王の一人だ。」
ヘラクレスたちは顔を見合わせた。
ヘラクレス:「どういうことだ?」
ヒッポリュテ:「アマゾンには3人の女王がいるのだ、私と妹のアンティオペ、それと一番下のペンテシレイアだ」
ヘラクレス:「俺はあんたの持っているアレスの腰帯をもらいに来たんだ、渡してもらえるなら争う気はない」
ヒッポリュテ:「脅しというわけか、だがアマゾンは脅しには屈しない。」
ヘラクレス:「そうだな、俺の言い方が悪かったな。」
ヘラクレスがなんと言うか考え込んでいると、テセウスが代わって言った。
テセウス:「アレスの腰帯を頂きたいのですが、どうすれは譲って頂けるのでしょうか女王様」
ヒッポリュテ:「おまえはヘラクレスより、賢いのだな」
ヘラクレス:「こ、このやろう・・」
テラモン:「ヘラクレスさん、落ち着いて」
アマゾンの女王に殴りかかろうとしているヘラクレスを、テラモンとペレウスが両脇を抱えて止めていた。
ネメアの獅子は、その様子をみて大笑いしていた。
ヒッポリュテは、ヘラクレスの体を見て条件を突きつけた。
ヒッポリュテ:「ヘラクレス、お前の強さはよく知っている、私はお前との子供が欲しい」
どうやらアマゾンの女王は、ヘラクレスとアマゾネスとの間に子供を作り、アマゾネスをもっと強力にしたいと考えているようだ。
ヘラクレス:「悪くない条件だ」
ヒッポリュテ:「それから、そこのお前」アマゾンの女王は、テセウスを見て言った。
ヒッポリュテ:「お前も気に入った、私の妹アンティオペに会うがいい」
そういって、奥の部屋に入っていくヘラクレスとヒッポリュテ
テラモン:「ちょっと待ってくれよ女王さん、俺たちはどうすればいいんだ?」
残された、テラモンとペレウスは、恨めしそうに女王を見つめた。
ヒッポリュテ:「お前達は他の者が相手をする」
女王がそういうと、アマゾネスがテラモンとペレウスをそれぞれ連れ出した。
テセウス:「じゃあ、私は妹のアンティオペさんにでも会ってきますか」
テセウスはアマゾネスに道案内をしてもらいアンティオペの所にむかった。
ネメアの獅子:「お盛んなことで」ネメアの獅子はヤレヤレといった表情をした。
アマゾネス達は、残されたネメアの獅子の相手をしようとしたが、
ネメアの獅子:「俺は人間の女になぞ興味ねえよ、とっとと失せろ喰っちまうぞ!」
そう言って、外に出ていった。
天上界では、侍女のイリスが、ゼウスの正妻ヘラに地上での出来事を報告していた。
イリス:「ヘラ様、お話ししたいことが・・・」
ヘラ:「何事だ」
イリス:「お怒りにならないで聞いてくださいね・・・」イリスはオドオドしていた。
イリス:「・・・」
ヘラ:「早く言え!」
イリス:「ヘラクレスがアマゾネスとの間に子供を作ろうとしております。」
ヘラ:「なんだって!ヘラクレスとアマゾネスの子なんか出来たら世界のバランスが崩れるぞ!」
ヘラは慌てて着替えだした。
イリス:「どこへ行かれるのですか?」
ヘラ:「下界だ」
イリス:「ヘラ様、自らですか?」
ヘラ:「お前も一緒に来い!」
ヘラとイリスはアマゾネスに変装して、アマゾネス達に紛れ込んだ。
イリス:「これからどうされるんです、ヘラ様」
ヘラ:「まぁ見ておれ」
ヘラは、末っ子女王のペンテシレイアの所にいって告げた。
アマゾネス(ヘラ):「ヘラクレス達が他の女王を連れ去ろうとしております」
ペンテシレイア:「そんなはずはあるまい、もしそれが本当ならアマゾネス達が黙っているはずがない」
アマゾネス(ヘラ):「本当でございます。これをご覧ください」
そういうと、ヘラはイリスに水鏡を持ってこさせた。
アマゾネスの占い師:「ペンテシレイア様、ご覧ください」
ペンテシレイアが水鏡を覗き込むと、ヘラクレス達がアマゾネス達と戦い、女王をさらっている映像が写し出された。
ペンテシレイア:「ば、馬鹿な!」この映像を信じることが出来ないペンテシレイアだったが、ヘラの魔術により、これが事実だと思い込んでしまう。
ペンテシレイア:「兵を挙げよ!」
末の女王の命令により、アマゾネスの軍が結成される。
ペンテシレイア:「姉上達を助けにいくのだ!」
ネメアの獅子は、川沿いを歩いて時間を潰していた。
ネメアの獅子:「俺は人間の交尾なんか興味ないっつうの、どっかに可愛いライオンちゃんはいないかなぁ」
ドドドドドド・・・
何かが駆けてくる音が聞こえる。
ネメアの獅子:「こ、これは蹄の音だ、それも結構な数」
ネメアの獅子は、ヘラクレスのもとへ走った。
ネメアの獅子:「女なんか抱いてる場合じゃないぞ!」
ヘラクレスのもとへ着いたネメアの獅子は、テントの外で咆哮をあげる。
グゴォォー!!
ヘラクレス:「な、なんなんだいったい!」外に出ていくヘラクレス
ネメアの獅子が状況を説明している間に、ヘラクレスとネメアの獅子はアマゾネスの軍隊に囲まれていた。
矢の雨が、ヘラクレスとネメアの獅子を襲う
ヘラクレス:「謀られたか」
ヘラクレスは女王ヒッポリュテの罠にはまったと思った。
だが文字通り、丸裸のヘラクレスはどうすることも出来なかった。
ネメアの獅子は、その頑丈な毛皮で、矢など物ともしない。
盾となって、ヘラクレスを守った。
ネメアの獅子:「お前がここで死ぬと、俺の楽しみが無くなるからな」
ネメアの獅子は矢に打たれながら、笑って見せた。
ヘラクレス:「ヒッポリュテ!これはどういうことだ!」
ヘラクレスはテントの中にいるヒッポリュテに向かって叫んだ。
ヒッポリュテも事の異変に気がつき、ローブをまとって外に出た。
ヒッポリュテ:「みなのもの!どうしたというのだ!」
女王の声に、攻撃の手が止まった。
しかし、遅れて飛んできた一本の矢がヒッポリュテの胸に刺さった。
倒れる女王の姿に、ざわつくアマゾネス達。
アマゾネス(イリス):「ヘ、ヘラ様?」動揺してヘラの顔を見る。
アマゾネス(ヘラ):「私のヘラクレスに手を出すからよ」ヘラの弓の弦は揺れていた。
ヘラクレス:「こ、これはアマゾネス達の女王争いかなにかか?」
ネメアの獅子:「さあな、今のうちにずらかるぞ!」
ネメアの獅子の、こういった時の判断力は、素晴らしかった。
ヘラクレスはネメアの獅子にまたがり、船へ向かった。
この争いは、アマゾネス達のあいだで、アマゾンの女王争いという噂が広まった。
ヘラクレス:「ちょ、ちょとまて帯だ帯、アレスの腰帯」
ネメアの獅子:「ああ、世話が焼ける」
ネメアの獅子は逆戻りして、テントの中に入っていった。
ヘラクレスは服と帯をとって、ネメアの獅子にまたがった。
ネメアの獅子:「俺は、お前の馬じゃねえっつうの!」
ネメアの獅子は、アマゾネス達を避けるため遠回りをして港についた。
そこには、テラモン、ペレウスが待っていた。
ヘラクレス:「2人とも無事で良かった。テ、テセウスは?」
ヘラクレスがテセウスを心配すると、テラモンが顎で船の陰を指した。
見るとテセウスがアマゾネスと抱き合っていた。
このアマゾネスが、妹女王のアンティオペらしい。
姉女王の死と、末っ子女王の反乱、妹女王は末っ子女王と争う気はなく、テセウスと一緒に外の世界へ出ていくそうだ。
ヘラクレス達は、こうしてアマゾネス達の勢力圏を出ていった。
ミケナイに戻る船の中で、ヘラクレスは思うことがあり口を開く
ヘラクレス:「ちょっと寄りたい所があるんだが、いいか?」
テラモン:「どこへいかれるんです?」
ヘラクレス:「トロイアだ、そこに神馬がいるんだ」
ペレウス:「大神ゼウスがトロイア王の息子を気に入って天上界に上げ、その代償として与えられた馬のことですね。」
ヘラクレス:「詳しいんだな、俺も以前、ケイロンというケンタウロスの賢者に聞いたことがあったんだ。」
テラモン:「でもヘラクレスの旦那には、ネメアの獅子がいるじゃありませんか」
ネメアの獅子:「アホか!俺はこいつの馬じゃねぇ!」
ヘラクレス:「そういうことだ、乗り物はあまり好きじゃなかったんだが、アマゾネスの一件で必要性を感じてな、それにネメアの獅子は、たまたま今回の冒険に参加しただけだ。俺は俺の馬が欲しくなってな」
ヘラクレスたちの船はトロイアへと向かった。
トロイアへ着いたヘラクレスは、トロイアの悲惨な状態に驚いた。
町では疫病がはやり、海が荒れた時は高潮に乗って怪物が現れ人々を喰うらしい。
テラモン:「こいつはひどい状況ですね」町から戻ったテラモンがみんなに伝えた。
ヘラクレス:「疫病も蔓延してるようだし、上陸するのは限られた人数にしよう」
テセウス:「すみませんが、私は船に残ってアンティオペを見ています」
ヘラクレス:「そうしてくれ、彼女にはお前が必要だし、お前はポセイドンの息子だ、海の方が安全だろう」
ネメアの獅子:「俺も今回は船でゆっくりさせてもらうぜ」
ヘラクレス:「獅子が町中をうろついたら騒ぎになるからな」
ネメアのシシ:「そういうことだ」
ヘラクレス:「じゃあ、テラモンとペレウスは一緒に来てくれ」
町の人の話では、トロイア王は城壁を築く時、多くの人々を働かせたが報酬を支払わなかったらしい。
それに抗議した2人の男が、トロイア王に前に出て訴えた。
するとトロイア王は、2人の腕を縛り、耳を切り落とそうとした。
ヘラクレス:「傲慢と噂されるトロイア王ならやりかねないな。」
テラモン:「ところが、その2人の男というのが、アポロンとポセイドンだったんです」
ヘラクレス:「・・・アポロン!」
ヘラクレスはアポロンと対峙した時のことを思い出す。
ペレウス:「それからどうなったんです?」
テラモン:「怒った2神はトロイア王を悔い改めさせるため、アポロンが疫病を、ポセイドンは怪物を送り込んだんだ」
ヘラクレス:「アポロンって疫病とかも発生させられるのか・・・」
ヘラクレスは頭の中で対アポロン戦を想像していた。
ペレウス:「えっ、そ、そこですか?」
テラモン:「疫病は城の医者達が対応して少しずつだが治まってきているが、問題は怪物の方で・・・」
ペレウス:「何か解決策はないんですか?」
テラモン:「それが、トロイア王が神託を賜ると、お姫さんを怪物に捧げれば救われると言われたらしい」
ペレウス:「怪物なら私たちで、なんとかなるのでは?」
テラモン:「それは、ヘラクレスの旦那次第だと思うぞ」
テラモンとペレウスはヘラクレスの方に目を向けたが、ヘラクレスは頭を抱えて呟いていた。
ヘラクレス:「・・・アポロン・・どうやって・・・アポロンを・・・」
テラモンとペレウスはヘラクレスの気を取り直させて、トロイア王の城へ向かった。
ヘラクレス:「そうだな、この程度の怪物を倒せないようでは、アポロンに笑われてしまうな」
トロイア王ラオメドンの前にやってきたヘラクレスは言った。
ヘラクレス:「トロイア王、私が怪物を倒してみせましょう。その報酬として神馬を頂きたい」
トロイア王:「そ、それは大丈夫じゃが、いくらヘラクレスと言えども、あの化け物は倒せまい」
ペレウス:「お言葉ですが、ヘラクレスは大神ゼウスの子、きっと倒せます。それに倒せなければ、お姫様が生け贄になるのでは?」
トロイア王は、娘ヘーシオネに目をやった。
ヘーシオネはうつ向きながら話した。
ヘーシオネ:「それが天命なら従うしかありません」
なんとも健気なお姫様の姿をみてテラモンが言った。
テラモン:「大丈夫です。怪物はきっと私たちが倒して見せます」
いつもと違うテラモンの様子に、ペレウスは気がついた。
どうやら、テラモンはこのお姫様に恋をしてしまったようだ。
城を出た、3人は怪物退治の方法について語った。
テラモン:「町の人たちの話によれば、大きなタコかイカの様な怪物だそうだ」
ペレウス:「クラーケンっぽいですね。」
ヘラクレス:「なんでもいい、とっとと倒して神馬を頂いて帰ろう」
ペレウスの提案で、町中の銛や槍が集められた。
ペレウス:「クラーケンを相手に、この銛や槍が通用するかわかりませんが・・・」
テラモン:「すでに兵隊達が試してそうだもんな」
ヘラクレス:「まぁ、やってみるしかないだろ」
嵐が近づいてきた。
ヘーシオネ姫は鎖で岩場に繋がれる。
テラモン:「なんてこった、なんとかしないとな」
ペレウス:「私たちが失敗した時のための最終手段ですか」
ヘラクレスは、矢にヒュドラ毒を塗っていた。
ヘラクレス:「そっちの槍にも塗っておくといい、もうあまり無いがな」
テラモン:「こいつはありがたい」テラモンが慌てて毒をとろうとする。
ヘラクレス:「注意しろよ、それで一人ケンタウロスが亡くなっている」
テラモンは顔をひきつらせてうなずいた。
海底から巨大な触手が出てきた。
ヘラクレス:「こりゃ相当でかいな」
ペレウスの合図で一斉に銛や槍がクラーケン目掛けて飛んでいく。
だが、ほとんどの銛や槍はクラーケンの皮を突き破ることは出来なかった。
ヘラクレスはわずかに刺さった銛や槍を足場にしてクラーケンの体を登っていく。
そしてクラーケンの眉間の辺りにヒュドラの毒が塗られた矢を押し込んだ。
恐ろしいほど大きなうめき声と、巨大な触手が暴れまわり、岩場を破壊する。
テラモンはヘーシオネ姫が気になり、盾をもってヘーシオネ姫のところに向かった。
クラーケンは、触手でヘラクレスを掴み、海の中へと沈んでいった。
大きな水しぶきが何回か上がったが、ヘラクレスもクラーケンも姿をあらわさず日が暮れた。
それから3日経ってもヘラクレスは帰ってこなかった。
クラーケンも姿をみせない。
ネメアの獅子:「あいつのことだから大丈夫じゃねーの?」
ペレウス:「今も海のなかで戦ってるのでしょうか?」
テセウス:「私が見てきましょう」そういってテセウスは海に飛び込んだ。
テラモンは、ぼーっとヘーシオネ姫のことを考えているようだった。
ちなみに、ヘーシオネ姫は無事に城へ戻っている。
小一時間くらい経った頃、テセウスが戻ってきた。
テセウス:「ヘラクレスは無事でした!クラーケンも倒しています」
ペレウス:「さすがに海の中の情報は早いですね、でヘラクレスさんは?」
と、言うと同時に、後ろから、頭に布を巻いたヘラクレスが現れた。
ネメアの獅子:「お前、どうしたんだその頭」
テセウス:「いやぁ、色々とあったみたいで・・・」
ヘラクレスは、頭の布をゆっくりと取った。見るとあるはずの髪の毛が全て無くなっていた。
話によると、あの後、クラーケンに食べられ、胃の中で暴れまわり、クラーケンを倒したらしいのだが、その時、クラーケンの胃酸かなにかで毛が全て抜け落ちたのだそうだ。
ネメアの獅子は笑い転げ、テラモンはヘーシオネ姫の事を忘れるほど驚き、アマゾンの妹女王アンティオペも少し笑っていた。
ヘラクレスはクラーケンを倒した後、すぐに帰ってこようと思ったらしいのだが、この頭の事で、なかなか帰ってこれなかったらしい。
それをテセウスが見つけて説得したというわけだ。
みんなに頭の事を見せたヘラクレスは、気持ちがスッキリしたらしく。気を取り直して言った。
ヘラクレス:「トロイア王から神馬を貰ってくる」
トロイア王の前に出た、ヘラクレスだったが、トロイア王は神馬を渡すことを渋った。
トロイア王:「ワシの知っているヘラクレスは髪の毛がフサフサじゃった、おまえがヘラクレスだとは思えん」
ヘラクレス:「ですから、怪物の胃のなかで髪の毛が溶けたんです」
トロイア王:「それに怪物を倒したという証拠もない」
ヘラクレス:「約束を反故にするつもりですか?」
トロイア王:「だから何度もいっているではないか、お前がヘラクレスであり怪物を倒した証が欲しいんじゃ」
ヘラクレス:「もういい!」
ヘラクレスは思い出した、そうだったなトロイア王は、アポロンとポセイドンの約束も破ったやつだった。
ヘラクレスたちは、ミケナイに戻り別れた。
テセウスはアマゾンの妹女王アンティオペと結婚するそうだ。
テラモンとペレウス兄弟は、また別の冒険に出掛けるらしい。
ネメアの獅子は、一人荒野で面白いことでも探して暮らすという。
ヘラクレスは、ミケナイ王にアマゾンの女王の腰帯を渡した。
ミケナイ王は、ヘラクレスの頭を見て笑ったが、もうそんな事は気にならなかった。
城の外で待っていると、兵隊がやって来た。
ヘラクレス:「次の試練は?」
兵士:「ゲリュオンの飼っている牛の群れを連れてきてください」
ヘラクレス:「今度は牛の群れか・・・でゲリュオンって誰?」




