僕が見ている君
『どれだけ泣いても楽になれないから』
そう言って君は穏やかな笑みを浮かべた。
『嘘つき』
言えたらどんなに良かったのだろう。
君が、人一倍泣き虫で、努力家で、感受性豊かで、優しくて、触れたら壊れそうなくらい繊細な事を僕は知っていたのに。
ただ、唇を噛んで君の言葉を受け入れることしか出来なかった。
本当はいつだって泣きたいくせに。
いつも自分のことは後回し。
辛いことも苦しいこともたくさんたくさんあったはずなのに、悲痛なくらいやさしい笑顔で
『大丈夫だよ』
何が大丈夫なんだよ。
勝手に周りに劣等感抱いて、どんなに理不尽なことも自分のせいだって抱え込んで、
世の中の不幸全部自分が引き起こしたみたいな顔して、弱い自分を否定して嫌って馬鹿みたいに道化師の仮面かぶって。
君は馬鹿だよ。
泣けばいいのに。
『たすけて』
ってその仮面壊して、ぐちゃぐちゃになった顔晒して誰かにすがればいいのに。
変な所で強がりで。
人の気持ちに敏感なくせに、気ばっか使ってるくせに、僕の気持ちになんか気づきやしない。
君は大馬鹿だ。
そんな君だから、手を伸ばして触れたくなる。抱きしめて『もう大丈夫』って言いたくなる。なにを犠牲にしても守りたくなる。
惚れた弱みだよね。
君はそんな僕の気持ちに気づくことなんてないだろうけど。
いつだって君の瞳に僕はうつらない。
君の苦しみや悲しみに、なんにも気づいてないアイツがいつだって君の瞳にうつっている。
アイツに惹かれるのも分かるけどね。
太陽みたいにあったかくて、傍に居ると
無意味で無価値な自分の存在を忘れることが出来る。
でも譲りたくないんだ。
君の幸せが一番と言えるほど、僕は強くもないし大人でもない。
たったひとりの愛する人を手に入れたいと願う、ただの恋する男なんだ。
だから、君の全部を僕に見せてよ。
何があっても、君がどうであっても、
僕は君だけを愛し続けると誓うから。
どんな君でも、ぜんぶぜんぶ受け入れる。
そのままの君を愛するから、
僕の手を取って。
まだ大丈夫。
まだ待てる。
ずっと待ってるから。
君が僕を見てくれるまで。
大好きだよ。