雷とぬいぐるみ/あめだま
――「美春先輩!お疲れさまでしたー!
夏海!また明日ねー!」
部活の反省会も終わり、友達は帰っていった。さぁ、帰ろうかと準備をしていたのだが…。
彼女、美春は外を見てこう呟いた。
――「なんか、雨降りそうな天気やなぁ…?
夏海、傘持ってきた?」
――「え?今日は晴れるって聞いてたから持ってきてないよ?
美春は持ってきてるの?」
答えを聞く前に、雷鳴が響いた。
私は雷が嫌いだ。雷の音を聞くたびに震えてしまう。
そんな私の姿を見て彼女はクスッと笑っていた。
――「ほんま、夏海はカミナリが嫌いやなぁ。
ほら、こうしたら、少しは怖いのも紛れるやろ?」
そう彼女は言うと手を私の手に重ねてきた。
――「美春だってそうじゃんか…。
一つ年が上だからっておねぇちゃんぶっちゃって…。」
彼女も雷は嫌いな筈だ。何故なら彼女の手も雷鳴が響く度に小さく震えているのだから。
――「夏海よりかは、ましだよ?
私は夏海の側にいるから怖いのも飛んでっちゃったよ。
夏海の前じゃ先輩ぶってても、意味ないし…。」
彼女はみんなの前では良き先輩だが二人っきりになると、よく、甘えてくる。
だから、二人っきりの時は先輩って言わずに『美春』って呼ぶんだ。付き合い始めた時から変わっていない呼び方だ。
――「夏海、ちょっとこっち向いて」
何かを思い付いたように、悪戯っ子のような笑みで私を呼ぶ。
振り向くとそこにはキーホルダーのくまがいた。
――「夏海ちゃん雷怖いのかな?なら僕が一緒にいるよ。僕と一緒なら怖くないよ。
なんてね、誕生日もうすぐでしょ?近いうちに渡そうと思って持ってきてたんだ。まさか今日渡すことになるとは思って無かったけどね。」
キーホルダーのくまになりきって、美春は私を励まそうとしてくれた。思わず泣きそうになったのだが、私も美春に渡す物がある。
――「美春ちゃん。夏海はもう雷は怖くないって。美春ちゃんがいてくれたお陰だよ。
ふふ、美春にも誕生日プレゼント。自分の誕生日忘れてたでしょう?うさぎのみーくんだよ。美春の事を私の代わりに守ってもらうんだ。」
お互いの誕生日が近い事もあり、プレゼントを交換しあった。
外をふと見ると雷も、雨も、止んでいた。
お互いに顔を見合わせて、『帰ろうか』と呟いた。
――「せーんぱい!ふふ。大好きだよ。」
彼女は驚いた表情をしたのだが、段々と笑い小さな声で
――「私もだよ。こーはい。」
そう呟いた。