どうして、私だけ
――どうして、私だけ――
周りのみんなは楽しそうに笑っていて
私だけが 暗い顔して俯いている
――どうして私だけ、こんな目に遭わなくちゃいけないの――
何度 問いかけたことだろうか
だけど だれも答えを返してくれる人なんかいない
私の問いに答えてくれる人はいない
――どうして私だけ、こんなに苦しいの――
苦しかった もう何もかもが嫌だった
助けてほしいとどんなに願っても 救われない
絶望が私の心の中を染めた
この苦しみを断ち切る手段を私は知らなかった
――どうして私だけ、独りぼっちなの――
あの子の周りには いつもたくさんの人がいる
私の周りには いつも……だれもいない
周りを見渡したって 私だけが独りぼっち
平気な顔をしてみんなは私を避けるんだ
ううん みんなだけじゃない 先生も一緒だ
――どうして私だけ、気付いてもらえないの――
”先生は、いつでもみんなのことをよく見ているから”
どの口が言っているの? どうしてそんなことが言えるの?
”嫌なことがあったら、すぐ相談してね”
私の言葉なんて 聞いてくれたことないじゃないか
わざとらしく苦しいふりをしている人にしか気付かない
本当に苦しんでいる私には気付かないんだろう
――どうして、どうして、どうして、私だけがッ……――
この苦しみを断ち切る手段が 一つだけあるじゃないか
こんな腐った世界なら もう 私ごと消えてしまえばいいんだ
そう思った なのに
「おはよう」って
「ありがとう」って
「さようなら」って
みんなは私にも 優しくそう言ってくれた
当たり前のように 他のだれと接するときとも同じように
本当は私が耳を塞いでいただけなんだ
いつだってみんなは 私にも同じように接してくれた
――どうして、私だけ――
勝手に 自分の壁を周りの人のせいにしていただけ
みんなだって自力で越えてきた壁なんだ
私がいつまでも逃げ続けてきただけ だったんだ
私だけじゃなかった
苦しいのは 私だけじゃなかったんだ
そう思うだけで 心が楽になっていくのを感じた――