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居候悪魔  作者: 天音詩音
第一章 居候悪魔
3/6

第二話 共同生活

チュンチュンと小鳥の心地よい囀り…、


が聞こえる筈もなく、今日は朝から大吹雪だった。


「寒い、こ、凍る」


もぞもぞと、温もりを求めてベッドの中を這い回る少女、ルナ。


「あったかい…」


隣に温もりを感じ、体を寄せるが。


寝惚(ねぼ)けた頭でルナは考えた。



ナゼ、一人で寝ていた筈のベッドに、自分以外の温もりがあるのか。



温もりの正体は薄々感付いていた。


ボッサボサの赤い髪。

黒い長袖のTシャツ。

無駄に整った…、


そこで少女は毛布を(ひるがえ)し、どこかへと駆けて行った。


「…さみぃ…」


一人残された悪魔の男、ウィルは、寝ぼけ(まなこ)で毛布を引き寄せると、二度寝を開始したのだった。









「まだ怒ってンのかよ」


「…」


朝の食卓の場にて。


少しバツの悪そうな顔をしたウィルと、無表情のルナが居た。


「勝手に入って来られるのは、困る」


「しょーがねーだろ、寒かったンだから」


はぁぁ、とルナが重々しい溜息を吐く。


単細胞(たんさいぼう)…」


「ああ!?」


ちょっと小馬鹿にした様なルナの呟きに、ウィルが目敏(めざと)く反応する。


「寒いなら、最初からそう言えばいいのに」


昨日の晩、ルナは寒いだろうから、一緒に寝るかと平然と提案したのだが、慌てた様子のウィルは、オレ様は悪魔の頂点に立つ男だから寒さには屈しねェ!とか何とか言って、ソファで寝てしまったのだ。


「朝、いきなり隣に誰か居たら、うっかり脳天割りをしてしまいそうになる」


「わかった、次から事前に言っとく」


悪魔の頂点に立つ男は、小心者だった。


「それにしても、悪魔も食事するんだね」


「人間界に居ると、体力の消耗(しょうもう)が激しいンだよ、だから腹が減る。魔界に居れば数ヶ月は保つ」


「へー、魔界。…じゃあ何でわざわざ人間界に?結局、魂も食べてない」


ルナは朝食の食パンにジャムを塗りたくりながら、質問する。


「それは…あれだ…その、久しぶりに人間の魂でも喰いに行くか的なだな…」


ごにょごにょと、歯切れの悪い受け答えをするウィルに、ジャムを塗りたくりながら、ルナは首を傾げる。


「それに、どうして魔界に帰らないの?行くところがないって言ってたけど」


「それは…その、色々と帰れない事情があってだな…」


更に口篭(くちごも)るウィル。


「あー!もうオレ様の事はどうでもいいだろーが!それよりも…」


話を強引に切り上げ、ジャムを塗りたくるルナを見る。


「今はテメーのそのジャムの方が問題だ」


「…?」


「自覚ナシかよ…テメーなぁ…どんっだけジャム塗りまくってンだ!見てるコッチが胸焼けしてくンだよ!」


「この上にハチミツもかける」


「うっ…」


信じられないという風に口を抑えるウィル。


「美味しいのに」


少女は無表情で、大量のジャムとハチミツを塗った食パンを頬張った。









「そーいえばよ、この家にはテメー以外誰も住ンでねェのか?」


一通り家の中を見物し終えたウィルは、そう少女に問いかける。


「住んでない、私一人」


「一人で今までどうやって…」


「親、海外、仕送り、私、ハーフ」


「は?」


朝食を終えてからというもの元から口数の少ないルナが、断片的というか、本当に必要最低限のワードしか言わなくなっていた。


今のは訳すと、親は海外に住んでおり仕送りをしてくれている、自分はハーフだ。


「テメー、さっきから目が半開きだが、まさか…」


「…」


「おい」


「……」


「ルナ!」


「っ!」


びくりと肩を揺らし、ルナは顔を上げる。


目が虚ろだった。


「テメー、立ったまま寝てやがったのか…」


「寝る」


ウィルの言葉を無視し、一言それだけ言い放つと、ルナは規則正しい動きで寝室で向かい。


「…zzZ」


「マジで寝やがった…」


ウィルは愕然(がくぜん)と呟く。


「おいテメー起きろ!オレ様がヒマだろーが!」


「…zzZ」


「おいルナ!テメー起きなかったらこのまま喰うからな!」


「…zzZ」


「ほ、本当だからな!嘘じゃねェ!オレ様は本当のことしか言わねーぞ!」


「…zzZ」


「おい、頼むから寝るなって…」


「…ZZZ」


「…」










5時間後、目を覚ましたルナが見たのは、体育座りでいじけている悪魔の姿だった。





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