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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
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ボーダーラインを超えてしまった俺の話

作者: 志成乃

『あたしもね、凄くあなたのことが好き。』

『それじゃあ私達……両想いなんだ。』

『……うん……嬉しいッ……!!』


カチ。軽いタッチ音で俺は画面から指を遠ざけた。……出来た。俺とアイツとの小説。俺たちの書いた小説は、普通の小説じゃない。一部の人は非難の目で見るだろう。だけどそれでいい。この小説は誰のために書いたわけでもない。俺とアイツが好きな、女同士の恋愛……言わば"百合"を自給自足したいがために、自分たちの自己満足をしたいがために書いた、正真正銘"俺達"の為の小説だ。分かりやすく言えば、とある人の名言をお借りしてこう言えるだろう。"俺達の俺達による、俺達のための小説"だと。


「おはよ」

「はよー。出来たぜ、例のアレ」

「マジ?さーんきゅ!」

「完全なる自己満の塊だぜ」

「いいんだよ。にしても助かったわ、俺んちパソコンねーからさ」


アイツ……理玖は誰でも投稿できるネットの小説サイトにログインして、下書き扱いになったものを読む。目が動く、手が動く。だんだんと口角が上がっているのを止められないのか、理玖は口元を押さえつけて周囲にバレないように必死のようだ。


「あー!!ほんっと、お前すげぇわ。ご馳走さん!」


ご満悦を顔に表して俺のことを見上げた。


「いやいやー、ネタを出してくれたのは理玖の方だし」

「でもそれを小説にしてくれたのは尚生だって。感謝してる」

「もっと褒めてみ」

「お前の小説好きだわ」

「どやー」


これが、今までの日常だった、筈なのに。


――――――


俺こと尚生と、アイツ……理玖は中学の部活仲間だ。クラスは違えど、部活で一緒になり高校も一緒になった友達だ。俺たちの代は人数が多く女子のようにグループがわんさかと出来たが、あるグループのメンバーの中に理玖がいた。そのグループは所謂オタクが集まった連中で、帰りや休憩時間は大声を出さないようにアニメの話に花を咲かせたものだ。ただオタクにも色んな種類があって、百合を好きなのは俺と理玖だけだった。そこから話は盛り上がる盛り上がる。これからもっと話そうな、ついでに目の保養もしような。二人して共学の高校を選び、無事入学したのであった。


「で、ここで郁香が比呂美に言うわけだ。あたし達は変わり者だと」

「おうおう。からの?」

「比呂美も頷きながら、抱きしめ合うんだ!」

「あああ比呂美可愛すぎてやべぇ」


小説の主人公兼ヒロインは、比呂美と郁香。クールだけど一途に比呂美を愛し実は肉食系な郁香、因みに左。あざと可愛いけどいざという時に男前になる比呂美、因みに右。俺が郁香を考えた。そうしたら理玖は比呂美を考えた。いつの間にか二人が恋愛関係になっていて、小説を書き始めた。


「"ふみひろ"か、普通にいい響きじゃね?」

「郁香が完全に比呂美に依存してるよな」

「依存系女子ふみふみか、たまらん」

「ふみふみの歪んだ愛を受け入れるひろひろか、たまんねぇな」

「なんだかんだで相思相愛なんだろ分かります」

「リバでもいけるな」

「それな」

「ひろひろが狂愛チックになってもいいな」

「ふみふみがひろひろ襲ってたらいいな」

「俺たちの夢が詰まってる」

「ふみひろの事考えて毎日ニヤニヤしてる助けて。ネタくれ」

「俺の脳内に任せてくれ」


意気投合してハイタッチを交す。ふみひろがあれば毎日が楽しいことに気づいた俺たちは、自給自足でオリジナルの百合に萌えを補給していた。自分達で作ったからこそ、自由に考えられる。役割分担も自然と出来ていた。主に会話文を考え話を組み立てているのが理玖、字の文を加え小説らしくまとめるのが尚生。会話文を考えるのは理玖だが、それに至るまでは2人で妄想を膨らませる。ネットの世界は広いからか、賛同してくれた人がいると分かった時は本当に嬉しかった。


「あー、郁香は比呂美に言うんだろうなぁ」


元ネタをお互いに考える、それを大きくしていく。そんなスタイルをとっていた。ただ、自分が作ったオリジナルの子……我が子はどうしても贔屓したくなるもので。俺の脳内は郁香を第一に話を繰り広げていた。郁香だったらこうするだろう。いや、むしろこうなって欲しい。いつのまにか俺自身と郁香とを照らし合わせちゃって、妄想が止まらない。もう俺が郁香だと、郁香が俺になったんだと、リアルと妄想がゴチャゴチャになっていくのが分かる。郁香が考えていることは俺と一緒。存在しない筈の郁香に感化される。自分で作った郁香が好き、それ以上にアイツが作った比呂美が好き……なのかもしれない。歪んだ恋はこのまま止まらなかったんだ。


「それで、郁香が……って聞いてる?尚生」

「聞いてる聞いてる」


身長が高い俺に自然と上目遣いになる理玖。郁香も比呂美より身長が高い。一瞬だけ、理玖の上目遣いにドキッとしてしまった。あれ、俺ってもしかして理玖の事……?嘘だ、そんなこと有り得ない。


「尚生、顔赤くなってるけど大丈夫かよ?そんなにふみひろが良かった?」

「お、おう……マジでやばい」

「だろー?」


赤くなった頬を手で隠した。アイツからのLINEが待ち遠しくて堪らない。早く返事が来ないかと常にスマホを気にしている。LINEがきたらニヤニヤしてしまう。……アイツに会いたくて会いたくて、会い、たくて。ああ、気付いちゃった。俺、恋してるんだ、理玖に恋してるんだ。郁香を通して比呂美に、じゃない。俺が郁香だから?理玖が比呂美だから?……違う。


「郁香がキスして、比呂美が顔真っ赤にしてたら俺得なんだけど……んんっ」


ああ、もう止まらない。


「んっ……は、あ……こんな感じ?ディープ?」

「ちょ、ちょちょちょ、な、お?」


俺は郁香だけど、理玖は比呂美じゃない。だから真っ赤にしないで呆気からんと俺を見つめてる。でも俺は郁香、俺は郁香……違う、俺は俺。だけどなんだろう、この複雑な気持ち。


「いや、実際にやった方が文章にしやすいかなとか思っただけ」


うまく誤魔化せただろうか。郁香も比呂美も関係無しに、俺は理玖が好きなんだ。


「あ、ああ、そうなの?ビックリした……」

「マジになんなよ?」


笑いながら俺は言う。マジになんなよ?……俺が言うセリフじゃない。これは理玖が俺に言うべきセリフなのに。


「郁香は比呂美が好きなんだって。比呂美からのLINEが待ち遠しくて、比呂美に会いたくて会いたくてたまらねーんだよ。俺の郁香はこんな奴なんだって。理玖も分かるだろ?」


俺の気持ちは分かるわけないんだろうけどさ。


……俺の禁断の恋を、理玖に悟らせてはいけない。

百合を考えるのが好きな男子高校生っているんですかね?(笑)

ちょっと分かりにくいですが、簡単に言えば自分で作った郁香に感化されて比呂美を考えている理玖が好きになっちゃった尚生ってことが分かれば。


でもぶっちゃけた話、これ実話(性別は逆ですがね)でその禁断の恋を発症してしまってるのが自分なんですがどうすればいいですか(真顔)

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