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デュラハンの弟子  作者: 鴉山 九郎
【第7章 戦いの果てに夢見た世界は】
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82.我こそは魔王

 玉座の肘掛けに肘をつき、顎の近くに手を添える魔王。その姿は様になっていて、“王”の名に偽りはないと感じさせる。

 王の印としての冠はなく、代わりに三本の角が頭を飾る。額から一本、耳の後ろから二本、それぞれ生える角はどれも細かなヒビが入っていた。それが彼の過ごしてきた年月を表すものかどうかは分からない。遠目からでも、痛んだ髪と顔に刻まれたしわが分かる。しかし、それらは老いからくるもののように思えなかった。

 まだ若い身体を無理矢理に使った痕。そのようなものに見えた。

 もっとも、この角の生えた異世界人がどれほどの寿命を持ち、どのような老い方をするのか、ミァンとサイモナには見当もつかないのだが。


「魔王! わたしのことを覚えているか!」


 ツノが一歩進み出た。

 彼女の感情の変化は顔に表れている。叫んだ後に食いしばる歯。相手を睨むように吊り上がった眉と目。声にも、わずかな怒気が含まれていた。

 昔馴染みに会ったというのに、魔王はにこりとも笑わない。


「もちろんだ。そなたこそ、そのようなよそよそしい呼称で我を呼ぶでない」

「だ、だが、これはこの世界でのあなたの名のはず――」

「そなたまでその名で呼ぶ必要はないと言っておるのだ」


 ツノは固まってしまう。姿勢はそのままで、視線がさまよう。

 角を持つ異世界人。彼らはその角で交信を行い、互いの感情のやり取りができるという。だから、彼らの故郷では表情を作る必要がなかった。いや、むしろ、感情を表に出すのははしたないことだと言われていた。

 以前、ツノから聞いたそんな話をサイモナは思い出す。

 今のツノは目で見て分かるほど、感情を露わにしている。これが彼女の感情のほんの一部だというのなら、魔王にはどれほどの激情が流れていっているのだろう。

 魔王にはすべて把握されてしまっているのか。ツノの返事がなくても、彼は気にしなかった。すぐに次の発言をする。


「では、そなたに名乗ってもらうとしよう。我はそなたのことを覚えているが、名を忘れてしまった。名はなんといったか」


 すぐに答えようとして、ツノは言葉に詰まった。中途半端に開かれた唇が、吐息を漏らす。何を口にしたらいいのか、戸惑ってしまったかのように。

 ツノの顔がひきつる。額には冷や汗が浮かんでいた。

 サイモナが心配そうに声をかける。


「ツノ?」


 返事はなかった。

 魔王はサイモナの呼びかけに首を傾げる。


「ツノ。そんな安易な名ではなかったはずだ」

「これはこの世界での呼び名だよー。本名はこの世界の言語では発音できないからって」


 魔王は一度、ゆっくりとまばたきをした。感情を映さない瞳が、うつむくツノをとらえる。

 真相はあっさりと、魔王の口から語られた。


「うまい言い訳を考えたものだ。“ツノ”、そなたは本当の名を覚えていないのだろう。我と同じように」


 サイモナとミァンは、ツノを見る。ツノの瞳が震えていた。動揺を押し隠すために、彼女は無表情を保とうとする。が、普段できることが今はできなかった。

 サイモナは一瞬、言葉をなくした。その後すぐにツノに確認する。


「ツノは嘘をついたの?」

「記憶が、抜け落ちていく――その事実から、わたし自身も目を背けたかったから……」


 けれど、嘘をついたつもりはなかった。

 サイモナと出会った当初、ツノはすでに自分の正確な名前が分からなくなっていた。ただ、この世界の言語では発音できない、そんな気がしたのだ。今となっては、それすらも確信を持って言えない。

 この世界に来てからも、徐々に元の世界の記憶が薄まっていったからだ。一つ世界を渡る度に起こる弊害。記憶の忘却。それでも、一番重要な記憶だけは忘れまいと今まで気力を保ってきた。

 それは、己の名前よりも大切だった。


「わたしは自分の名前を忘れても、自分のやるべきことは分かっている。あなたの名前を忘れても、あなたのやったことは覚えている。わたしはそう断言する!」

「我のやったこと、か。それは同時にそなたがやったことでもある。我だけを悪者扱いしようとしても、そうはいかんぞ」

「そんなことは分かっている。わたしの行動によって、わたし達の世界は崩壊した」


 苦しげに、ツノはそう吐き出した。

 ミァンは目を丸めて、サイモナに無言で問いかける。彼女達とは会ったばかりで、これまでの経緯をかいつまんで話されたに過ぎない。それでも、そんな重要なことを隠していたのかと思わずにはいられない。

 サイモナは首を横に振るので精いっぱいだった。


「これは……私も初耳」

「この期に及んで隠し事?」


 ミァンは不満そうにする。

 ツノは覚悟を決めた表情で、話し始める。ミァンとサイモナに聞かせることが目的ではない。自身と魔王に、その時のことを思い出させるために話すのだ。己の罪を認識させるために。

 だから、彼女は魔王に顔を向けたままだった。


「わたし達の世界では、魔王は……教団の長、この世界で言う教皇に近い立場にいた。そして、わたしは彼に仕える聖職者だった。この世界には異端審問官という役職があるが、おそらくそれと似たようなことをしていた」

「どこの世界も似たようなものってことね」

「かつてはその世界の誰もが信仰する宗教だった。けれど、文明の発展は人々の信仰心を薄れさせ、いつの間にか邪教呼ばわりするようになっていた。世界樹を守ってきたのは我々だというのに」


 一瞬歯ぎしりをした後に、ツノはやるせなさそうにうなだれた。


「世界樹?」

「なんと言ったらいいのか。我々が信仰を捧げていた対象だ。巨大な樹をイメージしてくれたらいい。天を突き抜けて枝葉は伸び、大地にその根が張らない場所はない。世界樹の実は万病の薬とも言われ、人々に重宝されてきた。ただ、その実は希少だったため、滅多に人の手には渡らなかった。……結果、教団が独占していると言われてしまった」


 教団が潔白だった、と言い張るつもりはない。上層部の汚職を実際に目にしたことがあるからだ。貴族連中に、高い値段で世界樹の実を売る。そんな腐った奴らを屠ったこともある。ツノの役職はそのためにあった。

 一般の者は世界樹に近付くことさえできなかった。だが、それは教団だけが世界樹の恩恵にあずかるためではない。誰もが入れるような場所になったら、神聖な地は踏み荒らされてしまう。人々が世界樹の実を取り尽くしてしまうことは目に見えていた。そして、そんなことはあってはならなかった。

 教団は世界樹の守り人として、そこにいたのだ。


「邪教から世界樹を取り戻す、そうほざいておったな大衆は」


 魔王が鼻で笑う。

 ツノは肩を落としたまま、魔王に言った。


「民衆が押し寄せた段階で世界樹を渡していたら、あんなことには――」

「その考え方がすでに愚かなのだ」

「しかし、今とは違う結果になっていたはず」

「いいや、同じだ。世界樹を信仰の対象ではなく、“ただの物”として利用しようとした段階で、あの世界は終わっていた」


 これだけは断固譲れない、と魔王は語気を強める。

 ツノがいた世界の末期、人々はすでに世界樹を神聖なものとして見ていなかった。薬のなる樹、そのような扱いになってしまっていた。ある者には、それは金のなる樹でもあったことだろう。


「結局、なにが崩壊の直接的な原因になったわけ?」


 まだそこが語られていない。ミァンは二人の応酬に、我慢できずに口をはさむ。

 ツノは魔王とのやり取りを一度止め、話に戻る。


「ある日、武器を手にした民衆が世界樹のもとに押し寄せた。教団の“支配”から世界樹を解放するため、と言っていた。もちろん、教団側だってそれを黙って見ているわけがない。世界樹の根元で交戦が始まった」


 当然、ツノもそこにいた。押し寄せた民衆は信徒ではない。切り捨てることに、ためらいはなかった。

 それに、教団の長にも厳命されていた。人々を決して世界樹に近寄らせるな、と。

 退けた民衆の数が多ければ多いほど、信仰心が厚い証となる。世界樹と共に教団の長を崇拝していたツノは、そう信じて疑わなかった。

 ただ一つ、やってはならないこと。それすらも忘れて。


「そこは神聖な地だった。血を流したりしてはいけなかったのだ。世界樹は、わたしが斬り殺した男の血を、吸い取ってしまった。――人の血を吸った世界樹は、あっという間に枯れた。それが、崩壊につながった」


 『世界樹』という名称に偽りはなかった、ということだろう。ツノの世界は、世界樹が枯れたら崩壊する世界だったのだ。

 ツノはきっ、と魔王を睨む。


「わたしがどれだけ後悔したことか。だから、あなたのやることは理解できない。なぜ、他の世界を崩壊させるような真似をするのか。故郷の世界をなくして、悲しんだのはあなたも同じはず」

「……後悔した。悲しんだ。それだけでは前に進めぬ。“ツノ”、我々の世界をもう一度蘇らせることができると聞いたら、そなたはどうする」

「そんなこと、できるはずがない」

「即答か。つまらぬ」


 魔王は玉座から立ち上がる。決して大柄ではないが、威圧感がある。彼は懐に手を忍ばせ、あるものを取り出した。


「確かに、前と全く同じ世界が蘇るわけではない。だが、それとよく似た世界を、一から作り直すことはできる」


 片手で持てる大きさの水晶玉。赤く濁った色合いをしたそれを、魔王はツノに見えるように掲げた。

 ツノは目を見開く。魔王が持つ水晶玉に、彼女の目は釘付けになった。


「それ、は……世界樹の種?」

「そうだ。崩壊の間際、我が咄嗟に取った行動が分かるか? 世界樹の実から、この種を取り出すことだ」

「そ、その種と、数多の世界の崩壊になんの関係があるというのか」


 ツノには、すでに答えが見えているのかもしれない。魔王が喋るより前に、角から流れてくる情報を得られるのだから。

 それでもあえて疑問を口にするのは、実際にこの耳で聞かなければ信じられないからだろう。


「この種を発芽させるために、“水”を与えているのだ」

「水?」


 ミァンは不可解な表情をする。水が必要なら、その辺の川にでも行けばいいのだ。少し大きな種だが、それで事足りるだろう。こんなにも壮大な話になる意味が分からない。

 魔王は頷く。


「世界樹が育つために必要となるのは、人々の涙。人の涙を吸って、世界樹は成長する。手っ取り早く涙を集める方法として、戦争や崩壊を起こすことは効率が良かった」

「ば、馬鹿な! そんな血の混じった涙で、世界樹の種が発芽するわけがない! 世界樹が欲するのは、人が流す美しい涙なのだから!」

「戦争に逝く者を想って泣く者の涙は美しくないか? 亡き世界を想って流す涙は美しくないとでも?」

「犠牲のある涙など、美しくなんかない! ただ悲しいだけだ。たとえそれで発芽したとしても、前とはまるで違う歪な世界しか出来上がらない!」


 魔王が今手にしている世界樹の種は、すでに何千何万という人々の涙を吸った後なのだろう。本来は透き通るほど美しいはずの世界樹の種が、なぜこんな濁った色合いをしているのか。ツノは分かった気がした。

 魔王が吸わせた涙は、不純物が多すぎたのだ。世界樹の種はかつてツノが見た神々しさのかけらもなく、禍々しい物体に成り果てている。もし、こんなものが発芽したとしたら、いったいどんな世界樹が育つことか。そして、そこにどんな世界が形成されることか。

 ツノは恐ろしくてたまらなかった。

 話を聞いていたサイモナが、魔王に問いかける。


「魔王は世界を作ろうとしているのですか? 他の世界を犠牲にして? そんなことができるのですか?」

「世界を崩壊させることができるのならば、世界を誕生させることもできる。そうでなければ、世界は消滅していく一方ではないか」

「その方法は――」

「一つではない。崩壊の条件が、世界ごとに異なるのと同じように。“人類が滅びる”と崩壊する世界。“神を殺す”と崩壊する世界。“邪神を開放する”と崩壊する世界。人体に害なす“瘴気を晴らす”と崩壊する世界、なんていう変わり種もあった。我々の世界は“世界樹が枯れる”と崩壊した」

「……つまり、“世界樹が育つ”と世界が誕生すると?」

「その通り」


 魔王はツノに手を差し伸べる。相変わらず顔は無表情だが、彼が本心からツノを心配しているらしいことはミァンやサイモナにも伝わった。


「“ツノ”、共に世界を作ろうではないか。今度は誰も我々に刃向かうことはできぬ。我が世界の創造主になるのだから。愚民共は我を畏れ敬うだろう」

「お断りだッ!! 愚かなのはあなたの方だ! そんな身勝手な理由で、ありとあらゆる人が築き上げてきた世界を壊すなど、もってのほか。わたしは、あなたを全身全霊で拒否するッ!」


 噛みつかんばかりにして、ツノは声を荒げる。彼女がここまで感情を露わにしたのは、生まれて初めてのことだ。故郷の世界にいた頃には考えもできなかった姿をさらしている。

 誘いを拒まれた魔王は、差し伸べた手をむなしく下ろす。


「随分と、はしたない顔をするようになったな。“ツノ”」


 表情が豊かになったツノを、魔王は軽蔑したように揶揄した。それが、彼らの決別だった。

 ミァンは残念そうに肩をすくめる。まともに話を聞いていた時間が無駄になってしまった。もとより、話し合いで解決できるとは思っていなかったが。

 結局、剣に頼るならば、部屋に入った時点で斬りかかっていれば良かった。


「おまえなんかが創造主になれるわけないでしょ。ここで死ぬんだから」


 抜いたままだった剣を持ち上げ、ミァンは魔王に近付く。

 魔王は動じない。何を思っているか分からない目を、ミァンに向けるだけだ。


「ここで我が死んだら、今まで犠牲になってきた世界はどうなる? 無駄死にではないか」

「知るか。私は、この世界が大事なの。他人様の世界まで気にかけてられないよ。それも、今ある世界じゃなくて今はない世界のことなんて」


 ミァンの当たり前の返答に、魔王はなぜかたじろいだ。まさか、それで説得できるとでも思っていたのだろうか。今までの犠牲が無駄になるから、あなたも犠牲になってください。なんて無茶苦茶な頼みだ。

 魔王はミァンの刃から逃れようと、後ずさる。背後には玉座がある。そのことに気付いた魔王は、直前で立ち止まった。座ってしまったら、それこそ逃れられなくなる。

 魔王は水晶玉を大事そうに抱えて、説得を試みる。


「もうすぐ、芽が出そうなのだ。そうだ、この世界の崩壊は必要ない。そなた一人が犠牲になって、涙を流してくれれば――」

「それこそ、知ったことじゃない。……あ、名案が思い浮かんじゃった。世界樹の種に捧げる最後の犠牲は、あなたでいいんじゃない? 野望破れて流す無念の涙。うん、いいね。そうしよう」


 自分の思いつきに一人勝手に納得すると、ミァンは剣を振り上げた。


「ま――」


 待て。と言いたかったのだろうか。

 最後まで言いきることができず、「ま」の字を発した形の口のまま、魔王の首は床に転がり落ちる。頭をなくした身体は、ミァンの方へ倒れかかってこようとした。

 ミァンは慌てて、それを避ける。なかば、飛び跳ねるようにして。


「緑色の血!」


 転がる首の断面と、剣の刃に付着する液体を見比べて、ミァンは驚愕を口にした。

 首無しの胴体は、玉座の前の床に倒れ伏す。切断面を中心にして、緑色の液体が広がっていく。ミァンはその水たまりを踏まないようにしながら、魔王のマントで剣の刃を拭った。剣を早く綺麗にしたい、と思って目についた布がそれだったのだ。仕方ない。

 水晶玉は、魔王の手を離れて転がっていった。

 ツノがそれを拾う。


「それ、どうするの?」


 刃を拭い終わったミァンが立ち上がって、ツノに問いかける。

 ツノは無言で、それをしばらく見ていた。そして、急に顔を上げたかと思うと、それを高く放り投げた。それが天井に届く前に、ツノは両手を頭上にかざす。短く、彼女は何かを呟いた。

 瞬間、小さな爆破音がした。ミァンとサイモナが見上げる中で、水晶玉は破裂する。

 世界樹の種は、発芽を前に完全に潰された。残骸すら降ってこない。

 ミァンは呆けたようにツノに視線を戻した。


「私が言うのもなんだけど、いいの?」

「いい。むしろ、こうするべき。と、わたしは思う」


 ツノは穏やかに微笑む。その表情はとても自然なものだった。

 サイモナはしげしげと魔王の死体を見ている。やはり、緑色の血が物珍しいのだろう。くるりとツノを振り返った顔は、期待に満ちていた。


「ツノの血もやっぱり緑色なのー?」

「採取はさせない。痛いのは嫌いだから。と、わたしは拒否する」


 ツノはぷいと顔を背ける。

 サイモナがお願いしているのを背後で聞きながら、ミァンも魔王の死体を観察する。彼は武器を所持していなかった。ツノのように魔法に似た力を使うのならば、それも分かる。だが、彼は最後まで無駄なお喋りのために口を動かしていた。


「魔王は戦う気がなかったのかな」

「彼は戦闘をいつも他の者に任せていた。この世界では、あの雪女に頼っていたのだろう。魔王が最後にわたしを誘ったのも、あなたと戦わせるためだった。と、わたしは思う」

「なるほどね。魔王自身は戦えなかったのか」

「おそらく、雪女がやられるのは彼の想定外だった。と、わたしは思う」


 リッカが倒された時点で、魔王の勝ち目はなくなっていたのだ。

 ツノにじゃれついていたサイモナがふと真面目な顔に戻る。空席となった魔王の玉座。それを指差して、サイモナは困ったように言う。


「亜人混合軍の皆さまには、どう説明したらいいわけー?」


 魔王は死にました。人間の娘に殺されました。突然そんなことを言われたら、亜人混合軍は大混乱に陥るだろう。やはりミァンは人間の手先だったか、ということにもなりかねない。

 しかし、だからといって魔王は異世界人でした。悪いことを企んでいたので成敗されました。そう正直に話しても、やはり混乱する未来しか見えない。亜人混合軍の何割がこの話を理解できるだろう。ループなんかは確実に理解できないと断言できる。話を信じる者の数は、もっと少ないだろう。

 皆、魔王を実際にこの目で見たことすらないのだから。

 ミァンはそこまで考え、悪戯を思いついた子供のようににんまりした。

 彼女はまっすぐ玉座に向かう。途中、邪魔だった元魔王の死体は蹴り飛ばした。

 そして、ミァンは悠々と玉座に腰掛ける。


「私が『魔王』になる」


 肘掛けに肘を置き、ミァンはふんぞり返った。

 突然の宣言に、サイモナとツノはぽかんと口を開く。その間抜けた顔を見て、ミァンはけらけらと笑った。


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