少年Uの物語
良介を自宅謹慎にする計画をたてた上田君が語り手のお話しです。
今日の終わりのHRで先生が俺がずっと願っていた事をやっと言ってくれた。
「えー、一つ大事なお知らせがある。大変残念な事だが、このクラスの関口が一週間の自宅謹慎になった」
やった…!俺の計画通りだ。
俺が少し本気になれば、こんな事だって簡単にできてしまうんだ。
ほら…みんな驚いた顔をしている。
俺がこんな事したって言えばどういう反応をするだろうか。
言ってやろうか…?いや、まだ早い。
これからが面白いんだ。
計画が完全に遂行された時、誰もが度肝をぬくにちがいない。
今、顔を見合わせて笑っているあいつらも…
ずっと復讐のチャンスを狙っていた。
ずっと前から…
いつからだったかな?
そうだ、あれは俺が中学2年に上がる始業式の日だった。
それまで俺はクラスの中心で、俺の周りには常に人がいた。
でもその日転校生が俺のクラスにやってきた。
「このクラスに転校生がやってきた!
先生は新しい出会いができてとても嬉しい!出会いは…」
「せんせーい、前置きはいいから早く紹介してくださーい」
俺はいつものように突っ込んだ。
周りで笑いがおきる。
「そ、そうか。じゃあ紹介するぞー。
関口良介君だ!入ってきてくれ」
パチパチパチパチ
拍手がおこる。
「関口君、一言自己紹介をしてくれないか?」
はい、と関口は頷いた。
「関口良介です。部活には入ってませんが、近くのクラブチームでサッカーしてます。よろしくお願いします」
関口は軽く礼をして席についた。
「そういえば関口のチームは結構強いらしいな。どうなんだ?関口」
先生が手紙を配りながら言った。
「えっと…去年先輩が関西大会に出ました」
関口が返す。
このクラスには今まで根っからのスポーツマンはいなかったせいか、クラスで異色の存在感を放つようになった。
それからの事…
6月に開かれた体育大会ではアンカーを努めた関口が最後に3人を抜いて大逆転優勝をはたし、ヒーローになった。
俺は関口が運動だけできると思っていたが、そうでもなかった。
一学期の期末テストでは学年で10位に入り、先生に褒められていた。
そういう事が色々あって、夏休みの前には俺の周りに誰もいなくなっていた。
クラスの中心は俺から関口へと変わっていた。
悔しかった。見返してやりたかった。
でも、あいつの事を嫌いになったのはそれだけの理由じゃなかった。
二学期、体育の授業があったので一人で着替えていると、関口が声をかけてきた。
「なあ、一緒に行こう」
と。授業が終わるとすぐに着替えて出て行ったはずの奴らも関口の後ろに立っていた。
ちぇっ、なんだよ。権力アピールかよ。鬱陶しいな。
「余計なお世話なんだよ!調子乗んな!」
そう言って俺は教室を飛び出した。
関口といたやつらの俺を笑う声が聞こえた。
関口はただずっとこっちを見ていた。
そして、その数日後。
俺がどんどん落ちこぼれていくのを見た村上達が俺から金を要求するようになった。
でも俺はその要求を一切呑まなかった。
そんな態度を続けていると、
「「上田、まだ自分がクラスの人気者だとでも思ってんのか?馬鹿じゃねぇの?いつまでも強がりやがって。今では俺たちと関口の2強だ。さっさと諦めて俺たちにでも仕えるんだな」」
というメールが村上から届いた。
こいつらまで調子に乗りやがって。
今に見てろよ。俺が全員見返してやる。
そう心に誓った。
今でもこの誓いは忘れていない。
いや、忘れるはずがない。
誰もが気づいた頃には俺の偉大さを痛感しているだろう。
ここまでは本当に完璧だ。
この計画は必ず成功させる。
痛い目をみさせてやる。
俺を見下した奴ら、全員を。