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少年Rの物語(3)

あれから1週間たった。

良介はいまだに何が起こったのか理解できない。

自分は漫画の主人公かと思った。

信じられない、信じられない、信じられない…

あの事故はテレビニュースで全国に大々的に報じられた。

全国から同情と励ましの言葉があったが、なんの励みにもならなかった。

あいつらはもういない…



今日も朝は早かった。

目が覚めたら、パジャマは汗でぐっしょりだった。

また、夢をみた。

あの事故の夢だ。

起きていても、寝ていてもあの事ばかり考えている。

どうしてあの時周りのみんなは逃げ出さなかったのか?

逃げ出すにはだいぶ余裕があった。

なのに誰一人逃げようとはしなかった。

どうしてだろうか?

目が覚めたのが5時だったので、もう一眠りしようと思っていたが事故の事を考えていたら7時だった。



気づけば空は赤くなってきていた。

一日中サッカーゲームに没頭していた。やり続けていると頭がぼーっとしてくる。それが唯一の快楽だった。

リビングで母が忙しそうに準備をしている。母は真っ黒な服に身をつつんでいる。

そうか、今日は通夜か。

足音が近づいてくる。

「良介、辛いのは分かるけど… お通夜いこ。ちゃんとおくってあげよう?」

「分かってる。準備するから待ってて」

クローゼットから制服を取り出す。

久しぶりの制服だった。


式場は車で30分ぐらいの所にあった。

式には学校の先生から同級生、少年クラブ時代のコーチなど大勢の人がこの式に参列していた。

「よう、良介」

元キャプテンの木暮先輩が話しかけてきた。

「どうも」

木暮は良介の素っ気ない返事においという顔をしながら話を続けた。

「なんか気の利いた事でも言いたいけど、こればかりはどうも無理やわ」

「いいですよ。そんな気遣わないで」

せっかく気を利かせようとしてくれているのに良介は素っ気ない態度を続けた。

「いいやつらだったよな」

「はい…」

「あんな事もしてくれたんだろ?」

「あんな事?」

なんの話をしているのか分からなかった。

「おととい誕生日やったやろ?」

そうだった。誕生日だったなんてすっかり忘れていた。あの日、母がケーキを持ってきたのはそう言うことだったのか、と気がついた。

「そうでした。すっかり忘れていました」

「忘れてたって…。まあいい。でもあいつらお前をびっくりさせてやろうってめっちゃ考えてたんやで」

「そうだったんですか…」

そうだったのか。俺の事考えてくれていたんだ。素直に嬉しかった。事故後初めて笑顔になった。少し元気になれた気がした。

「プレゼントも作っていたんだけどな。今どこにあるかよくわからんわ」

「プレゼントまで用意してくれていたんですね」

次は涙がこぼれてきた。

こんなに自分の事考えてくれていたなんて。

俺はこんな仲間を持っていたんだ…

そしてあいつらはいつまでも俺が落ち込んでいる事を望んでいないんじゃないか?

明日からは学校にいこう。

少しずつでいいから進んでいこう。

自然にそう思えた。


1時間の式のあと僕は式場を後にした。

左手には近畿大会で優勝したときにチームで撮った写真が入ったペンダントがあった。

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