召喚
メイアを連れて北の山を目指す。
トライクは本来一人乗りだが、二人乗りが出来ない訳でもない。
街から離れ、人気が無くなった事を確認してトライクを止める。
「何をしている! 急いで北の山に向かわねば、教皇様が!」
「その件なら大丈夫です。」
トライクから降りて、左手に意識を集中させる。
契約の印を見たメイアの顔色が変わる。
契約をしている者が全く存在しない訳では無い。
偵察を有利にするため、飛行可能な鳥系の魔物と契約を行う者もいる。
騎士団の中には、機動力を求めてグリフォンやペガサスなどと契約している上級騎士も存在する。
だが、優の左手に刻まれた契約の印は、禍々しい魔力を感じる。
「来い、グレン。」
優の言葉と共に契約の印が光る。
「くっ。」
その眩しさに、メイアは眼を塞ぐ。
そして、次に眼を開いた時、眼の前に黒い影が見えた。
否、その存在があまりにも突然現れた為、その黒い巨体を影と認識した。
それが何であるか理解するより早く、向けられた殺意に反応し、土の障壁を作るが、それより早く、炎が見えた。
反射で眼を閉じるが、熱気は襲ってこない。
眼を開けば、氷の壁が出来上がっており、炎を防いでいる。
そして、幾多もの氷柱が黒龍を貫こうと、鱗の手前で停止している。
「グレン。今度メイアさんに手を出したら、停めませんよ。」
聞くだけで鳥肌が立つ程殺意を込められた声に、メイアは恐怖を覚えた。
「す、すまぬ。」
「分かれば結構です。それより、聖龍の居場所は分かりますか?」
「聖龍? グランドドラゴンか。わかるが、何故だ?」
「本当か!?」
その言葉に、放心していたメイアが声を上げる。
「もとより我ら三龍は、対をなし、似て非なる同じ存在。自分がどこにいるかなど、わからぬ道理はなかろう。」
「対をなしながら似て非なる同じ存在? どういう意味だ?」
「主よ、我ら三龍は一つの存在が分かれたモノだ。我は力を。聖龍は調和を。白龍は平和をそれぞれを司る。司るモノが違うだけで、存在は同じ、考え方が違うが目的は同じというようなモノだ。」
「まるで宗教ですね。」
「否定はしない。それより聖龍の居場所であったな。それを置いてすぐに飛ぶか?」
それと言って、トライクを見る。
「いえ、持っていきます。」
そういうと、優はマジックポーチをトライクに被せる。
すると、トライクがマジックポーチに吸い込まれていく。
そのマジックポーチを、優は軽々と持つ。
「急ぎましょう。メイアさん。」
優とグレンのやりとり、そして、かなりの重量であるマジックポーチを軽々と持つ優に放心していたメイアは、名前を呼ばれて我に返る。
「グレンに乗って教皇様の元へ向かいます。乗ってください。」
「あ、あぁ。」
優に言われてグレンに乗り、優とメイアが乗った事を確認したグレンが飛び立った。




