レイシスさんは残念な人
久しぶりの更新です。
「母様がいなくなって、もう半年が経つわ。『聖教』としては、今は魔王の座が空位になっているけれど、直ぐに新たな魔王は現れると予言が出ているの。さらに、黒龍が私を襲ってこないか非常に警戒しているわ。もしも黒龍が私を狙ってきて、私が負けてしまった場合、黒龍を止めることができなくなってしまうし、新たに現れる魔王に対して対抗する手段が無くなってしまうわ。」
そう言って、組んでいた足の上下を変える。
「だから、母様の魔力と酷似している魔力が見つかったとき、『聖教』ではお祭り騒ぎになったのだけど、まさか、母様以上の魔力を持っているなんて。」
「えっと、なんか、すいません。」
(そうだよな。いくら男装が趣味の変人とはいえ、母親だもんな。)
地球にいたとき、宝塚の存在を知って、「俺が主役になる」と叫んで宝塚の劇場まで乗り込もうとする人だ。
グレンにいたっては、レイシスを本当に男だと思っていた程だ。
「『聖教』に対して義理はありませんが、レイシスさんには恩があります。残念ながら、レイシスさんは俺がいた『名も無き世界』に飛ばされて、魔力の枯渇で亡くなられてしまいましたが、レイシスさんから受けた恩をメイアさんに返します。」
その言葉にメイアやザバだけでなく、ネノや冒険者達も眼を見開いている。
「死ん、だ、のか? 母様は。」
「はい。死ぬ間際まで、貴女に対して謝罪を言っていました。」
「そう、か。」
いきなり赤の他人から身内の死を告げられるなど、その感情を理解することは出来ない。
「先程も言いましたが、レイシスさんには恩があります。レイシスさんに恩が返せない以上、娘である貴女に恩を返すつもりです。俺に出来る事であれば、何でも言ってください。と言っても、冒険者としてのランクはかなり低いと思うので、簡単な事しか手伝えないと思いますが。」
「そう言えば、ランク決めの途中だったね。どうだったんだい?」
ネノの言葉に冷や汗が流れる。
「えっと、非常に言いにくいのですが、何も倒せませんでした。」
「は?」
流石のネノも、驚いている。
「近寄ると、何故か脇目も振らずに逃げて行くんです。流石にスライムが必死に逃げるのは笑えましたが。」
全員が呆気を取られたように口を開いて固まってしまった。




