ランク決め (遭遇)
トライクを走らせること10分。
優は山の近くまで来ていた。
今までホワイトウルフの群を何度か見かけたが、襲ってくる事はなかった。
むしろこちらから近づいて、ペットとして捕まえたいと思った程だ。
何せ、小学校の頃は見かけた野良犬をペットにしようとこちらから近寄っていく程の犬好きだ。
ちなみにその時は近くにいた大人が野良犬を追い払い、襲われる事はなかった。
むしろ、何故追い払ったのかと問い詰めた程だ。
まぁ、若気の至りということで、今ではいい笑い話だ。
しかし、捕まえてモフモフしたい。
にもかかわらず、一度近付いたが、速攻で逃げられた。
俺に怯えているのではなく、トライクに驚いて逃げたのだと信じたい。
だが、事実は違う。
ホワイトウルフ達は、優の異常なまでの魔力に怯えて逃げていったのだ。
野生の本能が優の危険を知らせたのだ。
襲ってくる魔物もおらず、気が付けば山の入口に到着した。
なぜ入口とわかるか。
それは看板が立てられているからだ。
『北の山入口』
まるでゲームにあるマップ移動の様だと思ってしまった。
流石にトライクでは登って行けないため、トライクを置いて行く。
ノンビリと歩いて登っていくが、やはり魔物は近づいてこない。
ホワイトビッグベアが出てきたが、「グォォォ、オォォ?」と叫んで逃げていった。
スライムやエセツリーは、最早語るまでもない。
ここに来た本来の目的は、どの程度の魔物を倒す実力があるかを測る為だ。
しかし、魔物は全て逃げてしまう。
これでは実力が測れない。
そう思っていると、鼓膜を震わせる程の叫び声が聞こえた。
明らかに強者の咆哮。
それも、『あの人』によく似た気配。
わずか三ヶ月とはいえ、俺を鍛えてくれた『あの人』。
そして思い出す。
『ユートピア』
ここは間違いなく、『あの人』が追放された世界だと。
そして、『あの人』は言っていた。
娘がいると。
『あの人』程の強者なら、『あの人』の娘を知っているかも知れない。
『あの人』が最後まで、守れなかったと泣いていた。
『あの人』には恩がある。
ならば、もう返せなくなった恩を返すため、俺は『あの人』の代わりに娘を守ろう。
その為に、この強者に『あの人』の娘の場所を知らないか聞こう。
そう思い、この咆哮の主のもとを目指す。
『あの人』から教わった事を思い出す。
魔力を身体に張り巡らせ、身体強化を行う。
山道を駆け抜けて、咆哮の主もとへと辿り着く。
そこに居たのは間違いなく咆哮の主であり、強者であった。
光沢のある鱗を持ち、振るうだけで大木を薙ぎはらえる尻尾。
他者を威圧する深紅の眼光。
ゲームや小説で最も強いとされる存在。
黒龍が、そこにいた。




