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鋼鉄のフロイライン  作者: 九十九 大和
第五章 迷宮の影
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迷宮探索(1)

諸君、アハトゥンク!

依然寒い日が続いておりますが、戦友諸君は如何お過ごしでしょうか?

丁度風邪をひいた時に書きあげたので、少し変な文章になっているかもしれませんがお許しを…誤字等御座いましたら、感想にて教えて頂けると幸いです。

「……ほぅ、ついに私を吹き飛ばした兵器の運用が出来るようになったのか」

「イヒヒヒ…まぁ、まだ実用に耐えられるだけの性能にダウングレードしただけだがねぇ。本当の性能を引き出すと、ロッドに使っている鋼材が融解し始めてしまって、使用者にまで被害がでてしまう訳だねぇ」

「ふむ、しかし威力を落として使用する分であれば問題ないのだろう?」

「イヒヒヒ、確かにその通りではあるのだがねぇ、融解や赤熱化しないだけであって高温にはなってしまうのだよ。まさか、ゲルリッヒ砲用のタングステン鋼芯から作ったロッドまで融解するとは思わなかったがねぇ……ちなみに、使用する際には専用の手袋を使って貰うからねぇ。素材は秘密だねぇ」


そう言うと、博士は机の上に置いてある、まるで通信兵が背負うような金属製のモジュールをポンと叩いた。

そのモジュールから太いケーブルが二本伸びており、1.5m程の長さの金属製の棒に取り付けられている。モジュールがガスボンベであれば火炎放射器の様にも見えなくはない。

しかし、この兵器はある意味火炎放射器よりもタチの悪いものかも知れなかった。


「おい、博士。それでこいつの名前はなんて名付けるんだ?」


これから、私個人の携帯兵器として使用していくであろう新兵器を顎で指す。

やはり名前とは大切である。


博士がニヤリと笑った。


「イヒヒヒヒヒ!!名付けるとしたら、それは『ミョムニル』だねぇ!これこそがこの殺戮マシーネンに最も相応しいと私は信じている!!」


博士の一層気味悪さが増した笑い声が、天幕から格納庫全体へと漏れて響き渡った。

あちらこちらから、一拍おいて悲鳴がそこらかしこから返って来た。それはまるで山彦のようである。

それに、叫びだしたいのは一番近くでされた私だと言いたい。


「し、しかし…雷神トールのハンマーか。言いえて妙だな、かなり的を射ている…」

「イヒヒヒ、そうだろうそうだろう…私だってたまには良い名前を思いつくだろぅ?どうだねぇ少佐、早速使ってみたくはならないかねぇ?」


グイグイと顔を寄せてにじり寄って来る博士を押し返して、唸る。

「いや、確かに使いたくなるのは分かるが、如何せん使う所がないではないか」


そう、場所がないのだ。

この山脈を挟んだ向こう側の国の連中は、この前虐殺したばかりですぐに動く気配がないし、かと言って今回災害を引き起こした迷宮にも入れない。まさに八方塞がりとはこのことだ。

さすがに、私も分別ある大人の女性であるからして、許可の無い所には無許可で立ち入りはしない。それに私は軍を率いるものとして、私から軍規に反するような事は出来ない。


「ましては博士、アウクトベルク執政官が国からどう裁かれるかも分からないのに、迷宮に入れないだろう」

「イヒヒヒ、それは大丈夫だろうねぇ。つい先ほど、あの執政官殿が伯爵に陞爵してあの町の正式な領主になったみたいだからねぇ」


初耳だ…しかし、何故私より先に、そんな重要なことを知っているんだ?

通信兵は一体何をしていたんだ?


「おい、博士。何故そんな事を知っている」

「イヒヒヒ、当然だねぇ。私は技術者だよ少佐、そんな私が通信傍受機程度を作れないと思ったかねぇ」

「…………ちょっと待て、どこから突っ込めば良いか悩んでいる」


最早、博士に対してどう怒って良いのか分からない。

頭を抱えていたら、天幕がバサッと開いた。


「あ、隊長殿ここに居られましたか。探しましたよ。先程届いた電文です。内容は……」

「…あー、すまないが実はもう内容は知っている」

「えっ?それはどういう……成る程」


不思議がって頭を傾げる通信兵の伍長に顎で博士の方を指すと、一拍空けて理解した様に顔を顰めた。


「博士殿も勘弁して下さいよ。我々の仕事が無くなります」

「イヒヒヒ、さしたる問題では無いと思うがねぇ」

「大問題ですよ!こんな変な所に飛ばされたおかげで、最初から少なかった仕事が更に減ったんですから!我々通信兵の存在意義が危ぶまれている今、これは忌々しき問題です!」


どんどん話していく内に熱が上がっていく伍長。

流石に、その熱血具合と自分たちの存在意義を迫りながら説いていく姿に、博士も若干引いているようだった。いや、私も少し引いている。


「お、落ち着け伍長」

「いいえ、この際ですからハッキリと申し上げておかなくてはなりません!」

「ま、待てと言うに。確かに私も心苦しい所も感じなくは無かった…仕事熱心なのに仕事が無いのは辛いだろう。分かった、そんな貴様に仕事をやろう」

「本当ですか!?隊長殿、どこまでも着いて行きます!!」


私はその日、一番の頭痛の種を抱えてしまった事に、頭を悩ませるのであった…

そうだ、全ては博士が悪いのだ。

そっと、天幕から逃げようとする博士の白衣の襟首を掴む。


「おっと、どこに行くつもりだ?博士」

「イヒヒヒ…少し野暮用を思い出してねぇ。なに、小一時間くらいの些細な事だねぇ」

「ほう?そんな用事があるのか…しかし、相手には申し訳ないがその用事はキャンセルだな」

「イヒ?」

「博士、これから地下の教会に行って、ジャンヌを交えて少し私とお話しようではないか。えぇ?」

「イヒヒヒ、私はゾロアスター教の信者だから、キリスト教の所には興味がないねぇ」

「なに、キリスト教もゾロアスター教の影響を受けている宗教だ。なんら問題ない…それに、この前は仏教徒とか言っていなかったか?」

「イ、イヒヒヒ…そんな事もあったかねぇ」

「さて、行こうか…おい伍長、そっち側の腕を持て。抵抗するようであったら、関節を極めても構わん」

「了解しました!」

「は、話せば分かる…!イ、イ、イヒーーーーーッ!!!」





目の前には、小さくなったパルテノン神殿のような茶色い建築物が聳え立っていた。

小さいとは言え、一軒家くらいならすっぽりと覆えてしまうような程は大きい。その建物の正面には、横にⅣ号戦車が二台半くらいは入れてしまうくらいの入り口がぽっかりと開いており、その奥には真黒な闇が広がっている。

何人もの鎧を着た甲冑姿の兵士たちが、仕切りなしにその闇に入っては出て来ており、入り口をこえた瞬間にその姿は見えなくなってしまう。

どこかの空間に繋がっているようだ。

実に奇怪この上ない。


「なんと面妖な…本当に大丈夫なのか?こんな所に入って」


実に心配だ。

まぁ、部下任せでは無く私も一緒に入るので、そこは心配いらないのではあるが、私が率いる以上全員が五体満足で帰って来なくてはならない。


Ⅳ号戦車のエンジン音に気付いてか、慌てたように数人の兵士たちが何かを叫びながらこちらに走って来る。

それに往古して、長槍を担いだ兵隊が警戒しながら隊列を組み始める。


「ローマ兵かなぁ?」

「いや、もっと近代的だろうな。百年戦争以前のイングランド兵のようだ」


ドイツ語を話すイングランド兵の戦列隊とは可笑しな話ではあるが。

こちらも片手をあげながら戦車の速度を落としながら近づく。


「そこで止まれ!見慣れぬ者よ、どこから来たのか名乗られい!」


随分と古めかしい誰何を、指揮官と思われる後方に控えていた兵隊が言う。

別に敵と言う訳でもないので、答えないで強硬突破なんて事はしない。

それに、そんな事をした所で誰が得をする訳でもなし…目の前の連中が面倒な事をしたらあるかも分からんが……


「我々は栄光あるドイツ第三帝国の者である。縁あってこの度伯爵に成りあそばされたアウクトベルク殿から、この迷宮の探索を許可頂いた。これがその書状である」


一度戦車から下車して、丸められ端を蝋封された許可証を一番手前の槍を突き出した兵隊に差し出す。目の前に書状を出された兵隊はどうして良いのか分からないようで、逡巡シテいたところを後ろから痺れを切らした指揮官が、態々書状を受け取りに来た。

まるで引っ手繰られる様に書状が彼の手に渡ると、ベリッと蝋封を破って中身を改める。その時に、被っていた兜の面頬を押し上げたのだが、その顔は随分と若い少年のようで、ナハトと同じ位に見えて少し驚いた。

その視線に気付いたのか、片眉を上げる。


「某の顔に何か?」

「…いや、随分とお若いのだなと思って驚いていました」

「………それを仰るなら、貴殿も似たようなものでしょうな」

「まぁ、私の場合は少々事情がありましてな。貴方が考えて居るような年齢では無いとだけ言っていきましょう。女は、見かけによらぬものです……特に私の様なモノは」

「忠告…受け取っておくといたす。さて、どうやら書状は本物のよう。皆の者!槍を収めい!こちらです、案内しましょうぞ」


物々しい雰囲気だった兵隊たちは槍を立て、戦車の道を空けるように左右に寄った。


「ご苦労…指揮官殿、お名前を伺っても?」

「あぁ、失礼。某の名前はアルミン・ヘンティエスと申す。国王陛下から賜った階級は五等武官(軍隊で言う所の少尉位である)である」

「私は少佐と呼んでもらえれば…階級は、そうですね、千人隊長くらいであると思って貰えれば良いと」


アルミンは千人隊長の所で目を剥いて背筋を伸ばした。

大隊はそんなものだから、あながち間違っていないはずだ。


※少佐は勘違いしているので訂正しておくが、近代戦での大隊千名と、この世界での歩兵千名は規模が違う。この世界での千名は現代の一.五個旅団規模相当の軍隊の人数である。よって、この世界では千人隊長と言うと少将から中将レベルの将官を指すのだ。ちなみに、この世界での師団は約千三百人から千五百人で構成されている。


「ぞ、存ぜぬとは言え、大変なご無礼を…」

「い、いや、そこまで畏まらなくても良いとは思うが……普通にしてほしい。その代り、私も畏まった口調は勘弁願いたい。あれは疲れる」

「はぁ、それは有難き幸せ…あ、申し訳ない」

「良い。それよりもアルミン殿、私は早くあの迷宮とやらに入ってみたいのだが」

「アルミンで結構です。すぐさま案内します」

「ふむ、徒歩もなんだな。アルミン、こいつの上に乗ると良い」


そう言って、手を掴んで引っ張り上げた。




「はわわわわわわ…あのサル、私の少佐殿の手を掴むなんて!ゆゆゆ許せん!!この場で近接散弾を撃ち込んで」

「うわっ!バカミヤビ!?アナタそれは不味いって、たいちょーにも当たるから!」

「ナハト!ツッコム所違うように思うんだけどね!?」

「イヒッ?!こ、こらよしたまえ!車内で暴れると危ないからねぇ!!」

「こ、こら!二人とも…ダメ、でしょ!メっ!」

「うわぁぁ!?シューリー、銃口向けるのはヤバいよぉ!MPは不味いって!!」

「只今ミヤビは参ります!その不届き者の首を刎ねて成敗いたしますぅぅぅぅ!?」

「イヒヒヒ、どうして日本人は首を刎ねたがるんだねぇ。今度論文を書いてみようと思うねぇ」

「博士ぇぇぇぇぇぇ!!!!」

「シューリーも見てないで止めるの手伝ってよ!!」


車内は、大混乱であった………


現代の一個師団はだいたい二個旅団(四個連隊)による四単位編成で出来ております。ですが、一次大戦の時などは三個連隊(三単位)で一個師団を作っていた事もあります。

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