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鋼鉄のフロイライン  作者: 九十九 大和
第二章 交易
11/28

硬芯徹甲弾

諸君、アハトゥンク!

大変お待たせ致しました。

取り敢えず、この回は繋ぎと言う事で、5000文字位です。

後日10000文字で書いた作品を投稿したいと思います。

なお、その回とこの回は、合併する可能性があります。

なんとかシューリーの助太刀もあって、ミヤビを無力化する事に成功し、簀巻きにしてティーゲルの中に放り込んだ。


しかし、ティーゲルは中々に良い戦車だ。

私の欲求を満たすのには持ってこいかも知れんな。

ならば話しは早い。


「おい、イェーガ達は私の四号戦車に乗れ。コイツは私がエスコートしよう」

「まったく、また少佐の病気が始まったな……全員降車だ、さっさとしろ」


コンコンと上部装甲を叩きながら下に向かって言い、簀巻きにされ口に猿轡を噛まされているミヤビを引っ張り出しては四号戦車に担いで持って行った。

他のハッチも開いてぞろぞろとフロイラインが出てきては四号戦車に向かって行く。

後であの五人の労を労うとするか。


「ようし、シューリー行けそうか?」

「…だ、大丈夫です」

「ネルケは?」

「大丈夫大丈夫!ちょっと弾が重いけどね」

「ナハト」

「電波良好っ!」

「博士は……問題無いな」

「イヒヒヒ……あんまりじゃないかねぇ」


全員が配置についたのを確認し、広い戦闘室から一人一人の顔を見る。

一同がしっかりと頷いた。


「よし、『こちらティーゲル、これより敵の結界とやらに対し、アハト・アハト及びすべての火砲により一斉射を行う!結界が破砕され次第、機動力の高い四号により突撃を敢行。雑魚には構わず直進しながら屋敷に突っ込め。これは電撃戦だ、雑魚に一々構ってやる必要はないぞ。以上だ』………弾種硬芯徹甲」

「了解!……重っ」


弾薬庫からPzgr.40を引っ張り抜き、しっかり抱えたそれを遮断機を下ろして主砲に突っ込んだ。


「装填完了、準備よし!」


周りの戦車からも発射準備が整った報せが届いた。

これから始まる戦いに、口の端が持ち上がったのが分かった。


「『諸君、パーティーの時間だ。撃ぇ(フォイエル)!!』」



バウンッ



重厚なマズルブレーキから爆発的な炎が吹き出し、主砲防盾から砲搭を輻射熱が舐め、衝撃が上に逃げようとするために車体前部が持ち上がり、同時に主砲が後退して遮断機がガス圧で押し下げられて、8.8cmの大きめな薬莢がバスケットに排出された。



ドドンッドドドンッ



隣では、次々に7.5cmの砲弾が吐き出され、結界を壊さんと空中を疾駆する。


さぁ、耐えて見せろ結界とやら、ドラゴンの翼を易々と引き千切った麗しの救世主を!


砲身に刻まれた螺旋によって回転を与えられた砲弾は、その回転によって高速で飛翔し、結界に対して垂直に直撃した。

眼で視ることは叶わないが、透明の結界は8.8cmの砲弾を弾く事が出来ず、高速で回転する砲弾を受け止めて、力比べを開始した。

砲弾が結界を侵食するのが早いか、結界が砲弾の運動エネルギーを吸収し切れるか、それを最後まで馬鹿正直に見てやる必要はない。


何時もの聞き慣れた7.5cmの砲撃音ではない、8.8cmの下腹にズンと響く砲撃音に呆けていたネルケの頭を、コンコンと軽く叩いて現実に呼び戻す。


「何時までアホ面してるんだ?次弾装填急げ」

「ふぁっ!?た、隊長!」


顔を真っ赤にしながら、即応弾の山から硬芯徹甲弾を引っ張り出して、次弾を装填した。

カチャンと遮断機が尾栓を閉鎖した音がした瞬間に、すぐさまシューリーの手によって発射される。

発射された砲弾は、結界と競り合っている砲弾のすぐ脇に当たり、更なる圧力を持って結界を破ろうとする。

全体的に防御力が低下して来ているのか、四号戦車の弾を弾かずに受け止める様になっていた。


次第に第二射で放った砲弾のところが、空間に地割れでも起きているかの様に割れ始め、何かが粉砕されるようなけたたましい音と共に、キラキラと輝く光の粉が宙を舞う。


競り合っていた砲弾は、大分勢いを削がれてはいたが、その役目を全うして、屋敷の壁に幾つも孔を穿った。


「『よし!全車前進!!』おい通信士、MGを取ってくれ」

「たいちょー!?通信士ってひどいぃぃ~!!」


ナハトが恨みがましく抗議の声を上げるが、一々気にしていたら、こっちの身が持たん……

だが、このティーゲルは最高だな!素晴らしい!!

子宮に響く様な重々しい砲撃音など、実に私に女を意識させる。


エンジンが高い唸りを上げ、分厚い装甲で覆われた車体が……急発進した。


「なにぃっ!?」

「きゃぁっ!!」

「きゅぅっ!?」

「えぇぇっ!!」

「…イヒヒヒ」


急に加速するものだから、危うく座席から転落しかけて、踏ん張ったら後頭部を強打してしまった……

かなり痛いぞこれは…

まったく、冗談ではないぞ。なんなんだこの加速力は…


「おい、博士。納得のいく説明をして貰おうか?」

「…イヒヒヒ、元々が航空機用のエンジンを、きちんと調整出来ていないために、かなりピーキーになっていたねぇ。私もまさかここまで酷いとは思いもしなかったねぇ」

「……成る程、博士もコイツを動かすのは初めてなのか?」

「イヒヒヒ、それは少し語弊があるねぇ。前のエンジンを積んでいる時は動かしたから、運転をした事が無い訳ではないねぇ」

「どちらにせよ分かった。……ネルケ、大丈夫か?ナハトもだ」


頭の頭頂部を押さえて蹲っているネルケと、額を押さえているナハトが、無言で手振りで問題ないと示して来るが、とてもそうは見れない程下半身が主張している。

例えば足踏みしているとか、両足で前面の壁を蹴っている等だ。


「まぁ、無理はしない事だ。ナハト、MGは私が取ろう」


額を押さえて涙目をしている部下に気を使わない程、私だって鬼ではないぞ。


ナハトの隣に、外してある上部機銃が立て掛けてあり、それをぶつけないように取り、同軸機銃用の予備弾薬のドラム型弾倉を二つ程ベルトに金具を引っ掛けて吊す。

MGには既に箱型弾倉がついていたので、初弾を装填するだけにしておいた。


敵は歩兵だけでかなりの数がいるのだ。

戦車で素通りしかしないのは面白味に掛ける。まぁ、私がそう命令したのだがな。


全車が屋敷に突っ込んでいる間に、私は私で楽しませて貰おう。

別にMGで敵を薙ぎ払おうが、バチは当たるまい。

これは戦争なのだからな。

……そうだ!弾切れになった時はスコップで戦うのも面白そうだな!!


そうこう思っている内に、ティーゲルが結界のあった場所を通り過ぎて、こちらに真っ直ぐ突撃してくる騎兵をナハトが前方機銃で薙ぎ払い始めた。

甲冑で全身を覆った騎兵達を嘲笑うかのように、弾丸は薄い鉄板を引き裂いて次々に血祭りに上げていく。


そのような光景を見たら、胸が疼いて仕方がない。


「シューリー、私は少し出掛けるので、暫くの間指揮を取れ」

「…えっ!?し、少佐…」

「私の事は構わず先ずは屋敷に突っ込め!」


そう言って、コマンダーキューポラのハッチを開け、MGを抱えて車外に出る。

適当に車両の近くに居た雑兵を撃ち殺し、走行しているティーゲルから飛び降りた。


「しょぉぉぉさどのぉぉぉぉぉっっ!!!!」


何処からともなくミヤビの声が聞こえて来て、目の前に姿を現した。


一体コイツは何処から出てきたんだ……?

たまにコイツは本当に人間なのかと疑問に思う時がある。


「少佐殿!お背中を御守り致します!」

「お、おう……その前に、お前簀巻きにされていた筈では?」

「私の少佐に対する愛の前では、如何なる物も障害も風の前の塵と同じです!!」

「そ、そうか……何が言いたいのか分からんが、私は頭が痛いぞ」


溜め息を吐いた視界の先で、混乱しつつも隊列を組んで、こちらに突撃してきていた。

その数は大体三個中隊程だろうか。


「ミヤビ、柄付き手榴弾を貸せ」

「え?……あ、はい」


ミヤビの手榴弾吊りからM24柄付き手榴弾を引っこ抜き、キャップを外して柄の中にある紐を引き抜く。


「らぁっ!!」


まだ二百メートル以上距離があるので、届く筈がないが小手調べに遠投してみる。

久しぶりに使ったものだから、どうやら力加減を誤ったようだ。

ぐんぐん飛距離が伸びていき、相手もこちらに突撃していることもあってか、塊の真ん中やや前寄りの上空で爆裂し、破片と爆風を容赦無く降り注がした。


「ぎぁぁぁぁぁっ!!」

「いてぇぇ!?いてぇぇよぉ!!」

「ひぃぃぃっ!?目がぁっ目がぁぁぁっ!!」


どうやら、中々のダメージを与えたようだな。


目に見えて戦意が落ち始めた。

速度もかなり低下している。


どれ、もう一丁いってみるか?

お次はもっと派手なヤツが良いな。


「収束型はあるか?」

「はっ!どうぞ」


一つの柄付き手榴弾の榴弾部分に、針金で六個の榴弾をくくり付けている種類を貰う。

結構ずっしりしているそれの、紐を人差し指に巻き付けて思いっきり遠投する。


突撃の速度は落ちているとは言え、前進してはいるのだ。

重さ故に先程まではいかないものの、その差を埋める様に前進している兵士達の頭上まで手榴弾は飛び、先程と同じ様に、だが振り撒く破片の数はは単純に6倍増しで、手榴弾が炸裂して兵士達の士気をガリガリと削っていった。

既に恐慌状態に陥っていて、進軍も止まってしまった。


「良いぞ!ミヤビ、少し手伝え。今が好機だ、連中を蜂の巣にしてやろう」

「はい!」


返事だけはまともなのが理解出来ん。

まぁ、この際贅沢は言うまい。何だかんだ言いつつミヤビは使えるしな。

しかし笑いが止まらん。

ここまで楽しいとはな!

普段ならばこのような事は出来んぞ!!


「ミヤビ、お前はMP40を使え!私はコイツで遊ぶ」


既に薬室には初弾が装填されているので、後は引き金を引き絞るだけだ。


「了解しましたであります!!」

「良い返事だ!!」


恐慌状態に陥りつつも、数人がこちらに向かって走り出していた。


私は迷い無く引き金を引く。


シャラララランッ

シャシャン

シャラララララ


二脚を右手でしっかりと持ち、脇を絞めて木製の銃底を挟み込んだ。

毎秒20発もの鉛弾が空を切り裂き、その別名に恥じぬ仕事をこなす。

マズルフラッシュが点滅するごとに一人が倒れ、さながら連合軍が命名した「ヒトラーの電動ノコギリ」は伊達ではない事がよくわかる。


カチンッと最後の弾を撃ち終え、撃針が空を切る音がしてMGが沈黙した。

直ぐ様水筒の水を銃身に掛けて冷却しつつ、ドラム型弾倉を取り付けて素早く次弾を薬室に叩き込み、遊底を引く。


その間、ミヤビがMP40を撃ち続けて牽制する。

私がリロードを終えるまでにミヤビは弾倉を二つ程空にしていた。


「ミヤビ、これを使え!」


一旦句切って普段からベルトに差しているMP40の弾倉をミヤビに渡す。


「有り難くあります!」


前列から中列にいた連中は大半が死に絶えて、後列以降は壊乱して逃げ始めた。

逃げ出した雑魚には興味ないが、士官共には用がある。

騎乗していて、いかにも高そうな甲冑で身を固めている奴等が数人何か叫んでいるのが見えるので、MGの銃口を向けて引き金を引き絞る。


士官だと思われた連中は、放たれた銃弾によって四肢が断裂し、血煙りを撒き散らして吹き飛んだ。


まったく、これだから止められん!

愉快だ、実に楽しい。

一対一での命のやり取りも素晴らしいが、たまには虐殺と言うのも悪くは無いな!!

ふむ、そろそろ潮時か?


向こう側で、戦車が屋敷に体当たりして壁を粉砕しているのが見えた。

どうやらちゃんと私の命令を実行しているようだ。


これで敵の拠点が陥落するのは時間の問題と……

むしろ最後まで降伏しなければ、榴弾で建物ごと吹き飛ばすのもありだな。

あと残る問題は……目の前で壊乱している連中、か。

さて、どうしてくれようか?



Pzgr.40とは、ティーゲルの8,8 cm KwK 36 L/56戦車砲で使用する、硬芯徹甲弾(APCR)の名前です。


『何それ漢字豆知識クイズー!パチパチパチ

このコーナーでは、普通使わない単語やトリビアな漢字の読み方とかを出題します!

正解しても何も無いけどね。

それでは行きます!


『葈耳』


これはなんと読むのでしょうか!

出来ればパソコンで調べるのはやめましょう。

そして、前回の答えの発表です!


『萍』と書きまして、『ukikusa』と読みます。

うきくさは、ウキクサ科の一年草で、水流の無い水田や池沼に浮遊しながら生息しています。

別名根なし草とも言うそうです。

家で金魚などを飼っている方は、知っていらっしゃるかもしれませんね。』

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