逃走
登場人物
・小笠原 卓也:本編主人公、帰宅途中桔梗と出会う
・桔梗:巫女
・楓:桔梗と一緒に逃げた少女
「ずいぶん遅くなってしまった。お袋カンカンかもな」
少年が家路を急いでいた。
少年の名は小笠原卓也、高校2年生。
路地を曲がると走って来た女の子とぶつかった。
「大丈夫?」
卓也は倒れている巫女姿の女の子に聞いた。
「追われています。助けてください」
女の子は肩で息をしながらそう言った。
向こうから大勢の男達が『待てー』と言って走ってくる。
「こっちだ」
卓也は状況が掴めないまま、女の子の手を引いて路地に逃げ込む。
「何故追われているんですか?」
「ごめんなさい。説明出来ないの」
女の子はうつむきながら走っている。
今の状況と彼女の表情から何か深い事情が有る事が読み取れる。
卓也達の足が止まった。
前方に先回りした男達の集団が有る。
後ろから追って来た男達にも直ぐに追いつかれた。
「おとなしく我々に付いて来て頂ければ危害は加えません」
男達の中の一人が言った。
「あなた達の言う事は信用出来ません。
何故、北山の屋敷を襲ったのですか?」
「困りましたね。言う事を聞いて頂けないと、
この女がどうなっても知りませんよ」
男達の後ろから女が引きずり出される。
「楓!」
楓は男達に乱暴を受けたのだろう。
ボロボロで息も絶え絶えになっている。
「桔梗様、私に構わず逃げてください」