バトルを練習したかった。どうしてこうなった。
前回書いた小説は甘いのを書こうとしたので
今回のは戦闘シーンを書こうとした結果こうなりました。
練習のための短編なので過度な期待は寄せずご覧になってください
久しぶりにあの夢を見た。
皆の力を合わせ一匹の獣を削る数の暴力。
一匹の獣が味方を一人ずつ削っていく力の蹂躙。
今思い出しても異常としか言い様のない光景…
その時の僕は強かった…いや、今振り返ったらとても弱かったんだと実感できる。だがあの時の僕はきっとこれが強さだと履き違えていたんだ…
だからあの時だってあの獣にすら勝てると思ったんだ…
いつも一人でグータラしてるだけで何にも興味がなさそうに生活する変な生き物。
時折会話してるのを見かけるが話し相手が去ったらまたいつもの調子に戻る変な生き物。
人として群れるのを嫌うような生き方をするその生き物が僕はとても気持ち悪かった。
まるでこの世界にその生き物を存在させてはいけないような衝動が僕を襲った。もちろんそれは人としてやってはいけないことだと理解しているから僕は抗った。数十日が経った日、遂に周りにその衝動を押さえられなくなった人が出た。
彼らが立てた作戦は同じ思いを抱いてる同志を募り、あの生き物を徹底的に輪から外すものだった。
同志はいたるところに存在し、瞬く間にあの生き物は孤立した。
しかし、あの生き物はそれに動じる心すらない様に、ただ日常を送り続けた。それに憤りを覚えるのはもちろん作戦を決行した側の人間だ。結論としてあの生き物に与する者全てを排斥しだした。
お話をする程度の友達とその他の友達どちらを取るかは明白だ。この日この部屋にあの生き物の空間はただひとつを残し消失した。
そこまでしてすら、あの生き物に変化はない、ただひたすらに日常を送っていく。その頃には僕らはあの生き物は排斥しても良いモノと認識していった。
そんなある日僕はある提案をしてしまう…全てを変えてしまうある提案を…
「皆。良い遊びを思いついたんだ! きっと楽しいよ。」
話に食いついたのは僕の周りによく居る三人だった。もう名前すらも憶えていない…
「あいつをさ、皆で叩こうよ。サンドバックにしてあげるんだ。日ごろのストレスはあいつのせいなんだから、あいつに返すのが普通だろ! 」
「そういえば最近のイライラは全部あいつのせいだな…」
「視野に入るだけでイラつくしね。」
「来なくていいのに…ホント迷惑。」
「だろ? だろ? だからさ、返してやろうぜ、僕らで! そうすればきっとあいつも来なくなるって。」
「決定だな。いつやっか! どうせなら今日でもいいぜ。」
「じゃあ今日の放課後。あいつ捕まえて人目がつかない所まで連れてくか。」
放課後、僕はあいつに話しかけた。
「なぁ…ちょっといいか? 用があるんだけどさ、ちょっと付いて来てくれるか? 」
「ん…? あぁ別に大丈夫だよ。」
「( 付いて来ないと思ってたけど、こいつ馬鹿なのか! )」
内心僕はほくそ笑みながら仲間の居る場所へと案内した。
僕が案内したのは山の中の開けた空間。十人程度で鬼ごっこが充分に出来るほどの空間だ。
仲間は三人。つまり4対1の圧倒的有利。きっと数分もしたらこいつは僕らのサンドバックだ、と確信すら持てた。
「こんな奥深くまで来るなら言っといてくれよな…荷物置いて来ちゃったじゃないか…」
「少し複雑な話でさ、周りにはあんまり聞いて欲しくないんだよ。」
「……こんな人数で話すんのか? 」
ザッ! 周りの茂みから三人が姿を現していく。
「あぁ……皆もお話がしたいんだってさ。」
「あ~あ。あほくさ。帰って良い? 面倒だし、ガキの遊び付き合うほど暇もしてないんだ。」
あいつはそう言うと来た道を戻ろうとした。
止めたのは取り巻きの一人である。
「マテや、おm」
言い終える前に鼻面を裏拳で殴られる。あいつはその反応を見ずにそのまま股間を蹴り上げ、止めに来た取り巻きを沈めた…最初は僕も取り巻きも唖然としていたが、次第に冷静になり三人であいつを逃げれない様に取り囲む。
三人で一斉にあいつに殴りかかる。あいつがこれ以上何も出来ない様殴り続ける。あいつはソレを承知のように顔の前に両腕を立て、殻に篭もるかのように防御の姿勢をとった。
「最初からそうしてればいいんだよ、てめぇは殴られる為に来たんだからさぁ! 」
興奮しながら取り巻きの一人が叫ぶ。
だがあいつは未だに膝すら付いていない。その不気味さを振り払うように殴り続けた。
一人の取り巻きの手が止まる。その手首にはあいつの手が絡まっていた。
「捕まえた…」
そのまま取り巻きを抱きつく様に倒し、倒した取り巻きに背を向けて、その太ももに座る。一瞬の出来事でまたも呆ける僕らだったが、倒れてる取り巻きのわめき声とゴンッ! ゴンッ!という音で我に返る。
あいつは両足を取り巻きの太ももに絡ませ逃げれなくして、そのスネを殴っているのである。
「が… ぎゃ… やめ… っったああ」
徐々に酷くなっていく友達の悲鳴。僕らは構わずあいつを殴り続けた。だがそれに反応もせず、悲鳴が無くなるまであいつはスネを殴り続けた。
スネを抱えて動かなくなった取り巻きを一瞥し、あいつは僕らと距離を取った。
距離を取った先には最初にやられた取り巻きが未だにうずくまっていた…
あいつはそれの後ろから再び股間を蹴り上げそれは動かなくなった。
「てめぇ。いい加減にしろよ! 」
残った取り巻きが近くにあった棒を拾い、それを振りかぶりながら突っ込んだ。
あいつは棒が振り下ろされる前に取り巻きの顎に下から掌底を食らわせ、そのまま足をかけて転ばす。
転げた取り巻きの鳩尾につま先で蹴りを入れ、うずくまったところで横腹を躊躇い無く踏む。この時点では取り巻きは悶えていたが、あいつが肩甲骨の下あたりを思いっきり蹴った瞬間息を少量出して動かなくなった。
次は俺の番なんだなぁ…こんな化け物に勝てるだろうか…
最初にあった自信など既に砕けさっていて、目の前の自分を捕食しようと動く獣をただ見上げる。
「もうやる気ないなら俺は帰ってもいいか? 」
唯一残った僕に救いが訪れた。これで僕が生き残れる! そう考えただけで胸が躍った。
「もう……い、いいから。…さっさと………どっか行ってくれ! 」
この言葉で僕は獣に捕食されはしなかった。
「そ。じゃあ帰るわ。」
この出来事が決定的だった。
取り巻き達の憎悪はそのまま無傷だった僕に向いた。しかも立案したのすら僕だ。僕を責めないわけがない。
そして僕は孤立した。あいつみたいに自然にではなく、強制的に。
そこからは地獄だ。誰も相手にされず、ただ時が過ぎるだけ。そんな毎日を繰り返し続ける。
こういう時同じ境遇同士が固まるのだろうが、それは無理な話だ、同じ境遇のモノはこの前暴力を振るったばかりの相手なのだから…
そんなある日の放課後
「お前は一人が嫌いなのか? 」
あいつが僕に自然に問う。
「そんなの当たり前じゃないか! 喋る相手も居ない。心を許せる相手も居ない。周りが敵だけなんて空間に耐え切れるなんてネジの吹っ飛んでるやつだけだよっ! 」
「そういうものか…」
複雑な顔をしながらあいつが独り言のように呟いている。
そんなあいつに僕は自嘲ぎみに叫ぶ。
「君は良いよね。そんなことも考えないで生きてそうだ。襲って来たのだけを払いのけてればいい。」
「そんなことはない。俺だって痛い。視線が痛い、体が痛い、そして何より心が痛い。でも、ここだけに固執しないで、周りを見ればまだ味方は居る。助けてくれる人もいる。ならそういう人と出会うまで頑張ろうと思える。だから俺は今日も明日も来年だって頑張るさ。」
僕は言葉を失うことしか出来なかった…
こいつがそんな思いを抱きながらこの生活を送っていた事に感心するより先に呆れがきてしまった。
「~~~ぷっ…ふっはははっはは!」
久々に笑った気がする。付き合いの笑いではなく、純粋に自分の感性による笑いだ。一緒に涙がでてきたがこれはきっと笑いすぎて出てきたものだ。
笑いが収まった頃、急に疑問が沸いた。
「なぁ。そういえばなんで僕に話しかけてきたんだ? 」
僕が急に笑い出したことで面食らってたあいつがはっと思い出したかのように顔が引き締まる。
「そだった。え~っと、たばみね。俺と友達になってくれないか? 言うなれば、私でよければ君の…話し相手になりたい。かな? 」
「は? 一応聞くが僕は君を襲ったのだが大丈夫なのか? 」
「大丈夫だ、問題ない。あんなじゃれあいの痛みなんて数時間経てば無くなるしな。」
「ありがとう…僕のことは、しいかって呼んでくれ。」
「俺も名前でしのぎって呼べばいいぞ。」
そして時が経ち、精神の成長と共にこのイジメの環境はなくなり、周りとの壁もなくなった。
しかし二人の友情は無くならなかったとか。
「ていう風に締めたけど、今日も鎬は人の目の前でイチャイチャするのかね~? まぁあいつが望んだ人が出来たってことで許してやるけどな。さ~て学校の準備するかな。」
「お兄ちゃ~ん! ご飯できてるから勝手に食べて行ってね~。」
「ちょっと待て雛歌。先行かないで、俺を置いて行かないでくれ~~~! 」
今日も平和です。
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
戦闘描写ないじゃないか!ってブーイングは予想の範囲内です。
一応短編は設定同じで書いています。
練習したい描写が出来たときと、リクエストが来たときのみ書きます。
感想・指摘・アドバイスなどございましたら気軽にお願いします。