第6話 超能力
ペルシャは低い声でコーラルを見た。 コーラルはしばらく静寂を破るように短く息を吸い、苦笑いしながら言った。
「そうだね。もし犯人がこの町に居ていたら、次は私だっただろう」
彼女の視線はペルシャに届いた。 その中には妙な人情と興味が混じっていた。
「でも私は··· 犯人が誰か知っている」
その言葉に一番先に反応したのはルイだった。 彼は目を見開いて尋ねた
犯人を知っているんですか
彼の声には驚きと同時に怒りのような感情が混ざっていた。 誰かを殺した者を知っていながらも言わなかったという事実が、彼には理解できなかったのだ。 コーラルはルイの感情を毅然とした顔で受け入れ,静かにうなずいた。
「うん。誰だか知ってる。 でもじっとしている理由は犯人の目的が何なのか気になって。」
コーラルの声は穏やかだったが,その中には冷静な計算があった。 死を前にしても驚かない人だけが持てる落ち着き。 ペルシャは眉をひそめて尋ねた。
「では··· 犯人は今どこの村に行きましたか。」
その質問にコーラルはにっこり笑って答えた。
「なぜ、犯人を捕まえるというのか? いや、目的を明らかにするってこと?」
コーラルの口元に嘲笑のような笑みが浮かんだ。 言葉は皮肉だったが、どこか期待する感情が混ざっているようでもあった。 しかし、ペルシャは退かなかった。 むしろ瞳を輝かせながら正面を眺めた。
「じゃ、手伝ってくれないと思いましたか? 手伝ってくれなかったら、そもそもあなたの家まで来なかったでしょう」
コーラルはその言葉にしばらく口をつぐんだ。 そして、すぐに、本当に笑った。 短く、本気混じりの笑い。
「…能力もないのが本当に唐突だね。 すでに他の村に発った犯人をどうやって探そうとしているの?」
今度はペルシャが立ち止まった。 そこまでは考えられなかったのだ。
「あ···… どこに行ったのか知っていますか。」
コーラルは答えず、ゆっくりと椅子から立ち上がった。 そして隣にあった小さなかばんを持って言った。
「調べようとした時、君たちが来たんだ。 おかげで逃したんだ」
彼女は肩をすくめた。 無責任そうでありながら、どこかあきらめたような声だった。
「君たち··· やることないよね? やるべきことがあって、こんなに余計なことに関わってはいないだろうし。 一緒に行く?」
ペルシャとルイは同時に頭を上げた。「どこですか」とルイは尋ねた。 コーラルは軽く微笑んだ。
「パラムマウル"。 私の故郷」
窓の外ではまだ雨が降っていた。 しかし、コーラルの言葉とともに部屋の中には妙な緊張感と新しい決心の空気が広がった。 ペルシャは静かにうなずいた。 コーラルは一行に向かって軽く肩をすくめて言った。
「なに、荷物ある? なければすぐに行こう。」
するとペルシャは軽く笑って首を横に振った。
「私はいつも持ち歩いているので、持っていくものがありません」
ルイとエドリックもうなずきながら言った。
「別に持っていくものはありません」
話が終わるやいなや、皆が準備しておいたレインコートを取り出して着てコーラルの家を出た。 依然として雨は静かに降っていて、村特有のぼんやりとした霧が街ごとに染み込んでいた。 コーラルは道を出るときゆっくりと口を開いた。
「風の村はここから少し遠い。 歩いて行くとなると、なかなか大変だよね」
エドリックはその言葉ににっこり笑って答えた。
「あ、それは心配しないでください。 移動手段は雨の村の外に置いてきたので、それに乗って行きましょう。」
予想外の返事にコーラルは目を丸くし、すぐに口元に感嘆の笑みを浮かべた。
「あなた本当に気に入った。 利口なやつだね」
彼の話し方には茶目っ気と好感が混じっていた。 静かな雨音の中でも、一行の間の雰囲気は次第に軽くなっていた。 ペルシャはコーラルの言葉に目を半分閉じたまま独り言を言った。
「……じゃあ、他の町まで歩いて行こうとしたの? 一体何をしている人なんだ···?」
コーラルはそんなペルシャを眺めながらにっこりと微笑んだ。
「さあ、まず村を見物しよう。 今日は私の故郷を紹介してあげるから」
風村の狭い道を歩きながら、森の中に隠された村の風景の中に一歩ずつ入った。 木の上に建てられた家々、空中に設置された訓練ロープ、風になびく旗…··· ペルシャは初めて見る世界に圧倒されるように視線を奪われた。 ソミはコーラルのそばでペルシャと一行をちらりと見て、話すかどうか悩むように躊躇した。 しかし、結局、気を引き締めて頭を上げた。
「実は··· 間もなく開かれる「風の村訓練大会」に参加するつもりです」
彼の声には微妙な緊張とときめきが入り混じっていた。
「そこで私の限界を試してみようと思います! 今度はきっと能力を呼び覚ますことができると信じています」
ペルシャはしばらくソミを見た。 まだ能力がない状態で何かを「越えなければならない」ということはどれほど恐ろしいことだろうか? ペルシャはソミの手が少し震えるのを見て、彼が言葉は淡々としても心の中ではどれほど緊張したかを感じることができた。 ルイは好奇心に満ちた表情で尋ねた。
「その訓練大会はいつ開かれるんですか? もしかして、かなり待たなければなりませんか?」
コーラルは肩をすくめて答えた。
「よく開かれる。 この村では能力を目覚めさせることが最も重要なことだから。 君たちも能力が必要なら、今回の大会に出てみるのはどう? 一度くらいは経験してみる価値があると思う」
その言葉にペルシャは驚いたようにコーラルを見た。 「私も···?' という思いがして、心が少し複雑になった。 限界だなんて··· ペルシャは自分の限界を超える勇気があるのか、自らに尋ねていた。 「永生者が何の限界を越えて…」'
ソミはそんなペルシャに気づいたのか、小さな笑みを浮かべた。
「心配しないでください。 私はまだ能力がありませんが、今回は違うと信じています。」
ソミの目つきは決然としていた。 「失敗してもあきらめない」という意志が幼い、弱いが熱い光だった。 コーラルはソミの肩を軽くたたいて言った。
「今度はあなたも能力を起こすだろう」
ソミは小さく息を吐きながらうなずいた。 緊張と恐怖の中でも、彼の胸の中には「今回はできる」という小さな希望が燃えていた。
風村の青い森の道に沿って歩いていた一行は、ついに訓練場が見える高い丘に登った。 訓練場は巨大な円形の庭で、中央には厚い原木の柱がいくつも立っていて、周辺を巡る旗が風に激しくはためいた。 あちこちで人々が原木に向かって集中したり手を伸ばす姿が見えた。 ペルシャは目を丸くして風景を眺めた。 ソミは息を整えてコーラルを見上げた。
「あの··· 今度は必ずやり遂げるつもりです。」
コーラルは意外というように眉を上げながら微笑んだ。
「そう、今度は君の感覚を信じてみなさい。」
ルイはそのようなソミを見て妙な感情を感じた。 ルイはしばらく自分とペルシャを思い出した。 自分たちは能力がないことを当然視して生きてきたが、この少年、ソミはそのないことを毎日乗り越えようともがいていた。
コーラルは腕を組んで練習場を見回した。
「訓練大会が開かれると、審査官が君が一番得意なこと、好きなことを聞く。 それを心の中に思い浮かべながら原木を壊してみて。 力ではなく「内面」を使うのだ
コーラルはしばらくペルシャとルイを交互に見ながら口角を上げた。
「もし君が何もできないなら··· 物理系や空間系ではない可能性が高い。 代わりに精神系、自然系、活用系の方である確率が高い。 だから怖がる必要はない」
コーラルは続けた。
「そして、やり遂げると息のお祝い金ももらえるよ。 風の村で本当に認められる第一歩になるだろう」
コーラルが淡々と話すと、ソミは目を大きく開けてうなずいた。 ペルシャはそんなソミをしばらく眺めていたが、思わず手を握った。 ペルシャは心の中でつぶやいた。 限界を超えて能力を得るとは··· 私もいつかそうできるかな? 心の片隅が異様に熱くなった。 練習場は風の音と人々の歓声でいっぱいだった。 まもなく開かれる大会を準備する空気が一行を包み、見えない緊張と期待が森の中を通り過ぎた。
風の町の訓練場は朝から忙しかった。 円形に作られた競技場の周辺には人々が集まって座り、今日も新しい能力者が誕生するか見守っていた。 木の原木の柱が中央に10本ほど建てられており、審査官たちが横で参加者たちを見守っていた。
"次、ソミ"
短い呼び声にソミはゆっくりと一歩を踏み出した。 手が汗ばむのを感じた。 足取りがだんだん重くなった。 今度も失敗したら···.
ペルシャ、ルイ、エドリックは観客席の片隅でソミを見守っていた。 ペルシャは手を膝の上に置いたまま、ソミの震える指先を見ながら心の中でつぶやいた。 ソミ、本当に切実だね…···. 審査官が尋ねた。
「君が一番得意なことは何か?」
ソミは深深と息を吸った。
「走ることです。 風を感じながら走るのが好きです。 それが··· 私が一番うまくできることだと思います」
「いいね。それを思い出しながら、あの原木を壊してみなさい。 手でなくてもいい。 心でもいい」
ソミは目を閉じた。 深い森の中を走る自分を思い出した。 風が頬をかすめて前に道を開いてくれた瞬間。 その時に感じた自由さ、足取りを導く流れ、見えなくても風が描いてくれる道···. ソミはその感覚をつかもうとした。 しかし、恐怖が忍び寄った。 その時、コーラルの声が聞こえてきた。
「ソミ、君には道が見えるじゃないか。 その道を信じて!」
その言葉が心臓を打った。 ソミは目を開けながら大きく息を吐いた。 足先から風が揺れるような感覚が広がっていった。 彼は力いっぱい走って原木に向かって進んだ。 その瞬間,風が彼の足跡を円に描いた。 目に見えなかった軌跡が空気中にほのかに光を放ちながら続いた。 そして最後の一歩、指先を出すと風が強く渦巻いた。 原木がゆれて「どーん!」と割れてしまった。 しばらく静寂が流れた。 そして審査官は微笑んで言った。
「能力発現··· 確認お願いします。」
観客席から歓呼が沸き起こった。 ソミはその場に立って、ぼんやりと手を見た。 目頭が熱くなった。
「ついに··· ついにやり遂げた···."
膝がほどけるようにふらっとしたが、ソミは涙をぐっとこらえて息を呑んだ。 コーラルは腕を組んで大笑いした。
「ほら,あなたでもできるって言ったじゃないか. 」
ペルシャの心臓はどきどきした。 限界を超えるというのが··· こういうことなんだ。 ソミが見せてくれた瞬間を目に焼きながら、心の中で小さな決心をした。 私も··· いつか···. ルイも息を吐きながら感嘆した。 能力を得ることが単純な才能ではなく、切実さと限界突破の瞬間だということを初めて悟った。 ルイはペルシャをちらりと見た。 ペルシャの瞳が揺れるのを見て、なぜか二人ともこれからどんな道を選ぶのか予感することができた。 ソミは審査官から「息のお祝い金」をもらった。 薄い銀色の小さなメダルだった。 彼は手にぎゅっと握って目を閉じた。 風が彼のそばをかすめて話すようだった。
「よくやった」
コーラルはソミの肩をぎゅっとつかんで笑った。
「これからが始まりだよ、ソミ。」
コーラルは振り向いて,ペルシャとルイに視線を向けた。
「それから··· 君たちも」
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