アルゴスの修理能力
魔術起動式スーツを着たイチカは、恥ずかしそうに体を丸めてアルゴスの前に立った。
体に密着していて体型が浮き彫りになっている。光を反射しているため艶っぽく、所々破れているので非常に色っぽく、性的に見えた。
「これで戦うんですか?」
「そうよ」
「えぇ……っ」
恥ずかしくて銃を撃つどころじゃない。都市内を歩くのだって無理だと、イチカは涙目で訴えている。
男の時は上半身裸どころか、パンツ一枚で人前に出ても気にしなかった。羞恥心の変化。これも少女の体に入った影響だ。
「恥ずかしいなら上にワンピースでも着たら?」
「その手がありましたね!」
手に持っていたワンピースを着ると、イチカはようやく落ち着いた。
腕や足から魔術起動式スーツが見えたため、新装備を買う前より露出は少ない。またスカートがめくれても下着は見えないことから、安心感はかなり高まっている。
ただ肌に密着しているので、よく見れば股にある丘の部分の形ははっきりとわかり、下着よりも恥ずかしいのだが。
「スーツを修理するから、そのまま立ってなさい」
「そういえば壊れているんでしたっけ。お願いします」
他人事のようにイチカが言うと、アルゴスは内心でため息を吐いた。
信じてもらうように行動していたが、ここまでになるとは思わなかったのだ。だが悪い傾向ではない。何をしても疑わないのであれば、エンの言葉よりも自分を信じてくれるだろう。
そう思えば、多少頭がお花畑の方が都合は良い。
アーム状の腕を出すと、アルゴスは魔術起動式スーツに触れた。
「ピリッとするわよ」
「えっ!?」
お仕置きの電撃をイメージしたイチカの体が強張った。
次の瞬間、想像の倍以上の痛みが全身を襲う。
「いだっっ……あばばばばばっ」
筋肉が収縮して手足が勝手に動く。
イチカの口から涎が出て舌が出ている。人前には見せられない姿だ。
「うあぁ……」
店の経営を始めて、さまざまなハンターと出会ってきたエイリだったが、こういった状況を見るのは初めてだ。ドン引きである。
「大丈夫なの?」
「問題ないわ」
さらに出力を上げると、スーツの中を伝って足首から液体が出てきた。
アンモニア臭がする。
「ちょ、ちょっと! お店汚さないでよ!」
「あら、ごめんなさい」
清掃は機械にさせているため、たいした手間ではない。
エイリは文句を言ったがそれ以上の事はせず、見守ることにした。
「魔力回路の現状を把握、修復に移行。80%……95%…………深刻なエラー。修復不可。新規回路生成を試みます……成功…………100%」
突如として感情のない声を出していたアルゴスだったが、修理が終わったためアーム状の腕を収納した。
「スーツ全体に魔力が行き渡るようになったわ」
声は元通りだ。倒れたイチカは痺れが取れず、自らが出した液体に濡れていた。
「店の奥にシャワールームがあるから使わせてあげるわ」
「ありがとう……ござい…………ます」
あまりにも哀れな姿を見てエイリが提案をしたが、イチカは動けないままだ。
待っている間に他の客が来たら困る。
清掃も早めに終わらせたい。
ため息をついてから、エイリは清掃ロボに指示を出して、イチカの腕を肩にかけるとシャワールームへ連れて行く。
個室に入るとドアを閉めて服を脱がせた。
「綺麗な肌。綺麗な桜色しているし、男が好みそうな胸だね」
動けないことを良いことに、エイリはシャワーを流しながらイチカの全身をまさぐっていく。
胸や腕、股と手が伸びていくと、太ももをぴっちりと締めて侵入を防ごうとする。
だが力の入らない体では無駄な抵抗であった。すぐに開かれると無毛の丘に触れる。
「んっっ!」
ピクリと足が動いた。
「良い反応」
突然、エイリは今まで一度も感じたことのなかった嗜虐心を刺激された。
自分でも驚くほど暗い感情だ。
可愛らしい顔を歪ませたら、どれほど楽しいか。丘を優しく撫でて反応を伺う。
「ぅ……ぃや……んっ、んっ、あっっっ」
イチカの息が荒くなってきた。指先がじんわりと湿ってくる。アンモニアとは別の匂いも出てきて、エイリから見ても興奮しているのがわかった。
「抵抗しないと、初めてをもらっちゃうよ」
「やめ……んんっ! ……んっぐ」
せり上がってくる快楽に必死に耐えているため、イチカは抵抗すらできず無防備のままだ。
シャワーから流れ出る水が髪や肌を濡らしていく。
興奮してきたエイリも服を脱ぎ、全裸になると肌を重ねる。
「ツルツルしていて気持ちいいわ。お店にいるときは、これほどの逸材とは思わなかったわ」
胸を触りながらもう一方の手で、指が誰も入ったことのない丘の奥へ侵入していこうとする。
エイリは奥に入ろうとして――。
「そこまでよ。それ以上、イチカを虐めるなら殺すわ」
アーム状の腕がエイリの頭を掴んだ。
戻りが遅いときになったアルゴスが助けに来たのである。
「じょ、冗談よ」
「離れなさい」
先ほどまで感じていた高揚感や嗜虐心は急速に消えていき、エイリの中には後悔だけが残る。
常連客になるはずの相手に、どうして酷いことをしてしまったんだろう。
イチカから離れて、この場を客観的に見れるようになって思ったことだ。
「後は私がやるから」
「任せました」
しでかしたことの大きさに反省しているエイリは、シャワールームから出て行った。
二人になったことでようやくアルゴスは警戒を解く。
「まさかエンの影響が、同性にまであるとは思わなかったわ……」
これはアルゴスの読みが甘かった。エンがイチカに仕込んだ宿命――陵辱フラグは女性同士でも成立する。異性に比べて効果は落ちるが、裸などを見れば発動してしまうのだ。また本人は自覚していないが、アルゴスも多少影響は出ている。
襲われて、イチカの心が折れてしまえば終わりだ。
今後は同性でも油断せず、守っていかなければいけない。
魔力起動式スーツを洗いながら、アルゴスは計画の修正を行っていた。




