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理不尽に女体転生させられた元ハンター、復讐フラグをへし折って生き延びます  作者: わんた


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17/22

銃の使い方

 数分で朝食を終えたイチカは、AM-15を手に持つと頭に着けていたゴーグルを降ろす。


 マップが表示されて赤いマーカーがいくつか出現する。


「1キロぐらい先に魔物がいるみたいです。近づいてみますか?」

「ちょっと待って。確認するわ」


 アルゴスは装着されたカメラにあるズーム機能を使うと、遠くにいる魔物の姿が鮮明に映った。


 人型の形をしたゴーレムだ。両肩には小型の大砲が乗っていて、素材は石でハンターからはストーンゴーレムと呼ばれている。


「近くにいるのはストーンゴーレムね。肩にある小型大砲の射程は短くて、300mを越えると命中率は10%以下に落ちるわ。威力も低いし、銃の練習にはちょうどいいから戦いましょう」


 AM-15の最大射程距離は500mほど。イチカはそこからさらに200mほど離れた距離で銃を構えると、ストーンゴーレムを銃撃する。


 魔力によって作られた銃弾は前に進むが、やや右にそれてしまいストーンゴーレムには当たらなかった。


 攻撃されてイチカの存在に気づく。


「適性個体を確認。迎撃します」


 機械音声とと共に両肩に乗った小型大砲が動き、砲弾を放った。


 イチカの数メートル前方に着弾すると、地面に小さなクレーターができて土が舞う。顔や体に当たった。


 直撃すれば、魔力で強化している体でも無事では済まない。威力が低いとは嘘だったのか。


 疑問に満ちた目で、イチカはアルゴスを見る。


「威力は低く、命中率は10%以下なんですよね……」

「大砲という種別の中ではね。それと、命中率は0ではないのよ。当たるときは当たるわ。油断せずに戦いなさい」

「…………」


 半目になったイチカだが、アルゴスは気にした素振りはない。


「移動しないと狙い撃ちされるわよ?」


 警告と同時にまた砲弾が近くの地面をえぐった。


 文句を言っている暇なんてない。ワンピースのスカートをヒラヒラとさせながら、イチカは全力で走る。


「移動しながら攻撃しなさい」


 言われたとおりにAM-15のトリガーを引いて銃弾を放つが、銃身がブレてストーンゴーレムには当たらない。


 敵の命中率が低いと判断したストーンゴーレムは、反撃するのを止めて歩き始める。イチカが思っていたよりも早い。人間が小走りする程度の速度だ。


「ち、近づいてきた!」

「距離を維持しながら攻撃よ!」

「そんな、むちゃなーーーっ!」


 悲鳴に近い苦情を言いながらもイチカは銃を撃ち続けるが、狙いなんて定めてないので当たらない。


 運良く命中、といったこともなく無駄撃ちが続く。


「呼吸を落ち着かせて平常心を意識して。今回は距離もあるんだし、打つ瞬間だけは立ち止まった方が良いわよ」


 返事こそしなかったイチカだが、言われた通りに撃つ数秒だけ止まるようにした。さらにしゃがみ銃身を固定するように持つ。その際、呼吸まで止めると、ブレていた銃身が少し安定する。


 魔力を流し込むと、銃身に刻み込まれた魔術文字によって静かに銃弾が生成され、トリガーを引くことによって放たれた。


 狙いはストーンゴーレムの頭だったが、風の影響もあってやや右に反れる。肩についていた小型大砲の中に吸い込まれていく。


 運がよかったのは、ストーンゴーレムも攻撃しようとして砲弾を放つ直前だったことだ。


 魔術弾が砲弾と衝突すると爆発を起こす。小型の砲台を破壊するだけでなく、上半身の半分を吹き飛ばした。かろうじて頭部と体は繋がっていたが、ストーンゴーレムが一歩前に動くとヒビが入り、体は砕けてしまう。


 頭部が、ぼとりと地面に落ちた。


 ストーンゴーレムは頭部にあるコアによって動いているため、分離されてしまえば存在は維持できない。


 体はボロボロと崩れ去っていった。


「勝てた……?」


 あれだけ苦労させられたのに、終わるときは一瞬だった。しかも狙ったわけではない。


 手応えのなさに、イチカは生き残ったと実感を得るのに時間がかかっていた。


「まあまあの結果ね。長距離から狙い撃ちする感覚は掴めたかしら?」

「少しだけ……」


 銃身が動いてしまえば狙いは定まらない。そのために必要なことは、いかにAM-15を固定するかだ。


 冷静さを失ってしまえば、当たるものも外してしまう。


 落ち着いて正しい姿勢を取るだけで命中率は上がるのだ。


「パワードスーツがあれば自動補正してくれるけど、魔力干渉によって動作不良を起こしてしまうから、イチカには使えないの。頑張って技術を磨きなさい。それがエンを倒すことにつながるわ」


 再会する方法を隠したまま、アルゴスはアドバイスをした。


「そうですね。頑張ります」


 緊張を強いられた戦いをしていたイチカに心の余裕はない。アルゴスの言うことを素直に受け取った。


「新しい魔物を探します」


 ゴーグルに映るマップを確認しながら、イチカは歩き出す。しばらくしてファイヤーウルフの群れと遭遇したが、遠距離から一方的に攻撃をして全滅させる。


 ストーンゴーレムとの戦いで成長したイチカにとって、周辺に出てくる魔物は冷静に対処できるようになった。武器の性能は悪くないため、使用者がそこそこの技術さえあれば勝てる。


 殺人エイプはライフル式RM-1Kを使って敵の射程外から攻撃を続けて一方的な勝利を得ると、アルゴスは一人で任せても問題ないと判断する。


 イチカに狩りをさせている間、アルゴスは果実を採取して昼食を用意するのであった。

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