終わりました
目の前に推しがいる。しかも二次元だった者が生身で存在している。そしてゲームでも見たことのない眩しい笑顔にあたしの思考回路は停止した。もう頭の中が尊いで溢れてる。
「貴女、顔が真っ赤だけれど、どうかしましたの?」
アイリンがあたしの顔を覗き込む。
「尊い…。」
「へ?今なんて?」
「あ、いえなんでもありません!貴女様の笑顔が眩しくて見惚れてしまって。あ!つい心の声が!ごめんなさい!」
慌てるあたしを見て彼女はまた笑った。
「ふふっ。貴女は楽しい方ですね。なんだか落ち込んでいた気持ちが消えていきますわ。」
よかった。彼女の役に立てたみたい。
「貴女、お名前は…
「マリア!ここにいたのかい。探したよ。」
旦那様とダグラス様がいらっしゃいました。
「あたしはもう行かないと。それでは失礼いたします。」
こうしてあたしとアイリンの初めての出会いは終了した。
「マリア、君が方向音痴なのを忘れて一人でダグラス殿の所へ行かせてしまってすまない。今のはアイリン嬢かい?」
「はい、少し元気がなさそうでしたのでお声をかけました。」
「そうか。彼女の境遇は大変だから苦労も多いのだろう。」
旦那様も彼女に同情しているようです。
「マリア様、ヴィル殿から伺ったのだが私に話したいことがあるそうだね?」
そうだった。ダグラス様に会いに行って迷子になってしまったのだ。
「はい、先程のお礼を申し上げたくて。あたしが嘲笑されている時に庇ってくださり、ありがとうございました。」
「ダグラス殿、私からもお礼を言わせてくれ。マリアを助けてくれてありがとう。」
旦那様もあたしと一緒に頭を下げてくれている。
「なんだ、そのことでしたか。先程も言いましたが私は教師であり、雛の成長を見守ることが務めです。雛の成長を邪魔するような行為はナンセンスなんでね。マリア様、貴女がどんな鳥になるのか私は楽しみにしていますよ。」
こうしてあたしの王宮デビューは幕を閉じた。