王宮に呼ばれました
数日後、あたしは王宮に来ていた。旦那様たちがあたしが聖女であることを報告したら、あたしも王宮に来るように言われたらしい。
王宮はとてつもなく広くて、真っ白で、光り輝いていた。こんな白かったら掃除が大変だろうに塵一つ落ちていない。さすが王宮。しばらく歩いていると大きな扉の前に来た。
「マリア、これから陛下や他の貴族たちに挨拶をしてもらうよ。君は堂々としていれば大丈夫。」
そう言って旦那様は扉を開けた。
扉の先には沢山の人たちがいた。
「皆のもの、こちらが今代の聖女マリアだ。マリアこちらに。皆にひとこと。」
陛下に言われてあたしは陛下の隣に並んだ。
「はじめまして、マリアです。よろしくお願いします。」
挨拶しながらカーテシーをやったが、初めてなので足が縺れてしまった。
クスクス。
「あれが本当に聖女なのか?平民のくせに。」
「あのサイモン司祭様が実際に祝福の現場を見たのだから間違いないだろう。たださすがは平民。カーテシーすらまともにできないなんて。」
クスクス。
あたしを馬鹿にする声が聞こえてきて泣きそうになった。帰りたい。その時最前列で溜息が聞こえた。
「ふー。貴方たちはかわいい雛の一生懸命な姿を見て応援しようという気持ちはないのですか。それに『カテーシーすら』と言いましたが、貴方たちのご令嬢はどうなのですか。私は教員ですからよく分かりますが、その『カテーシーすら』まともにできない人は沢山いますよ。まあ、陛下から発言の許可を得ていないのに話し出してしまう方たちのご令嬢だから躾がなっていないのでしょうね。」
長い黒髪に茶褐色の肌。4代公爵の1つ、アーシー家のダグラス・アーシー様だ。あたしを庇ってくれたみたい。
「ダグラスの言うとおりだ。彼女はまだ貴族社会に慣れていない。大目にみて育ててやるのが我等の務めだろう。マリア、儂の顔に免じて許してほしい。」
陛下が謝ってくださるなんて、許すしかないじゃん。
「それでマリアの今後についてだが、後見は……。」
「陛下!お待ちください!」
ついさっき陛下の許可なく発言してはいけないと言われたのに、陛下の言葉を遮る声が響いた。