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やくにたたない かさの みせ

作者: やまくま

傘のお店のナンセンスなお話です。

 ちいさな まちの はずれに、『やくにたたない かさの みせ』という おみせが ありました。

 なまえのとおり やくにたたない かさを うっている おみせです。

 えっ? そんな おみせが あるのかって? 

 あるんです。 よのなかには へんてこなものが すきなひとが いますからね。

 おみせには あおいエプロンの おにいさんが ひとり。

 ほら、きょうも さっそく おきゃくさんが きました。


「あなの あいた かさは あるかね?」


 ひげもじゃの ふとった おじさんが、おみせの なかを みまわしながら いいました。


「ええ、ありますよ。これなんか どうでしょう」


 おにいさんの さしだした くろいかさを おじさんが ひらきました。

 おおきな あなが ひとつ あいています。


「ふむふむ……。わるくはないが あなの あいていない ところを うまく つかえば させないことはないな。もっと あなの あいたやつは ないのかね?」


 おじさんに そういわれて、おにいさんは あなだらけの あおいかさを さしだしました。


「ほう。なかなか いいな。これを やくにたつ かさだと いうひとは いないだろうな。だが、もっと ぼろぼろでも いいんだがなあ」


 それならと、おにいさんは ほとんど ほねだけの かさを だしてみました。

 すると、おじさんの めが ぱあっと かがやきました。


「ほほう! これはいい! これじゃ かさを さしていないのと おなじだ。びしょぬれになる。まさに やくにたたない かさだ」


 おじさんは かさを さしたまま にこにこしています。


「よし、これを もらおう」


「ありがとうございます」


 おじさんは ほとんど ほねだけの かさを だいじそうに かかえて かえっていきました。




「なにか おもしろくて やくにたたない かさは ないかなあ」


 あるひ、もじゃもじゃあたまの わかい おとこのひとが おみせに やってきました。


「ありますよ。んー、これなんか どうでしょう」


 おにいさんは ひらいても すぐに とじてしまう かさを だしました。


「なるほどねえ。でも、あまり おもしろくないなあ。それに てで おさえていれば つかえそうだしね」


 おとこのひとが、おにいさんに かさを かえしてきました。

 あまり おもしろくないなんて いわれたら、おにいさんも おもしろくありません。

 それなら これはどうだと、おにいさんは こんいろの かさを だしました。

 おとこのひとが かさを ひらこうとすると……。


「あれ? あれ? なんだ このかさは。ひらかないじゃないか」


 おとこのひとは むっとしています。けれど つぎの しゅんかん、「あっ」 とこえをあげました。


「そうか。ひらかないから やくにたたないのか。なるほどね。これは たしかに やくにたたないかさだよ」


 けれど おとこのひとは かうかどうか まよっているようです。


「うーん、わるくないんだけどなあ。もっと、もっと おもしろい かさは ないかなあ」


 そういわれて、おにいさんは かんがえてしまいました。もっと おもしろくて やくにたたないかさか……。


 そうだ!


 ポンと てをうって おにいさんは きいろいかさを わたしました。

 おとこのひとが スイッチを おすと……。


 バサッ! バラララッ!


 なんと ひらいたしゅんかんに かさが こわれてしまいました。

 まるで つよい かぜに ふかれて ぐしゃぐしゃになったような かたちになりました。

 おとこのひとが めをまるくして わらっています。


「はははっ、これはいい。これは おもしろい。やくにたたないよ。よし、これを かおうかな」


「ありがとうございます。ただ、このかさは 1かいしか つかえないのですが だいじょうぶですか?」


 おにいさんが そいうと、


「えっ?」


 おとこのひとの かおから えがおが きえました。

 おとこのひとは かさを じっと みています。

 1かいしか つかえないんじゃ、また おもしろくないと いうのかもしれません。

 おにいさんが しんぱいしていると、おとこのひとの かおが ぱあっと あかるくなりました。


「おもしろい! 1かいしか つかえないなんて おもしろすぎる! まさに やくにたたないかさだよ! きにいった! これを かうよ! 5ほん、いや、10ぽん もらうよ!」


「ありがとうございます!」


 おとこのひとは ひらくと すぐ こわれる かさを りょうてに かかえて、にこにこしながら かえっていきましたとさ。


 おしまい


 


読んでくれてありがとう。

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